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「それからな、婆さん。 これは俺から説教だ。 何で俺達じゃなくてアルに頼んだ?」
「・・・弟子だからさ」
「私も弟子」
「それを言ったら俺だって婆さんの治癒を引き継いだんだ、俺も弟子だ」
「・・・」
3人で睨みあった。
「ふぅー。 お前らは甘いだろ。 どうにか説得しようとか、違う方法はないかと行動すると思ったからだよ。 アルはアタシに思考が似ている。 割り切ってやれると思ったんだかな」
「ちょっと前まで、2歳だったのは婆さんも分かってるだろ? しかも婆さんをめっちゃ慕ってたし。 ミッシュなんか婆さんとアルを本気で応援してたんだからな? 俺も少し不安になるくらい2人は仲が良かったからな。そんな奴に頼むなよ。可哀相すぎる。突然泣きながらやりたくない、婆さんに生きてて欲しいって俺達の所にきた時は本当に驚いたんだからな」
「・・・」
「ギャッツも盗み聞きしてて、キレてたよ? 師匠」
「ギャッツからの提案で、全員で婆さんをあの世に送る事になったからな。 どれだけ俺達が泣いたか、悲しんだかわかってくれよ。 俺達はさっき話を聞いたから、もうそこまで悲観的にはならないが、何も知らない皆は、今もめっちゃ暗いからな。それはもう、どんよりだ。 まだ婆さんは生きてるのに、生きてないかのようにな」
「・・・そうか。 アルには謝ろう、皆にもな」
「そうしてくれ。 次はこの本の事だ。 俺よりアルの方が適任じゃないか?」
本を取り出し、婆さんに渡す。
「いや、それはユリウスが持て。 アルは自分で本を作って持っている。 アルが聞いてきたら、ユリウスがこの本を見て教えてやれ。 アルの性格上、己で散々考え、悩み、試し、それでも解決できない時にユリウスの元へ行くだろうからその時は、意地悪はせず教えてやってくれ」
「わかった」
「ふむ、最後に全てを記すか。 ちょっと手を本の上に置け」
言われた通りにすると、婆さんが俺の手の上に手を重ねる。婆さんのローブからぶ厚い3冊の本がふわっと出てきて、手を置いてる本の中に入っていく。
なんだか更に重要な本になってる気がする・・・。
これを管理する俺は気が重いぞ・・・。
「完了だ。 ユリウスしか開く事ができないのはそのままだ。 バレたら皆が狙う本だから、命を大事にな。 ヒッヒ」
ヒッヒじゃねーよ! 俺、そこまで強くないし。 不安だよ。
「ぺぺ、私が守る」
俺の肩を叩きながら、キリッとした顔でエミリアが言う。
う・・・情けない。嫁に守る宣言されるなんて・・・。泣きそうだ。 今日は泣かないって決めたのに。
「ありがとう、エミリア。 俺も鍛錬は怠らず頑張る」
「ん」
「ヒッヒ。 そういう所がユリウスに託したくなる点だ。 せいぜい励め。 ところで、お前らはこの先どう生きて行くつもりだ?」
どうって言われてもな。 まだ具体的には考えてはないな。
「魔物もいなくなった。 他の大陸に行けばいるだろうが、命の危険もあるし、皆と離れるのは辛いのだろう?」
そうだな。
「なら薬でも作って売るのがいいだろう。 2人とも回復が使えるから魔法で治すのもいいが、その時は必ず金をとれ。 ちゃんと表記して患者に料金が分かるようにしろ。 理由は、聖女はそれで心を病むからだ。 魔法で体は治せても、心までは治せない」
そうなのか?
「魔力だって底がある。 1日に診る人数も無限はムリだろ? それなのに人ってのはわかってくれない。 いつの時代も最後は治す側のせいにされる。 本当に理不尽な世の中だ。何で助けてくれないんだ、なんて日常だからな。 特にザイルの上層部は腐ってたから全て聖女が負担した。 治療も文句も全てだ。聖女に報酬はないのにな」
うわぁ・・・。 やだ、怖い。
「エミリアは図太いから大丈夫そうだが、ユリウスは真面目で優しすぎる。 すぐ心を病むだろう。」
エミリアもうんうん頷いている。
「貴族なんか、擦り傷くらいでも来るし、その上順番を守らない。 本当に面倒な奴らばかり。 それを見た平民は、貴族にはへこへこし文句を言わないが、聖女には文句を言う。 当時はアタシも元気だったから聖女を守り、貴族に文句を言ったがな。ヒッヒ」
勝手に召喚して、酷使し、それで聖女が年老いたら、魔力を搾取されお亡くなりになるんだよな。 聖女召喚は婆さんの言う通り、廃止して良かった。可哀相すぎる。
「だから例えばの話、擦り傷は10マニー、捻挫は15マニー、骨折は30マニー、順番を守らなかった奴はプラス50マニーとちゃんと表記しろ。 なるべくなら欠損を戻せるのは内緒にしておいた方がいい」
「わかった。 でも婆さんがいないのは、めっちゃ不安なんだけど」
「ヒッヒ、そこはエミリアが頑張る所だな」
「ん、頑張る」
握り拳を作り、意気込むエミリア。
「エミリアが婆さんみたいになるのはイヤなーっ痛!」
最後まで言わせてもらえず、箒が頭に飛んできた。またエミリアが頭をなでてくれる。
「師匠、ぺぺが可哀相だ」
「フン」
顔を背ける婆さん。
こんなに元気なのに、本当に死んでしまうのか? いつもの感じなままだから、実感がわかない。
最後にと言ってまた緑の石をもらった。 今度は俺とエミリアだけ。 これの効果はバツグンだったからありがたい。 エミリアと離れるのはもうごめんだ。
すっかり長居してしまったから、そろそろ行こうか?とエミリアに言ったが、エミリアは婆さんのベッドに潜り込んでいった。
「やれやれ。 最後まで迷惑な娘だね」
婆さんは、そんな事を言いながら、出ろとも言わないし、エミリアにスペースを作った。
最後に2人で話もあるかもしれないな。
「あとで、様子を見に来る」
そう言うと、言葉で返事はせず、2人とも布団から手を出し、手を振った。
「はは、またな」
何だかんだ仲良しだな、あの2人は。




