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心臓が止まるかと思った・・・。
乗ったことないけど、ジェットコースターより怖いと思う。
双葉学園の最上階って、たしか十階だったはず・・・。
ダメだ、考えるとめまいがしそう。
それで、ここは・・・?
「俺の部屋だよ、真彩。」
エスパー?
「真彩って、結構わかりやすいよね。」
そ、そんなに?
「そんなに顔に出てた?」
「うん、すごく可愛かったよ。」
か、可愛い!?
でも、多分お世辞で言ってくれてるんだよね。
私が変な顔をしてたから、気をつかってそう言ってくれたんだと思う。
それでも、うれしい。
「ありがとう・・・。」
「もしかしてさ、お世辞だとか思ってる?」
だって、私が可愛いなんてお世辞でしかないと思う・・・。
「俺は、お世辞で可愛いなんて言わないからね?真彩の無自覚なとこは可愛いけど、自覚を持ってもらわないと。」
「自覚・・・?」
なんの?
「真彩が可愛いってこと。それとも俺が真彩にたくさん可愛いって言えば、自覚してくれる?」
「たくさん可愛いって言われるのはうれしいんだけど、恥ずかしい・・・。」
「そういうのが可愛いのに。でも、俺はそれがなくても可愛いって言っちゃうと思うからね。」
「クロさんが甘々すぎて、キャパオーバーしそう・・・。」
「毎日言われてれば、多分慣れるんじゃない?」
ま、毎日・・・。
「あの、クロさん。」
「なーに、真彩。」
「初対面でクロさんのおうちにお世話になるなんて、よくないのでは・・・?」
「真彩は嫌なの?嫌なら無理強いはしないけど。」
嫌ってわけではない。
むしろ、クロさんといるのはすごく楽しい。
「・・・嫌じゃない。」
そう言うと、クロさんはうれしそうに笑った。
「なら、いいよね?真彩と一緒に暮らせるなんてうれしいなぁ。」
クロさんが良いって言ってるなら、いいのかな・・・?
でも、私が一方的にお世話になるのはよくないよね。
「クロさん、私になにかできることはない?」
「真彩はなにもしなくていいんだよ?」
「私はなにもしてないのに、クロさんにお世話になるなんてできないの。」
「ん、わかった。それなら・・・、真彩は俺に血をちょうだい?」
血って、もしかして・・・。
「クロさんって、ヴァンパイアだったの!?」
まったく気がつかなかった。
そういえば、屋上から飛び降りるなんて人間にはできない・・・。
考えればすぐわかることなのに、なんで気づかなかったんだろう。
「ん、そーだよ。今気がついたの?」
「うん・・・。」
クロさんが微笑んで、私の頭をなでた。
「真彩、ほんと可愛い。それで、血はくれるのかな?」
「はい。私の血がおいしくなかったら申し訳ないけど・・・。」
「大丈夫、真彩おいしい香りするし。」
おいしい香り!?
なんか、ちょっと早まった気がする・・・。
クロさんに食べられる!?
「クロさん、おいしいとは・・・?」
「そのままだよ?真彩がおいしそうだなぁって思ってね。もう食べちゃおうかな?」
「クロさん、からかってるでしょ!」
なんか楽しそうにしてるし。
すごくにこにこしてるし。
「からかってないよ?真彩のこと食べるの楽しそうって思ってるだけで。」
「も、もう終わり!ご飯食べましょう?」
「そうだね、真彩が作ってくれるなら食べようかな。」
「いつもちゃんとご飯食べないとダメだよ。」
体に悪いと思う。
「なんで?血があれば大丈夫だよ。」
ヴァンパイアだからって、食事を摂らないといけないのに・・・。
「じゃあ、これからは私と一緒に食べよう?」
「ん、真彩が作ってくれるなら食べる。」
「クロさん、えらい!」
つい、ソファに座ってるクロさんの頭をなでてしまった。
「あ、ごめん!」
「真彩はいーの。もっとなでて。」
そう言って、クロさんは私の手に頭を擦りつけてきた。
なんか、猫みたい。
「まず、ご飯食べてからじゃないとダメ!キッチン借りてもいい?」
「ん、楽しみ。」
よし、頑張って作らないと!