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関係がありそうな本を13冊ほど見繕ってきた。
鐘醴さんと手分けをして読むことにして席に隣り合って座る。
まさかこんなことがあるとは、速読を習得していてよかった。
「ねぇ、鐘醴さんって速読できる?」
「えぇ?はい、出来ますけど。」
「くっそ。」
自慢しようと思ったのにという言葉は飲み込もうとして、低俗な暴言が出てきた。
少し困惑している鐘醴さんを無視して、本に手を付ける。
せっかく本を読むのに速読なんて楽しくない。
そんな感情を置いておいて、スピードと情報収集重視で本を読み始める。
歴史についてまとめた書籍なのもあって目新しい内容はなく、私の不満も杞憂で終わった。
お互いが速読できるため、みるみるスピードで読書は進んでいく。
特にとんでもなく重要な情報こそないがそれなりに使えそうな情報はある。
鐘醴さんもメモ帳へのペンの動きがあるので、同じように情報を見かけているんだろう。
今読んでいる本を置いて次の本を手に取ろうとする。
次の本で鐘醴さんとかち合った。
「あ。ごめん」
「いえ、こちらこそすみません。私他に何か本がないか探してきますんでこれはどうぞ。」
鐘醴さんはそう言って、席を立とうとする。
「待って待って。どうせあまり収穫ないし、いいでしょ。」
「少しでも情報があった方がいいでしょう。」
「それなら古書の方がいいかな。ねぇほんとすぐ読み終わるから待ってよ」
「…すぐに読み終わることは知っています。」
鐘醴さんは私と鐘醴さんがそれぞれが読み終わって積み上げた本を一瞥してそう言った。
あぁ、と頷く。
私は7冊、鐘醴さんは5冊。それぞれこの時間で読み終えていた。
私の方が少し読むのが速いのだ。
「ね、いいでしょう。」
「…そう言ってる間に、早く読み始めたらどうです?」
さっきからぶっきらぼうなのはなぜなのか。
そう思って鐘醴さんの表情を見ると、頬を赤く染めていた。
「照れてる?何に?」
「照れてませんけど。」
「…うーん。あっ!もしかして手が触れあったから??」
そう聞くと鐘醴さんが黙ってそっぽを向いてしまった。
「えぇ…?」
思わず声が漏れる。
「なんですか。勝手に掘り起こしたうえでその態度なのどうかと思うんですけど。」
「あぁ、女の子慣れしてないんだね。」
「…はぁ。私は古書コーナーを見てきます。覚えておきなさい。」
鐘醴さんはそう捨て台詞を吐いて席を立った。
勝った、そう思うと同時に流石に少しやりすぎたと申し訳ない気持ちが襲ってきた。
今謝ってもどうせ逆効果だろうから戻ってきてから謝ることにした。
その方が反省してると思ってくれるだろう。
そう思って最後の1冊を読み進めた。
想像したようにあまりの収穫もないまま、半分ほどまで話を読み進める。
残り半分もそんなもんだろう、そう思っていた。
読んでいて違和感に気付く。
(この人の水宝玉団体の話って視点が変じゃない?)
そう思って読み進めていると、一つ内部しか知らないであろう話を見つけた。
昔の話で執筆時のちょうど10年前である。
水宝玉というと宝石なんだが、その石言葉である富や、航海への安全祈願をこめて水宝玉団体と名付けた。
水宝玉は10石をそれぞれ10人で選び持っている。
それは一種の願掛けであり、人員である証なのだ。
それぞれが別々のところに販路を見出した。
一人は国外との交易、一人は医療の発展、一人は国内の経済支配…。
それぞれが力を付けた。
その中で一人だけが詐欺に手を出した。
構成員の殆どから後ろ指を指された。
しかし、誰よりも富を手に入れたのだ。
そして、彼が水宝玉の全てを手に入れ、団体を実効支配したのだ。
そして、彼に首を横に振る人すら居なくなった。
詐欺により富を集め、他国を弱らせ、すべてを手に入れてきた。
そして、彼の今の目的は英雄の四宝刀に移る。
長い計画が実を結ぶように種をまき、彼は気が熟すのを待っているらしい。
どこか創作のお話じみた書き方を鼻で笑う。
他の話と比べても気合の入った英雄譚のような書き方がされている。
「というか、これって…って本人じゃないの?」
そう思うと、このやけに武勇伝じみた語りにも納得がいく。
他の人が読んだら、怪しみそうな書き方をよくしたな、なんて軽く考える。
いや、まて。むしろ読んだ人は受け入れてるのか。
「あっ…、鐘醴さん…。」
視界の端に移った鐘醴さんに呼びかける。
「あぁ、雁蘭さん。どうしました?古書の区画では色々参考になりそうなものがありました。」
鐘醴さんはそう言って私の持っている本のページを覗き込んだ。
見られたら不味いかもと、私が悪いわけではないが、何処か焦りを感じて本を隠そうとする。
「速読はどうしたんですか…ってなんで隠そうとするんです?」
「いや、そういうわけでは…ないんです、がー。」
「なんですか、枕を交わらせるような表現でもあったんですか?」
「いや違うけど。別の方向に厄介なんだけどー…。」
そう言うと、鐘醴さんは割と深刻なことを察したのか、座って本をひったくった。
私が本を読んでいる鐘醴さんの様子をじっと見つめていると、鐘醴さんの表情がちょっとずつ変化する。
おぉ、驚いてる…と楽しく鐘醴さんを眺めていると、読み終えた鐘醴さんと目が合う。
「読みづらいんで観察するのやめれません?」
「見てない。」
「無理がありますけど」
「そんなことないっ!ね、結構重要な情報でしょ?公式が詐欺してるって言ってるようなものじゃん」
ごり押しで先ほどの本の話に戻した。
余裕そうな表情でこちらを眺めてる鐘醴さんの肩を軽く突く。
「えぇ、内部告発でしょうか。強くはないですが証拠になるでしょう。」
冷静にいう鐘醴さんはつまらない。
「これは、借りて帰りましょう。皇帝陛下の許可があるので許されます。」
「権限強いね…。」
思わず引いてしまう。
力の偉大さと、この軽いノリで使ってしまってる事実に背筋が寒くなる。
「もらえるものは貰っときましょう。」
鐘醴さんは澄ましてそう言った。
パタン、と本を閉じると席を立つ。
私も置いてかれないように慌てて立って鐘醴さんを止める。
「もう帰りますか?」
「えぇ、帰って釉柳様に報告をします。雁蘭さんにも共有しますのでご心配なく?」
何も問題はないだろう、というような当然の顔をされるので一瞬黙る。
鐘醴さんはそれを気遣う様子もなく、そのまま出入口に向かう。
口を開こうとしたが、諦めて鐘醴さんを追った。




