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翌日、婆さんにアライヤ公爵家に行くのはやめろと言ったが、
「忘れたかい? 今、この国で魔法を使えるのはアタシだけだと。 お前達は入れるなよ? あと聖女も。 今は魔法陣だけあるのだろう。あの家で魔法を使える人間は途絶えたと思っている」
「でもかなり怪しいぞ」
「何かあった時の対策はちゃんとしてある。 ムリはしないさ。 様子を見てくるだけだ。 子供達の事はサミュに伝えてある。 ユリウス、お前はお前のやる事をやれ。 じゃあな」
そう言って、転移していなくなった。
はー、無事に帰ってきてくれよ・・・。
魔法って便利だが、争いの種にもなるな。
婆さんからもらった本を出す。
水魔法で他に出来ることはないかな。パラパラとめくってると、
「水を飲料水として使うには手をキレイにすべし。 体調不良になる危険性あり。 まずその水で己の手を洗え」
「雷を使う奴は、味方でも敵だと思え」
なんだこれ。
水の強さについての記述がないな・・・。
同じページに聖女について書いてある。
ある年齢になると、急激に弱り、シワシワになる。魔力を搾取されている可能性あり。
うわぁ・・・。
勝手に召喚しといて、そんな扱いかよ・・・。
エミリアを取り返したら、早くマーチンに帰ろう・・・。
「ぺぺ何してるんだ?」
ギャッツがこちらの様子を見に来たらしい。
「・・・婆さんにもらった本を読んでたら、この国にいるのがイヤになった」
「がははっ! 昔からお婆がせっせと何か書きとめていた本か! お婆の率直な書き方なんだろ? それだけでお婆の顔が浮かんで、ダメージを受けそうだな!」
「・・・その通りだ」
「がははっ!」
そんな時だった。
淡く光ったら、人が現れた。
「「 !? 」」
「ギャッツ・・・知り合いか?」
「いや、こいつは獣人だな・・・」
右手と右足がない。出血もヒドい・・・。
「回復魔法使っていいか? あまりにも悲惨な状態で可哀相だ」
「・・・そうだな。これはヒドすぎる」
手をかざす寸前で、
「待て! そいつは誰だ?」
婆さんが帰ってきた。
こういう時に婆さんがいてくれると、なんかホッとする。
「突然現れた」
「そうか・・・。妙な気配がしたから、慌てて帰ってきたが・・・ん? こいつが手にしている小瓶から、エミリアの魔力を感じるな。 サミュが回復してやれ。今はお前の小さい治癒力の方がいい」
「・・・ああ。 わかった」
と言いながら、ギャッツが回復魔法を使う。
「そのままベッドに運んでやってくれ」
「ああ」
ギャッツが獣人を運んで行く。
「いい練習になるかもな」
「?」
「アイツが敵ではないと分かったら、ユリウスが手と足、あと目を治せ」
「!?」
「禁術でアタシの魔力を流したろ? お前も使えてもおかしくないんだ。 だが魔力が多くないから、どこまでできるか確認したい。 ヒッヒ。そのうちサミュの腕を切り落とそうとしたが、調度いい奴が出てきたな」
ギャッツの扱いが可哀相すぎる・・・
「・・・俺に欠損を治す力が?」
「アタシはできると思ってる」
「・・・そうか」
話しながら、寝かせてある部屋に向かう。
「エミリアは大丈夫かな・・・」
「ヒッヒ。話を聞かなきゃ分からない」
「・・・そうだな」
「とりあえず、アタシが話す。 ユリウスは黙ってな」
「・・・ああ」
部屋に入ると、ギャッツが獣人の血を拭いていた。
「・・・う」
獣人の目が覚めたようだ。
「・・・ここは・・どこだ?」
「ヒッヒ。 ここはザイルだ。お前は何故ここに?」
「どうしようもなくなったら使えと、もらった小瓶を使ったらここにいた」
「ヒッヒ。 なら大丈夫そうだ。ユリウス、やってみろ」
「・・・ああ」
獣人のケガがヒドすぎて、少し気持ち悪くなってきた・・・。
だが、思いきって手をかざす。
淡く光る。
心の中で、腕が治れ、治れと祈る。
魔力がどんどん減っていくのがわかる。
それでも治れ、治れと集中する。
「ユリウス! そこまでにしな! 魔力切れになるよ!」
ハッとして、手を離す。
「はぁはぁ」
集中が切れたら呼吸が荒くなり、汗が止まらない! 立っていられず座り込む。
「ぺぺ! 大丈夫か?」
ギャッツが背中をさすってくれる。
「・・・ぺぺ? エミリアの旦那か?」
「「「 ! 」」」
「エミリアは無事か?」
ヨロヨロと獣人の近くに行く。
「拒絶中だ」
振り返り、婆さんを見る。
「ヒッヒ。 ユリウス大丈夫だ。 結界を張る事が出来たなら、エミリアの勝ちだ」
あー、良かった! エミリアよく頑張った!
「 あっ! 腕は?」
獣人を見ると、右手を見て驚いた顔をしている。
「すげーぞ! ぺぺ! お前はどんどん成長していくな! がははっ」
ギャッツにバシバシと背中を叩かれる。
「ほら、ユリウス。魔力回復薬だ。 これを飲んで次は足と目だ」
「~~~!」
「お婆は、えげつねーな!!」
「サミュ! お前の腕を切り落とすよ!」
そう言いながら、飛ばした箒をギャッツの頭にあてる
「ギャ!!」
婆さん、俺にもギャッツにも容赦なし!!




