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魔法使いと使え魔 〜落ちこぼれ少年の伝説〜  作者: 木の実赤猫
序章 魔法都市イリールイス
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魔法都市イリールイス

作品に興味を持っていただいてありがとうございます。

以前書いていた作品をリメイクして投稿しています。

少しでも楽しく読んでいただけると幸いです。

北方山脈の盆地に築かれた小規模都市、イリールイス。三大魔法都市の中では最も小さい。古い石造りの建物が立ち並ぶ街並みは、魔法の光に包まれて幻想的な輝きを放っていた。夜になると、街灯の代わりに浮かぶ光の球が街路を照らし、まるで星座が地上に降り立ったかのような美しさだった。


この都市からは、歴史に名を刻む多くの偉人、賢人が生まれ、そして巣立っていった。王国魔法騎士団の団長、宮廷魔法使い、さらには他国の王室魔法顧問まで、この小さな都市出身者が大陸各地で活躍していた。

それは決して偶然ではない。

他の都市では珍しく、この地では魔法の加護を色濃く受けた子供たちが産まれてくる。生まれたばかりの赤ん坊でさえ、微弱ながら魔力の波動を放っている。


街の人々は口々に言う。


「遥か昔に存在したと言われる伝説の魔法使い、イリ―シェル・ウィリアム・スパナが契約した大地の精霊のおかげだ」と。


しかし、その詳細を知る者は今でも誰一人としていない。古い文献には断片的な記録しか残されておらず、真実は時の霧の向こうに隠されている。


街の中心部には、白い尖塔が雲を突く魔法都市イリーシェル学園がそびえ立っている。その学園を卒業した魔法使いたちは、皆が皆優秀であるため、各地から引く手数多である。


「偉大なる魔法使いの出身を尋ねれば、十中八九がイリールイス出身だ」とまで言われるほど、この都市は魔法の才能に恵まれた地なのだ。

そして、この都市にはもう一つの特色がある。ウィリアムの姓を持つ一族の存在だ。


伝説の魔法使いと同じ姓を冠するウィリアム家は、この都市に数多く存在している。本家を頂点とした厳格な家系制度が敷かれており、分家はウィリアムの姓の後に必ず別の姓を付け加えなければならない。

「ウィリアム・ローゼン」、「ウィリアム・クラーク」、「ウィリアム・スパナ」といった具合に。分家がウィリアムの姓のみを名乗ることは、掟により固く禁じられている。


一族の集会が開かれる時、この差別は一層明確になった。本家の者たちは威厳を持って「ウィリアム」とのみ名乗り、分家の者たちは必ず後に続く姓まで名乗らなければならない。これは本家と分家の格差を見せつける儀式でもあった。もしこの掟を破る者がいれば、容赦ない罰が待ち受けている。過去には家名剥奪、都市からの追放といった厳しい処罰が下された例もあった。


興味深いことに、伝説のイリ―シェル・ウィリアム・スパナは分家の出身だった。初代当主アシェル・ウィリアムが、並外れた才能を持つイリ―シェルを本家の養子として迎え入れようとしたことがある。しかし、当の本人は丁重にこれを断ったという。

「私は、スパナ家で産まれ、生活が苦しくとも家族と一緒に暮らして参りました。今更、スパナの姓を捨てることはできません。第一、家族の気配すらしない本家に行く必要を感じません。それに、スパナの姓は父が残してくれた証であり、私の誇りなのです」

この言葉は今でも語り継がれ、分家の人々の心の支えとなっている。


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