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あれから長い時間、話し合いが続いた。
結局、俺とエミリア以外はここで生きて行く事に賛成だった。ま、エミリアは俺の意見に乗っただけだろうから、俺だけが反対だった。
俺はのんびりと暮らしたいだけなんだ。 転移、転移、転移で疲れたんだ。貴族はもう勘弁してもらいたい。だが、皆が王にと推薦したアルウィンの親である俺が、貴族を辞めるのはいかがなものかと言われてしまった。俺もひきたくなくてジタバタした。
「俺がアルの親って言って誰が信じる? ここにいる皆みたいにいい奴らばかりではない、特に今のオーンは最悪の状態だろ? マティアスとマリナじゃ信じてもらえないから、アルが王になるんだろ? 俺だって毎度説明するのも面倒だし、信じてもらえない者達に色々言われ、マリーみたいに心を閉ざしてしまうかもしれない。 あー、マリーの事も心配だから会いにいきたい。 アルも大切な息子だが、マリーも大切な孫なんだ。俺達が50年後に転移して傍にいれなかった間に、大切な娘と娘婿は亡くなってしまっていた。孫はこの国の貴族に傷つけられ、悲しんだ。 今だって生きてるかもわからない。 それに、きっと50歳過ぎた孫の方が俺より先に人生が終わってしまう。 マリーが、あの子がいいと言うなら傍で一緒に生きたいんだ。 自白剤はたくさん用意する。協力もする。 その後は、この国から離れてのんびりさせてほしい」
そう言って頭を下げた。
俺の話を横で聞いていたエミリアも、俺と一緒に頭を下げた。
「私も、ぺぺと同じ意見。 お願いします」
ありがとう、エミリア。
俺のワガママなのに、ついてきてくれるんだな。 本当に最高の嫁だ。願いが叶ったら、何から何まで世話をさせてくれ。
あー、そう考えると楽しみだな。
「・・・父さん」
お前に丸投げするような事をしてごめんな、アル。
「ふむ、ぺぺロール殿の話はわかった。 では、自白剤をたんまりと用意してくれ。 夫人は身重なのだし、ゆっくりしていてくれ。 後は、我々で話を詰めるとしよう」
「ありがとうございます。 では、失礼します」
陛下がそう言ってくれたので、礼をして退室した。
自室に戻った途端エミリアが、
「ごめん。 ぺぺの人生をおかしなものにしたのは、私のせいだ。 ・・・私が巻き込んでしまったせいだ」
俯き、震えているエミリアを抱き上げ、椅子に座る。
「エミリアに会えて、愛しあえて、夫婦になれて俺は幸せだよ。 エミリアは違うのか?」
「もちろん・・・幸せだ」
幸せと言いながら、まだ顔を上げてくれないエミリア。
「エミリア、心から愛してる。 顔を見せて? 俺はお前を抱いてるから両手が塞がってるんだ」
辛抱強く待っていると、ゆっくりと顔を上げ、俺と目を合わせてくれた。めったに泣かないエミリアが目を潤ませ、頬にも涙が流れた跡がある。
「泣くなよ、エミリア」
そう言ってキスをする。
「・・・うっ、だって私のーーーっ」
自分を責めそうな言葉がでそうだから、またキスをして言わせない。
よいしょっとエミリアを抱え直し、左腕でエミリアの腰を支え、空いた右手でエミリアの涙を拭う。
「2人でのんびりと暮らしたいんだ。 イヤか?」
首を振るエミリア。
「いつも何かが起きて、忙しかっただろ? マーチンで冒険者をやってた頃のようにさ、誰にもジャマされずに、最愛のエミリアとのんびりと生きていきたい」
言い終え、エミリアの頬に手を添えて、またキスをする。
「・・あむ・・・エミリア大好き・・・あむ」
「・・・んふ・・私もぺぺが大好き・・・」
エミリアの唇が腫れぼったくなるほど、長い時間キスをした。
「はー、したくてたまらん」
「ふふ、ガマンして。私もガマンしてる」
今度はエミリアからキスをしてくれる。
あー、幸せ。
「またさ、別のどっかを開拓して住まないか?」
「ん、同じ事考えてた」
もう俺らだけが住める広さでいいな。 あいつらが遊びに来ても構わないが、泊まりはご遠慮してもらいたいな。
「ふふ」
「はは」
俺の考えが分かったのか、エミリアも頷いて笑った。
ん、涙を流すエミリアよりも笑ってるエミリアの方が可愛いな。
この日、俺はエミリアから1ミリも離れたくなくて、ずっとくっついて過ごした。エミリアも同じ思いだったようで、受け入れてくれた。
あー、本当に大好きだ、愛してる。
あー、クソ、押し倒して愛したい。
翌日、話はまとまったようで皆が1度、それぞれ国に帰って行った。
俺はひたすら自白剤つくりを続けた。




