姉さん
「あ?」
男達が振り向くと、そこには翔子と同じ学校の制服を着た男子生徒がいた。
「なんだよてめえ。見てんじゃねーよ」
「はあ。すみません。見えてしまったものですから」
男子生徒が頭を下げる。
「同じクラスの山木翔子さんですよね? 嫌がっているみたいなので、離していただけますか?」
「クラスメイトか?」
アキラが剣呑な雰囲気のまま、翔子に尋ねる。
翔子は思い出した。あまりに地味で大人しくて気にも留めていなかったが、たしかに彼はクラスに存在していた。
「う、うん……」
ひ弱そうな彼が、何故自分達に声をかけて来たのか。
「見てんじゃねーよ。あっちいけ」
仲間が追い払おうとするが、男子生徒は行こうとしない。
「すみません。見なかったらどうでもいいんですけど、見てしまったらどうにかしないと、後で姉さんに怒られてしまうかもしれませんので」
「痛い目みないと分からないのか?」
仲間のひとりが男子生徒を殴りつけた。男子生徒があっけなく地面に転がる。
「おら、行くぞ」
「や……!」
「待ってください」
アキラが翔子を引っ張ろうとしたが、やはり声をかけられる。
振り向けば地面に転がった男子生徒が、平気な顔をして立っていた。
「山木さんは置いて行ってください」
「こいつ……!」
また殴りつける。また転がる。
そして、また起き上がる。
「な、なんだこいつ……」
また殴りつける。また転がる。
そして、また起き上がった。
「山木さんから手を離してください」
男子生徒の異様さに、アキラ達が引け腰になった。
「ち!」
舌打ちを残し、アキラ達は諦めたように翔子から手を離して去って行った。
「ああ。良かったです」
何事もなかったかのように、男子生徒が服の埃を払う。
「えと……何君、だっけ?」
地味すぎて名前を思い出せず、申し訳ないとは思いながら尋ねた。
「上下威無人です。嫌がっていたようなので声をかけたのですけど、余計なお世話でしたか?」
「そんなことない! 助かった! ありがとう!」
翔子が急いで礼を言う。
「そうですか。勘違いでなくて良かったです。それでは」
「え、ちょ、ちょっと待ってよ!」




