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「これらが資料です。」


今現在、何故か皇帝陛下に謁見中である。

皇帝陛下はペラペラと資料を捲っていく。


「ふむ、十分です。」

「軍を出せる内容です。ですよね?御子(みこ)


皇帝陛下がそう言って隣に控えている蔵人に聞く。

なにかとてつもなく重要なことをやってしまった気がしている。


「そして、雁蘭殿。」

「は、はい…」


萎縮した頭をフル回転させながら返事をする。


「非常に危険な任務だったと思う。そして釉柳から帰りたいという話も聞いていた」

「それでなぁ、侍女としての仕事に特別な休暇を与えようと思う。宮を下っても永久に鐘醴を護衛につけようとも思っている。」


皇帝陛下は上機嫌気味に語る。

可愛がられてる、声でそう感じる。

やっぱり物珍しい見た目に気に入ったのだろうか。

しかし、いくらなんでもお気に入りでも聞き逃がせない一言が聞こえた。


鐘醴さんも横で目をかっぴらいていた。


「まぁまぁ、最後まで聞くこと。」

「定期的に宮に上ってもらうことはあるかもしれないが休みは人気いっぱいまであげるし、その間帰ってもいいんだ。」


楽しそうな声で語る皇帝陛下はもはやこちらを気にしていない。

やりたいから、やっている。

きっとそれだけだ。

やはり雲の上の人は恐ろしい。


そう思っていると鐘醴さんが口を開いた。


「あの、そのお役目私でいいんでしょうか?」

「あぁ、仲が良いというのは釉柳から聞いたからな。」


お、恐れ多い…。

思わず、すでに伸びている背筋を更に伸ばした。

見られてる聞かれている、というのはやはり恐ろしい。

そう痛感する。


「むしろ私はお前が良いと思っておるぞ。鐘醴だって釉柳に勤めたのは最初は告発が原因だ。良い記憶もないだろう。」

「ならば楽しんで交流している様子がわかる雁蘭に合わせたほうが良かろう!」


そう仰る皇帝陛下はなんとなくだが、私と鐘醴さんをくっつけて遊ぼうとしているのかと疑われる。

鐘醴さんも皇帝陛下のお気に入りっぽさを感じている。

ならば、そう考えてても案外おかしくないのかもしれない。


「たのっ…!」


ガシャ、という音とともに羞恥を滲ませた声が聞こえた。

鐘醴さんが露骨に恥ずかしがったようだ。

そういうことすると皇帝陛下がお喜ばれになるんだけどな、と思う。


「ふむ、やはりそうしよう。雁蘭殿は先程から黙っているがどうだ。」

「えぇ、おっしゃるとおりに…」

「もっと意見を出してくれても良いんだぞ。こいつじゃ嫌だったら言ってくれれば良い男を出す。」


皇帝陛下は楽しそうにそう言う。

怖い…、下々の民で遊んでいらっしゃる。

軽く別の人を、と言えるのが人の命の軽さだろう。


「私そんなに魅力ないと思いませんけど。」


(よ、余計なことを言うなぁああ!)


思い切り焦る。

この人はっ、皇帝陛下が喜ぶことを…!

グルなのでは、と疑ってしまっても仕方がない。


「いえ、別に鐘醴さんでも構いません。配慮をありがとうございます。」

「良かったな、鐘醴。お前が良いと言ったぞ。」


皇帝陛下が情報操作をして嬉しそうにしている。


「それと…お言葉に甘えて、もう少し働かせてもらったら任期よりも早めに帰らせて頂きたいです。」

「良いだろう。お前は好きになった人間の中で一番礼儀正しいな。」


皇帝陛下のその一言に思わず動揺してしまう。

この人、皇帝という地位を手にしていながらそのような状況なの!?


「あ、あと一つ。お願いがあります。」

「何だ、言ってみろ。」

「その資料の情報をこちらも持っていていいでしょうか。」

「今は難しい。事が落ち着いたら渡そう。そう制圧が終わったらな。」


あぁ、大変怖いことを…。

やっぱり攻める気なんだ、と実感する。

改めて大きすぎる事に加わってしまった。


「そうだ、定期的にこちらの者を派遣するので、鐘醴とのことを教えてくれ。」

「えぇ、ご期待に添えるかはわかりませんが…尽力いたします。」

「あぁ、なら良いんだ。では上がって良いぞ。」


そう言われて鐘醴さんが先に立ち上がる。

それに続いて立ち上がって鐘醴さんの後をおう。

とにかく作法に気をつけて、気をつけて…。


そして部屋を出てようやく気が抜けた。


「はぁ…、緊張でおかしくなるかと思ったぁ。」

「屋敷を出るまでですよ。」

「あっ、はい!」


再び姿勢を直して進んだ。


屋敷を出て、門をくぐって、ようやく…息を付いた。


「しょーらいざーんー。疲れたしんどいもう一生分緊張した…」

「でしょうね、私から見てもガチガチでしたよ…」


鐘醴さんは思い出したのか可笑しそうにそう言う。

酷いと思いながらも怒る気力はなく流す。


「あと4ヶ月位?よろしくね。」

「その後も私は一緒ですよ?」

「あぁ、そうだった…」


頭が働いてないのか、適当なことを言ってしまっていた。

嫌がらせだと思った鐘醴さんが眉をしかめる。

しかし、すぐに頷いた私を見て言葉を飲み込んだようだった。


「何なんですか。」

「でも、鐘醴さんと一緒って良いね。」

「そうですか、ありがとうございます。疲れてます?」

「うーん、分かんない。」

「とにかく、残りも一緒に仕事しようね。」



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