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「あの子、妹をいじめてるんですって。」
「それに、一回も笑ったところを見たことがないの。」
そんなことは、言われ慣れてしまった。
私は香坂真彩、中学で悪女と言われていた。
対して、妹の咲彩は姫様と言われていた。
咲彩は私のことがなぜか嫌いだから、私が悪女で妹をいじめていると周りに言った。
そうしたら、私の周りには誰も近寄らなくなってしまった。
寂しいなんて言えないけど、私は私なりに頑張るつもり。
今日、私は双葉学園に入学する。
人口の約5%がヴァンパイアだと言われている。
ヴァンパイアは人間よりも秀でていることが多く、社会でも重宝されている。
そんなヴァンパイア達が必ず通うのが、この双葉学園なんだって。
今は、学園の中央にある大きい屋敷に集まって理事長の言葉を聞いている最中だ。
「ヴァンパイアの生徒はわかっているだろうが、ヴァンパイアの生徒から人間のパートナーを選ぶことができる。」
そんなことは、初めて聞いた・・・。
でも、私がヴァンパイアに選ばれるなんてことはないよね。
きっと、咲彩みたいな可愛らしい子が選ばれるんでしょう。
きっと、この学園でも私は悪女だもの。
大丈夫、私は人形だから。
いつもみたいに、我慢したらいいの。
「真彩、なんで私のこと嫌うの・・・?」
ああ、結局こうなった。
クラス中から刺さるような視線が押し寄せる。
目の前の咲彩は、両手で顔を覆って泣いている・・・、フリをしている。
こうなったら私はもう、誰にも話なんて聞いてもらえない。
ここはもう、黙って終わるのを待つしかない。
「真彩、ひどいよ。この間だって、私のアクセサリー壊したんでしょ?」
やってないよ。
でも、そんな言葉は届かないってわかってる。
「咲彩ちゃん、かわいそう・・・。」
「妹いじめてるとか、ありえない。」
ダメだ、もう耐えられない。
私は、教室を飛び出してとにかく走った。
気づくと、屋上にいた。
屋上の柵に手を置いて、深呼吸する。
あの軽蔑したような視線だけは、いつになっても慣れないな・・・。
でも、まだ笑えるから大丈夫。
これからの学校生活が不安すぎて、ちょっと俯いてしまう。
はぁ・・・。
「君、誰?」
え?
私のこと、かな・・・?
「香坂、真彩と言います。新入生として、この学園に入りました。」
「真彩、ね・・・。俺のことは好きに呼んで。」
名前を明かせない理由があるのかな?
ううん、気になるけどいきなり事情に突っ込むのは失礼だ。
「では、クロさんとお呼びしますね。」
「ん、それでいい。真彩って周りの空気が綺麗だね。」
空気が綺麗?
そんなこと、初めて言われた。
「ここまで綺麗なのは、初めて見たよ。」
褒めてくれてる、のかな・・・?
「クロさんこそ、私と話してくれてありがとうございます。」
でも、クロさんが私のことを知ったらもうこんなふうには話してくれないだろう。
この居心地のいい空気に、慣れたらいけない。
「・・・真彩?」
「いえ、なんでもありません。私は教室に戻りますね。」
「あんなところ、戻る必要なんてあるの?」
なんで・・・?
私のこと、知ってるの?
「でも、授業を受けないと・・・。」
授業は、しっかり受けないと成績に関わる。
「授業なんて受けなくても、テストで点数を全教科95点以上取れたら成績は大丈夫だよ。」
そんな制度が・・・。
でも私は授業を受けないと、テストでそんな高得点を取れるとは思えない。
「俺が教えてあげる。だから、戻る必要はないの。」
「真彩、俺と暮らさない?」
暮らす!?
「なんで?」
「俺が、真彩と一緒にいたいからだね。」
一緒にいたいと思ってもららるほど、私は綺麗じゃない。
「真彩は嫌?俺と一緒に暮らすの。」
嫌ってわけじゃないけど・・・。
「嫌じゃないなら、このまま攫っちゃおうか。」
攫うって・・・。
「もう決定だからね、真彩。真彩は俺と一緒に暮らすの。」
「で、でも。」
「話は家に着いてからにしようね?」
クロさんは急に私をお姫様だっこすると、屋上から飛び降りた。
「・・・え?」
嘘でしょ!?




