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夜の訪問者

 夜、私は自室で一人、考え事をしていた。


 この仕事——続けられるのだろうか。


 毎日、可愛い少女たちに囲まれて。

 毎日、ドキドキして。

 毎日、罪悪感を感じて。


(俺は、彼女たちを守る立場なのに……)


 そう思うと、自己嫌悪に陥る。


---


 コンコン。


 ドアがノックされた。


「タマキさん、起きてますか?」


 リナの声だ。


「起きてるよ。どうした?」


「あの……眠れなくて……」


 ドアを開けると、リナがパジャマ姿で立っていた。


 薄いピンクのパジャマ。胸元がゆるく開いている。

 髪は下ろしていて、昼間とは違う雰囲気だ。


「一緒にいてもいいですか?」


「え……」


「寂しいんです」


 リナが上目遣いで見つめてくる。


(断れるわけがない……)


「……いいよ。入って」


---


 リナが部屋に入ってきた。


「ありがとうございます、タマキさん」


「ベッドに座って。お茶でも淹れようか」


「いえ、大丈夫です」


 リナがベッドに座った。


「隣、いいですか?」


「あ、うん」


 私もベッドに座った。


 リナが——私に寄りかかってきた。


「えっ」


「タマキさん、温かい……」


 リナの体が、私の体に重なる。

 柔らかい。温かい。いい匂いがする。


「り、リナ?」


「私、寮に来てから、ずっと寂しかったんです」


「そう……なの?」


「はい。実家を離れて、知らない場所で……でも、タマキさんが来てから、寂しくなくなりました」


 リナが私を見上げた。

 潤んだ瞳。上気した頬。


「タマキさんが、好きです」


---


「え?」


 私は固まった。


「好き……って」


「女同士でおかしいですか?」


「い、いや、おかしくはないけど……」


「タマキさんは、私のこと嫌いですか?」


「嫌いじゃない。でも……」


「じゃあ——」


 リナが、私の手を握った。


「一緒にいてください」


 温かい手。

 華奢な指が、私の手を包んでいる。


(俺は——いや、私は——どうすればいい……?)


---


「リナ、落ち着いて」


 私はリナを引き離そうとした。


「私は寮母で、あなたは生徒。そういう関係は——」


「だって、我慢できないんです」


 リナが私に抱きついた。


 胸が当たる。

 リナの小さな胸が、私の胸に押し付けられている。


「り、リナ!」


「タマキさん、いい匂い……」


 リナが私の首筋に顔を埋めた。


「タマキさん……好き……」


 温かい息がくすぐったい。

 心臓がうるさい。


 ——でも。


「リナ」


 私はリナの肩を持ち、優しく離した。


「今日は、ここまでにしよう」


「えっ……」


「あなたの気持ちは嬉しい。でも——私は寮母だから」


 リナが寂しそうな顔をした。


「今日は——こうして話すだけにしよう。いい?」


 リナがしばらく黙った。

 それから——小さく頷いた。


「……はい」


---


 その夜。


 リナは私の部屋で、私の隣で眠った。


 体は離している。

 でも、同じベッドで——同じ布団で。


「タマキさん」


「ん?」


「……ありがとうございます」


「何が?」


「ちゃんと——止めてくれて」


 リナが小さく笑った。


「私、調子に乗ってました」


「そんなことないよ」


「でも——タマキさんが、ちゃんと線を引いてくれて。嬉しかったです」


 リナが目を閉じた。


「おやすみなさい、タマキさん」


「おやすみ、リナ」


 私は——複雑な気持ちで、天井を見つめていた。

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