お風呂の時間
夕方になると、入浴の時間がやってきた。
「タマキさーん、お風呂の準備できましたー」
「ありがとう」
この寮には、大浴場がある。
生徒たちは、毎日ここで入浴する。
問題は——寮母も一緒に入ることが、暗黙のルールになっていることだった。
「タマキさんも一緒に入りましょうよ」
「え、いや、私は——」
「前の寮母さんも、いつも一緒でしたよ」
「そ、そうなの……」
断る理由がなかった。
---
脱衣所で、私は服を脱いだ。
今の体になって、何度か着替えはしている。
だが、裸になるのは——まだ慣れない。
鏡に映る自分の体。
白い肌。くびれた腰。程よい大きさの胸。
女性として見れば、悪くない体だと思う。
だが——これが自分の体だという実感がない。
「タマキさーん、早く入りましょー」
「今行くよ」
私はタオルで体を隠し、浴場に入った。
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目の前に——
裸の少女たちがいた。
「あ、タマキさん!」
「こっちですよー」
「一緒に背中流しましょう!」
十代の少女たち。
若くて、柔らかそうで、眩しい肌。
胸の大きい子、小さい子。
お尻のふくよかな子、すらっとした子。
みんなが——裸で、私を待っている。
(無理……!!)
私は目を逸らした。
「タマキさん、どうしたんですか?」
「い、いや、何でも……」
「恥ずかしがってるんですか?女同士じゃないですか」
そう。女同士だ。
私は今、女なのだ。
だが——心は、まだおっさんのままだった。
---
「タマキさん、背中流しますよ」
リナが近づいてきた。
「い、いいよ、自分でやるから」
「遠慮しないでください」
リナが私の背後に回った。
タオルが背中に触れる。
リナの手が、私の肌を滑る。
「タマキさんの肌、すべすべですね」
「そ、そう?」
「羨ましいです」
リナの手が、肩甲骨のあたりを撫でる。
くすぐったい。でも——気持ちいい。
「もう少し下も洗いますね」
「え?」
リナの手が、腰のあたりに下りてきた。
「ここ、コリがありますね」
「あ、そうかも——んっ」
思わず声が漏れた。
「痛いですか?」
「い、いえ……気持ちよくて……」
リナが嬉しそうに笑った。
「よかったです。じゃあ、もっと揉みますね」
(これは……まずい……!)
リナの手が、私の背中を這う。
肩から腰へ。腰からお尻の上あたりへ。
「タマキさん、お尻も凝ってますね」
「そ、そこはいい!!」
「えー、遠慮しないでください」
リナの手が——お尻に触れた。
「っ……!」
「柔らかい……タマキさん、いいお尻してますね」
(何を言ってるんだこの子は!!)
---
前世の俺なら——こんなシチュエーション、鼻血が止まらなかっただろう。
裸の美少女に背中を流され、お尻まで触られる。
これ以上のご褒美があるか?
でも——今の俺は違う。
確かに恥ずかしい。顔が熱い。
でも——「興奮」じゃない。
(くそ……! こんな最高のシチュエーションなのに……!)
女の体になって、性欲の方向が変わってしまったのか。
それとも、そもそも性欲が消えたのか。
どちらにしても——地獄だった。
(前世の俺が見たら、発狂する……!)
---
「タマキさーん、こっちも来てくださーい」
別の生徒——ミアが、湯船から手を振っている。
「あ、ああ……」
私は慌てて湯船に向かった。
湯船には、すでに何人かの生徒が入っていた。
「タマキさん、隣いいですか?」
「どうぞ」
ミアが私の隣に座った。
お湯の中で、体が触れ合う。
ミアの柔らかい体が、私の体に寄り添う。
「温かいですね」
「そ、そうだね」
「タマキさんの体、すべすべです」
ミアが私の腕を触った。
「若いですよね。学生みたいです」
「そ、そうかな」
ミアが私の肩に寄りかかってきた。
胸が——当たっている。
ミアの小さな胸が、私の腕に押し付けられている。
「ミア、ちょっと近い——」
「えー、いいじゃないですか。女同士なんだし」
女同士。
その言葉が、私の心を余計に苦しめた。
---
「タマキさん、胸、大きいですね」
別の生徒——サラが言った。
「え?」
「私たちより大きいじゃないですか」
「そ、そうかな」
「触ってもいいですか?」
「ダメ!!」
私は慌てて胸を隠した。
だが——サラは諦めなかった。
「ちょっとだけ! お願いします!」
サラが私の腕を掴んで引っ張る。
その拍子に——私の手が動いて、胸が露わになった。
「あっ」
「わあ、綺麗……」
サラが目を輝かせて、私の胸を凝視している。
「見ないで!!」
「でも、本当に綺麗ですよ。形がいい……」
サラの指が、そっと私の胸に触れた。
「っ……!」
「柔らかい……」
サラが感心したように言う。
「あたし、こんな風になりたいなあ」
「サ、サラちゃん、やめて——んっ」
サラの指が、先端に触れた。
思わず声が漏れる。
「タマキさん、声が可愛い」
「か、からかわないで!!」
---
前世の俺なら——女の子に胸を揉まれるなんて、最高のシチュエーションだ。
でも、今は違う。
ただただ恥ずかしい。
(くそ……! こんな時に興奮できないなんて……!)
女の体になったせいで、得るべき快感を得られない。
これは——呪いだ。
---
「えー、ケチですね」
「ケチじゃない。寮母と生徒の関係——」
「リナちゃんは背中流してましたよ」
「それとこれとは違う!」
---
入浴が終わり、私は疲弊していた。
心身ともに——限界だった。
「タマキさん、お疲れ様でした」
「う、うん……」
「明日も、一緒に入りましょうね」
「……うん」
(毎日これが続くのか……)
前世では、女性と話すことさえ緊張していた私が。
今は毎日、裸の少女たちと風呂に入っている。
これは——天国なのか、地獄なのか。
私には、分からなかった。
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