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2カ月かけてザイルに到着した。

やっと故郷だ。

マーチンと一緒であまりに街並みに変化は見られない。


変化といえば、エミリアだ。

竜人の事があり、怖いらしい。 この国に入ってから、俺の服の裾を持ち離さない。

はぁ、なんだよそれ。可愛いな。 昼間は茶髪に茶目のエミリアだが、もう色とか関係なくなってる。魔法は万能だが、生活能力とコミュニケーション能力ゼロのエミリアが好きだ。


この国に入る手前で、聖女召喚の話を聞いた。

タイミングがいいのか、悪いのか・・・

今となってはこのままエミリアと生きて行くことでいいとも思える。

だが俺達は、戻りたくて行動したんだよな・・・


「エミリア、とにかく王宮に行くか? 聖女召喚の話が出ていたからすぐかもしれない。実家に行ってみたい気持ちもあったが、両親は流石に亡くなってると思うし、王都の図書館で貴族名鑑がみたい」


「・・・うん、王宮に行こうか」


「・・・服じゃなくて、手をつなぐぞ」


「ん」


ぺぺと手を繋ぐ。

呪いが解けてからぺぺは背も高くなり、格好いい。伸びた金髪を1つにまとめ、濃い紫色の瞳。 細いが筋肉はしっかりとついている。

まだまだ弱いくせに、必ず私を守ろうと動く。 今までそんなことをしてくれる人はいなかった。 師匠も必ず私を前に出す。こてんぱにやられ、どうにもならなくなったら手を貸してくれる人だった。

両親はいつも怒鳴りつけ、痛めつける人達だった。兄もいたが、虫をみたり、大きな犬を見ると私を前に出して壁にし、自分は走って逃げていく人だった。


夜、ふと目が覚めるた時、ぺぺに抱きしめられていた。温かくて、安心できた。ぺぺには言えないけど。

髪の毛を大切に扱ってくれる。両親や兄は引っ張り、振り回していた。

もうされたくないと思っていた事は、言わなくても最初からやらない人。言葉足らずだと自分でも思っていて、言葉に詰まる事もあるが、待ってくれて聞いてくれる人。

苦手なニンジンを食べてくれる人。

この感情はなんなのか。良くわからない。ただ離れたくはないと思う。

50年前に戻る必要はあるのだろうか。

私は、竜人に会いたくないからどうでもいいと思うが、ぺぺは帰りたいのかもしれない。


わがままは言わず、召喚に間に合うように王宮に行くことがいいのだろうな。



2人は手を繋いでから、言葉を交わすことなく、王宮に向けて歩き続けた。



暗くなり、宿をとって食堂に入り食事をしていると、


「教会から偉い人達が王宮に向けて移動しているから何かあるかも知れないって話があるぞ」


「聖女様がお亡くなりになって葬儀も終わったばかりなのにか?」


「だからじゃねーの? 次の聖女を呼ぶんじゃねーのって話さ」



ぺぺを見ると、ぺぺも私を見ていた


「・・・・・」

「・・・・・」


「・・・明日には着くようにしようか、エミリア」

「ん」


その日宿に帰ってから、ベッドで横になった時、自分からくるっと1回転してぺぺに抱きつきにいった。


「っ!」


驚いた感じだったが抱きしめて、頭にキスをしてくれた


「おやすみ、エミリア」

「・・・ん、おやすみ」


ぺぺの腕の中は安心だ。

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