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あれからどれくらいの月日が過ぎたでしょうか・・・。
あ、申し遅れました。
私は、昔アルウィン様によって作られた33号です。
ユリウス様とエミリア様、それからお二人のお子様のフェリウス様と共に新天地に移りました。
そして私はアーニャという素敵なお名前を頂き、使用人としてご一緒したはずが、皆様にアーニャは家族だといつも言われ続け、とうとう説き伏せられた私も使用人ではなく家族の一員として、それはとてもとても幸せな日々を過ごさせて頂きました。
楽しい時は皆様と共に一緒に笑い、ユリウス様とエミリア様がケンカをしてしまった時には仲裁に入り、時には叱るなんて事もありました。皆で料理を作り、食卓を囲みました。子育てもお二人と一緒にあたふたしながらも協力してやりましたね。さすがに子育ては私の頭にデータがなく戸惑いましたが、失敗しても責められることもなく、落ち込みはしましたが次に活かそうと前向きになれるような、そんな素晴らし環境でした。
自分が魔法で作られたと忘れてしまうほど、幸せな日々を過ごさせて頂きました。
さて、
現在のぺぺロール国は、決起した皆様や初代国王アルウィン様の遺志をきちんと受け継ぎ、過ちを繰り返さず、とても良い国のまま進んでおられます。
建国から7年後、アルウィン様はお亡くなりになられました。建国から5年経過した頃、王位をマティアス様にお譲りになりましたが、引退後こちらに訪問されたのは寂しい事にたったの2回でした。エミリア様達が一緒に住もうと言っても首を横に振り、決して頷いては下さいませんでしたね。こちらに来た時も、私のメンテナンスという何とも残念な理由でした。
実のご両親と弟君なのに会う際はいつも照れてらっしゃるのか、ぎこちなさがとれなかった不器用な方。私はこちらに来て人間のように過ごしてきたので、相手の気持ちを察する能力が身についたのです。アルウィン様より私の方が確実に皆様に遠慮なしでしたわ。うふふ。
それからは1人、また1人と、エミリア様達と交流のあった方々が旅立ち、その度に私もとても胸が痛みました。
ユリウス様も歳には抗えず、100歳のお誕生日の日にこの世を去られました。とても穏やかな最期でございました。
ユリウス様とエミリア様はその日に決めていたようなそんな感じがしました。
1週間程伏せていたエミリア様でしたが、その後は今までのように生活を送られ時はホッとしました。
エミリア様は120歳のお誕生日にフェリウス様、ギャッツ様と私で見送りました。
「結婚してから死ぬまで新婚カップルのようにイチャイチャしてた2人だ。 もしかしたらマリナのように何か仕込んであるかもな。がははっ」
と、
ギャッツ様は涙をボタボタと流し、鼻水を両鼻から垂らしながら、いつものように豪快に笑っておりました。
とても器用な方です。
ふふ、私もそんな気がいたします。お二人との生活は本当に幸せでした。ありがとうございました。
それからフェリウス様も旅立ちはこの地でした。
「ゴホっ。 アーニャが知る人間はこれで皆いなくなるが大丈夫か? ゴホっ。ギャッツはいるがエルフの血もあるからアイツは除外だ。 俺も子を残せれば良かったかもな・・・。1人にさせてすまないな。ゴホっ」
フェリウス様はご両親が積極的に魔法を教える事はしなかったのに、独学で学び、エミリア様やアルウィン様に並ぶ、凄腕魔法使いになりました。
エミリア様達はぺぺロール国には数回しか訪問されませんでしたが、フェリウス様はぺぺロール国に限らずあちこちの国に旅をしながら、ひょっこりこちらに帰ってきて数ヶ月滞在すらるという生活をなさってました。その中でも出会いはなかったようで浮いた話は1つも聞いたことはありませんでした。
「母さんを超えるような女性はいなかった。ってマザコンではないぞ? いや、母さんは俺の理想だったが・・・。 とにかくあれだ。 これだけの魔力を持つとな、相手に負担がかかり過ぎて出産に耐えられない。 魔法が使える者がたくさんいた時代なら良かったが、両親が逃げすぎたせいで今はもう魔力を持つ人間は、怖れられる上に避けられるっていう全くつまらぬ世の中だ。影で色々してやったんだから敬えよってな。はは」
そう言いながら、180歳でお亡くなりになりました。
「魔法使いは長寿ってのが通説だ」
ギャッツ様、素晴らしい。
現在の私は、生前のフェリウス様によって隅々までメンテナンスをされたので、まだまだスムーズです。アルウィン様とフェリウス様にどんどんと改良され、今では魔法人形と言っても信じてもらえないかもしれません。
だって・・・
悲しい時には涙が流れるようになってしまったのですから。
まるで人間のようではありませんか。
フェリウス様が、自分の死後千年は続く不思議な魔法をこの地にかけたと言っていたので誰かに見つかる事はないようです。
たまにギャッツ様が訪問するくらいで、寂しくはなりましたが、それでも穏やかにユリウス様から受け継いだ本を守りながら日々を過ご・・しており・・ます。
あ・・・れ?
私もとうとうで・・・しょうか?
躰が思うように動き・・・ません。
でも・・・あれから100年は軽く過ごしました。
やはりフェリウス様はとんでもない魔法使い・・・です。
というか、私の家族はとんでも・・・ない魔法使いばかりでございま・・したね。
私が力尽きた時は・・・皆様が眠る・・大きなブーガンの木のもとに移動されると聞い・・・ております。
流石・・・です。
安心して時が止まる・・のを待てそうです。
アーニャは本当に幸せで・・・した。
皆様、ありが・・・とうござい・・ました。




