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「紕伶緖に来るの久しぶりかも…。」


通常、月曜日や金曜日に買い出しが行われる。

そのため、火曜日の今日はあまり人が居なかった。

ポツポツと散らばって人を見かける程度で、その唯一いる人たちも、妃や休みを取った役人だけであった。

雑貨や洋服などの日用品以外の号商には、1人2人の客が居て初めて良い方といったところだ。


「あれ、来たことあるんですか。」

「あぁ…、楓貴さんと四葩の人に使い走りさせられました。」


そういえば四葩の事は釉柳妃に伝えなかったな、なんて思い出していた。

その横で鐘醴さんがそれをきっかけに怒り出した。


「楓貴がすみません。…というか、あの四葩の人間は…!!」

「大丈夫ですよ。四葩の妃さんに謝罪とお詫びの品を貰いましたから。」


僅かに沈黙が流れた。鐘醴さんが何かを呟きながら宙を仰いでいた。

歩いていたのが止まり、溜め息をついたり後ろを振り返ったりを繰り返していた。

終いに、「あの人は…」と呟いたと思ったら此方に向き直った。


「雁蘭さん…何を貰いましたか。」

「腕輪を貰いました。何処かから腕輪に興味があるのが漏れたみたいで…。」

紫陽(しよう)妃から直接貰いました?」


四葩は紫陽花のことを指すから、紫陽妃は四葩の妃ということだろうか。

唐突に出てきた人名に少し考える。


妃自らでなく、侍女や護衛が出ることが基本だと聞いたこともある。

それなのに、何故か直接出てきた。


しかし、仕組まれたにしては、私の好みを理解していなかったようにも思える。


「大丈夫ですか。雁蘭さん?」

「え、あぁ…なんで手首用のデザインだったんだろう…。」

「それはどういうことです?」


私が腕輪に興味を見せたのはアームレットで腕につけるものだった。

それなのに、貰ったものは、桃色と空色の2色の水晶が連ねられた華やかな手首に着ける腕輪である。

デザインは私が好みじゃなかったが、偶然なのだろうけど。


「私が興味を示したのはアームレットだったんです。しかし、もらったのはブレスレットでして…。」

「ほら、これです。」


そう言って、ポケットの中からブレスレットを取り出す。


「可愛らしい感じですね?こういうの持つんですか…。」

「私の趣味じゃないです。でも、間違えられたから誰かこっそり見てた人がバラしたのかなーって。」


そう言ってみると、ちょうど良い人が居るから後で紹介をしてくれる事になった。


「お、鐘醴さん。噂の女の子とデートかい?」

「買い物です!」


色々な号商の人から茶化されてはキレ散らかしている鐘醴さんを眺めるのは非常に愉快だった。


「鐘醴さんって意外と面白いですね。」

「もうすぐ種屋に着くので我慢してください。」


ストレスが落ち着いてきた鐘醴さんに付いていって、ようやく種屋に着いた。


「お、鐘醴ちゃん。噂の子を彼女にするなんて流石だね〜。」

「こんのっ…!そんなわけ無いでしょう。」


ついに堪忍袋の緒が切れた鐘醴さんは大絶叫を始めた。


「鐘醴さんって意外と面白いんですね。」


私がクスクスと笑っていると、鐘醴さんは我に返ったのか落ち着いて顔が赤くなっていた。


「で、今日はなんの種を買うんだい?」


店主さんから聞かれて、ようやく要件を思い出した。

ポケットから必要なものを記していたメモ用紙を取り出した。


「ここに書いてあるものをお願いします。」

「了解だよ、お嬢ちゃん、ちょっとまっててね。」


店主がメモ用紙を確認しながら店の奥に行った。

一応今の時期なら全て種は置いてあるだろう。


「雁蘭さん。思ったよりも手際が良いんですね。」

「褒めてるようで貶してますよね、それ。」

「ん…?ちょっと静かにしてください。」


そう言われたので黙った。

少し沈黙が流れる。

何が起きているのか一瞬わからなかったが、誰かに見られていたようだった。

見ていた人は私達が黙ったことで、気付いていることを理解して去っていった。

思ったよりも諦めが早いみたいだった。


「諦めるの早すぎないですか?あの人達変でしたね。」

「えぇ、まぁ。この二人がいたら嫌でも注目は集まるでしょうしね。」

「そんなもんですかね。」


少し納得がいかず首を傾げていると、店主さんが戻ってきた。


「はい、どうぞ。一通り取ってきたよ。確認しな。」


そう言われて鐘醴さんがメモ用紙と見比べて確認していく。


「お嬢ちゃん珍しいね。鐘醴さんに色目使わないなんて、流石噂の美少女っていう感じなのか?」

「どうしてですか。魅力的どころか最悪だと思いますが。」

「隣の芝生が青いだけでは…?」

「お嬢ちゃん言うねぇ〜。」


鐘醴さんが計算を終えて顔を上げた。


「問題ないです。こちらお代です。」

「というか、雁蘭さん。なんも恨みですか本当に。」

「恨みじゃなくて正直な感想です。」

「ここではおべっかも使えないと勝ち上がっていけませんよ。」

「おべっかを使う場所を選ぶ権利が私にだってあるはずです。」

「君たち、代金ちょうどだね。受け取ったから行っていいよ。」


そう言って、荷物を手渡されて追い出された。

周りの空気が少しザワザワとしていた。

宮内では少しでも男女が近い距離で話しているとそれは恋仲だと勘違いされてしまうのだ。


「全く…。あなたがいると騒いでいるみたいになるではないですか。」

「実際に騒いでいるの間違いでは?」

「もう良いです。事情聴取のアポがあるので早く行きましょう。」

「あ、逃げた。」

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