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変な奴

「なんですか?」


何事もなく去って行きそうになる上下威無人を引き留める。


「礼くらいするよ。ていうか、殴られてたけど、大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ」


たしかに、あれだけ強く殴られていたようなのに、痣も傷も見当たらない。


「大丈夫ならいいけど……。で、何食べたい?」

「え?」

「お礼だよ。助けてもらったんだし、何か奢るよ。何食べたい?」


上下威無人が何かを考える仕草をした。


「すみません。僕、今日のおやつはもう決まってまして」

「はあ?」

「後日、改めてということはできますか?」

「え……。まあ、いいけど……。明日とか?」

「はい。では、明日にでも」


行儀良く頭を下げて、上下威無人が帰って行った。


「変な奴……」




******




翌日。昨日の場所で待っていると、上下威無人がやって来た。


「お待たせしました」

「いや、大丈夫だけど……。なんか汚れてない?」

「そうですね」


彼が何故汚れていたのかは、後日知ることとなる。

上下威無人が甘いものがいいと言うので、ドーナツ屋にやって来た。翔子もよく行く店だ。


「こ、こ、こ、こんなに種類があるのですね……」

「あんた来たことないの?」

「ありません。ひとりでは歯止めが利かないので……」


どういう意味なのだろう?

食べたことがないと言うので翔子が3つ選んでやった。飲み物も注文し、席に座る。

ドーナツに恐る恐るかぶりつくと、気に入ったのか、もふもふと夢中で食べ始めた。その姿は小動物のようで少し可愛い。


「ご馳走様でした。世の中には美味しいものがこんなにたくさんあるんですね……」


なんだかまだ物欲しそうにショーケースに目をやっている。


「今度自分で買いに来たら?」

「そうですね。姉さんに頼んでみよう」


ちょくちょく出てくるお姉さん。何者なのだ?


「これで貸し借りなしね」

「はい。ありがとうございました」

「いや、礼を言うのはこっちなんだけど……」


そのまま店の前で別れた。


「変な奴……」

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