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皆が帰って来る前に、ギャッツに案内をしてもらいマリーに会うことにした。
生まれてから1歳に満たない時までしか一緒に暮らしてなかったから、どんな感じになったか想像がつかないな。
この世界には4つの大陸があると言われているが、獣人の国は俺らが住んでる大陸から離れ、オーンの左にあるマイロンやラッペンがある大陸でもなく、オーンの北に位置する大陸に移住し、その大陸の端っこの狭い土地で暮らしているそうだ。
ギャッツにここで待っていてくれと言われ、小さな公園のベンチに座る。
「・・・なんだか、雰囲気が悪い」
エミリアが周りを見ながら言った。
「・・・だな」
昼間なのに、人がいない。 この公園も草が伸び放題だ。ベンチも汚かったから、エミリアが魔法でキレイにしてくれた。
しばらく待っていると、ギャッツと獣人と思われる男女がこちらに向かって歩いてきた。男性は杖をついている。
女性は、エミリアくらいの小柄な体型で、髪はほぼ白髪、顔はシワもあるが、目の色が赤ん坊のマリーと同じ紫色だった。耳はレオンの犬耳に似ている。
「マリーだな」
「ん」
エミリアと2人で女性の前まで近づいた。
「・・・ユリウスおじいちゃん、エミリアおばあちゃん。 私のせいでご迷惑をおかけして本当にーーーっ」
エミリアがマリーを抱きしめる。
先を越されてしまったな。
俺も2人まとめて抱きしめる。
「マリー、謝らないでくれ。 あれは事故だ」
「ん、そうだよ。 マリー」
「うっ・・・うっ・・・」
マリーの涙が止まる気配がない。
「はは。 泣きすぎだ」
「だね」
エミリアがマリーの頭をなでる。
そこへ一緒に来た、獣人の男性が、
「あ、あの、私はマリーと結婚した犬獣人のアンドレと申します。 狭い家ですが、お茶でもどうですか?」
おー、結婚してたのか。アンドレと名乗った彼は、見た目はとてもおっとりとしていそうな感じだ。彼となら穏やかに生きていけそうだな。
「マリーの祖父のユリウスです。 こちらは私の妻のエミリアです。 ありがとうございます。お邪魔させていただきます」
本当に古く小さな家だった。 ま、周りの家もこんな感じだったのだか、外の雰囲気も良くなかったし、獣人は肩身の狭い思いをして暮らしているのだろうか。
ギャッツは、アルを連れてくると言い、転移した。
その間、たくさん話をした。
もうこの地域には、ほぼ獣人はいないらしい。ここは、この国の貴族の領地の一部だそうだ。 ここの領主しか移住を認めてくれなかったから住みはじめたが、食料など生活必需品ですら店に断られ売ってもらえず、ならばと自分たちで畑をつくり作物を育てれば、収穫時期になると人間に荒らされてしまうらしい。その上、人間と揉めると獣人の立場は圧倒的に弱いらしく、殺されてしまったり、奴隷として売られるそうだ。
マリーは獣人としては珍しく、魔法が使えるからどうにか危機を乗り越えてきたらしい。あと、ブーガンの実を持っていたからどうにかなったらしい。
はは。レティはあの時、アルと一緒に必死に集めていたな。
マリーは人間とのハーフだから、獣人から嫌われ、アンドレだけが傍にいてくれたらしい。
「なぜ手紙に書かなかった? 」
「・・・幸せにしてると思っていて欲しかったの。うっ、ごめんなさい」
俺らの国は今、人間同士で揉めてるんだから、種族が変わればこうなってしまうのは仕方のないことなのか? それにしたって扱いがヒドすぎる。ここに居続けることはやめた方がいい。
「オーンに帰ろう、マリー」
「・・・っ。 あそこだってここと変わらないわ」
「アルが、お前の伯父が王になる予定だ。 ダメな貴族は追い出す予定だ」
「え? 王に?」
淡く光り、タイミングよくギャッツとアルが来た。
アルはボロボロな家や、近所の様子に驚きながら、
「マリー。 何もしてやれずにすまなかった。 オーンに帰ろう」
アルは頭を下げ、誤りながら、マリーの手を握っている。
「ん、帰ろう。今いる獣人を全員連れて行こう。 ぺぺ、アンドレの足を治してあげて」
「っ!」 驚いているアンドレ。
たしかに杖は使っていたが、何でわかるんだ?
だが俺にやらせるって事は、どこか欠損してるんだな。
よし、任せろ。
「わかった。 足を出してもらえますか?」
アンドレはどうすればいい?と困った顔をマリーに向けていたが、マリーが頷くとアンドレは靴下を脱いだ。
「「「「 ! 」」」」
アンドレの右脚の親指以外、全ての指が無かった。
「ひどいな」
「・・・指がなければ早く走れず、逃げられません」
手をかざし治れと祈る。淡く光り、アンドレの足の指が元通りになった。
「すごい! あ、ありがとうございます。 あの、マリーもお願いします」
は? お前もそんなヒドい目にあったのか?
慌てて魔力回復薬を飲む。
マリーは、両足の親指が無かった。
こちらも手をかざし、元通りにした。
「残りの獣人を連れてきてくれ。 皆、似たような感じにされてるんだろ?」
「は、はい! わかりました!」
指が元通りになったアンドレの足は速かった。
おいおい、爺さんなんだから気をつけてくれよ?




