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「なんかきったね。埃っぽい…」
「えぇ、放置されてる感じがありますね。」
「話聞けるのかと思ってたけど…、資料はいっぱいありそうですね。」
というのも、見る限り紙の山。
目の前にある紙の束も表紙に、年間計画と書いてある。
「ひとまず、パラパラと読んで必要そうなのは持って帰りましょう。」
「もはや、全部持って帰らない?」
指示を出す鐘醴さんに面倒臭さから提案する。
「流石に辞めましょう。重要すぎる情報は却って危険です。」
「そっか、了解。」
頷くと、端からペラペラと捲っていく。
要殺人リストやら、珍品の在り処やら内情についての書類に心が躍る。
やはり全部持って帰りたい。
淋藤侵略の全体計画の書類、宮の地図、英雄の四宝刀の総括所見。
どこをとっても重要そうなものは中身を見ず、取り敢えず鞄に突っ込む。
定期的に後ろを振り返って人の立ち入りがないかを確認する。
「鐘醴さん、どう?」
「ええ、まぁまぁいい感じです。見るからに重要そうなのは取り敢えず鞄に入れてます。」
鐘醴さんから私と全く同じな情報が帰ってくる。
「やっぱり?一緒だね。改めて日記の主とんでもない場所教えたね。」
「えぇ、嵌められたかと心配になりますよ。」
「まぁ、そのための準備はありますから!」
不安が尽きないというようにため息をつく鐘醴さんに威勢良く返す。
私自身も内心焦っているが、少しでも冷静にいるべきだ。
「お出迎えもない。要は直撃するのを待ってたってこと。子孫が可愛くないのか…?って思ったね」
「恋は盲目とはよく言ったもので。大丈夫ですよ、貴方になにかあったら皇帝も釉柳様も私も動きますんで。」
私のボヤキに鐘醴さんから安心できる一言が飛んでくる。
「…あ。薊泈の利用方法の特別会議だって」
「…はあ。やはり薊泈もなんですね…」
僅かに暗い空気が流れる。
「これだけ、隠しても…」
「バレた時がやばいので止めましょう。」
「どうせ死ぬかもしれないし良いでしょ」
「絶対に死なせませんから。」
「そ、そう?」
なんか絶対に守ろうとしてくるのはなんでだろう。
悲観的になってるところに思わず笑えてくる。
「明秋の資料ないと帰れないのに見当たらない…」
「落ち着いてひと通り見るんです。」
鐘醴さんの声援、と言っていいか分からないアドバイスを受け再び集中する。
部屋の半分を見切って、ふと気付かなかった棚を見つけた。
怪しさを感じて寄っていく。
棚の引き戸を引くと、また書類が出てきた。
宇州を機能させなくするための計画資料が見つかったので拝借させてもらう。
地元のことは知っておくべきだろう。
「明秋の資料はないのかな…」
ありそうなのに、と呟く。
棚の奥に手を突っ込んで探していく。
地主一覧、取引人物外見ランク表、忌龍の殺し方。
かの詐欺集団のボスの暗殺計画も立てているのか、と驚く。
年度末決算会議に、明秋の利用方法会議…。
あった!
人の処遇の資料に利用方法なんて言い方をするなんて、と眉をしかめる。
悪魔だ悪の集団だ、と思いながら棚の最後の1冊に手を伸ばした。
目当てのものが見つかったので、気が少し緩んでいた。
「おい、誰だてめぇら!」
思わずバッと振り向く。
この家の持ち主と思わしき柄の悪い風貌をした男が立っていた。
一人で。
声を出すなんて逃げられるかもしれないのに浅はかなんじゃないと思う。
茶髪に色を抜いていて、太い腕からは筋肉が分かる。
表情からも戦い慣れている余裕さが感じられる。
応戦できる可能性は限りなく低い。
逃げたほうがいい、そう判断して立ち上がる。
「ちょっと…!?」
戦うのかと勘違いした鐘醴さんが焦る。
小さく叫んでいた。
私は脱出経路を探す。
左に小窓がある。
私は通れるだろう、というサイズ感だ。
鐘醴さんは出れないだろうけど。
軽々とそこまで走る。
二人とも予想外さに固まったのか、先回りするのか、近付いてくる気配はない。
たん、と外側まで出る。
遠くに増援と思わしき人たちが集まっていた。
まだ逃げれるか、そう思って帰り時の待ち合わせ場所に走って向かおうとする。
銃の発砲音がした。
慌てて振り向くと横をすり抜けていった。
私が走ることを予測して少し横に発砲したのか、ギリギリだった。
この人たち遠距離攻撃してくるんだ!
卑怯なまねを。
更に速度を上げて走る。
増援の部隊が近づいてきては拳銃で発砲する。
視認できる範囲だと11mm程度ありそうだ。
大きくて重い。
当たったら溜まったもんじゃないだろう。
全力疾走して抜け道から集落の入口付近まで戻ってくる。
そういえば、後ろから追われてないかも。
なんて思った瞬間、横から玉が飛んでくる。
頬の先のほうを掠った。
とっさに顔をずらしてよかった。
と言いつつも、相手も走ってこっちに向かってくる。




