11
今日こそ希㐴たちに会いに行こうと決め、釉柳妃に会いに行き方を聞きに向かった。
「あぁ、あのご友人たちの居場所ですね。」
「下女として働いているのでしたら、大部屋に行けば会えると思います。」
そう言って宮全体の地図を渡してきた。
大まかな緖と各役所や労働場所がざっくりと載っている。
その中に下女の大部屋がある区分も描かれていた。
「場所がわからなかったらこちらの地図を確認してください。建物の位置が書かれています。」
「下女用の大部屋に予定表がありますので、行った先の戸の右側にある壁の左端を確認してください。」
「どの仕事をして居るか分かるのでその場所に向かってください。」
予定表自体に場所も書かれているので、そこに向かえばいいとのことだ。
屋敷を出ると、庭に居た鐘醴さんは花を採集していたが、私が眺めていると、焦ったように採集した花をポケットに突っ込んだ。
(それ花が千切れない?)
少し疑問を抱きつつも目は逸らさずに歩いて行った。
20分ほど歩くと大部屋に辿りついた。
戸の右側に移動してみると、壁の端に当番表を見つけた。
上から見ていくと希㐴と薊泈の欄を見つけた。
2人のどちらの欄にも仕事が入ってなかった。
すると、このままではどこに居るかわからない。
暫く扉の前で悶々と悩んでいた。
しかし、30秒ほど経って、一縷の望みを賭けて大部屋に入ってみた。
戸を開けると、部屋に居た人の視線が一斉にこちらを向いた。
中には私の噂を知っていてそれを話し始めた人もいる。
見渡して見ると、端の机に希㐴と薊泈を見つけることが出来た。
あ、と声を漏らすと、こちらに気付いた希㐴と目があった。
「わー!雁蘭!?こっち〜!」
希㐴が声を上げてこちらに手を大きく振った。
私も手を振り返しながら、希㐴と薊泈の元に駆け寄った。
「まさかくると思わなかったよ。」
これは薄情な奴だと思われてる時の言い方だと思う。
「ひどくない?わざわざ時間作ってきたのに。」
「嬉しいですけど…!忙しいだろうからって話してたんですよ。」
急いで焦った薊泈が可愛く否定してきた。
ふと、情報収集しようと考えて質問を投げ掛けた。
「そういえば、そっちってなんか噂話ある?」
「雁蘭も噂好きなの?意外だね。」
”も”ということは薊泈は噂が好きなのだろうか。
清純なお嬢様という風に思っていたから少し意外な印象を持った。
「あ、でも…そういえば雁蘭のことが噂になってるよね。」
「目の色の話ですよね。」
「そーそー、目の話と今回の大出世の話。」
やはり、紕伶緖の人たちだけじゃなく、下女の間でも広まっているのか。
「うん。そういえば、店でも話しかけられた。」
話を聞くとどうやら、私の瞳は人を洗脳する力を神から授けられて、それを悪用して出世したと言われているらしい。
しかも、出世先に柳を選んだのは鐘醴さんを誑かすためだとか教えてくれた。
「改めて鐘醴さん人気だ…。」
「お、鐘醴さんと話したことあるんだ?」
ニヤニヤと話す希㐴だが、どちらかというと先程の出来事は不審者と間違われただけだ。
「屋敷を出るときに、屋敷に不法侵入したと間違われて刃物を向けられただけなんだけど。」
一瞬沈黙になった後、薊泈が希㐴に一瞥を投げたので希㐴が謝った。
「なんかごめん。」
「いや…!良いんだけど、全然夢のあるものではなかったよって話、がしたかった。」
そう言い切った後、ふと思い出した。
「あ、でも私の瞳の噂って広まってるみたいで、瞳を観察された。」
「ええ?無礼な人間ですね。」
薊泈が眉を顰めて非難をした。
「まぁでも、ぱっと出で上宮した人間だから怪しまれても仕方のないんだけど。」
「私、勝手に情報操作で非難されてるみたいですが…。」
後ろから知らない声が聞こえてきた。
「ひっ!だれ…。」
「…その話題の相手ですけれど。」
話題の相手…、つまり鐘醴さんということだ。
(やばい、すっごく失礼なこと言ってた気が…。)
「ご無礼をお許しください……。」
絶望的状況に声が震えて気力のない声が漏れてきた。
「そこまで気にしないでください。もともとの非は私にありますので。」
「お集まりしてるところ申し訳ないのですが、釉柳様のご予定に同伴をお願いします。」
薊泈が露骨にため息を付いていた。
鐘醴さんへの見せつけを感じる。
一方で希㐴は目を輝かせて此方に期待を向けていた。
恋愛に興味が強いのだろうが、会って初日の人と期待されても困る。
「えーやだ。」
軽く鐘醴さんがため息をついた。
思わず声が漏れてしまっていたみたいで慌てて了承する。
「…わ、わかりました。」
希㐴と薊泈が、生暖かくどこか呆れた視線で此方を刺していた。
「お二人、なにか勘違いしてるようですけど今日あったばかりです。」
鐘醴さんは頭を抱えて、私を連れて行った。
「モテるらしいし、こういう勘違いを何度も経験してるんだろな…。」
「えぇ、顔がいいですから。」
「あっ…」
聞こえてたようで、顔を強張らせるしかできなかった。
(早く目的地に着いてくれ。)




