2
「とりあえず座ってくれ。」
「・・・わかった。だがあまり大きな声は出さないでほしい」
「すまなかった。私からもお願いがある」
「・・・なに?」
「すぐ、いなくなろうとしないでくれ」
「・・・」
「約束してくれ」
「・・・ん」
「竜人族とは結婚したくないのか?」
「番とかいきなり言われても分からない。こちらは相手を見ても何も思わなかったし、その前にオッサンと結婚したし。それがどうなってるかわからないし。もめるのは面倒だ」
「・・・そうか。その話し方はどうしてだ? 貴族令嬢として育てられたんだろう?」
「ちゃんと会話するようになったのは師匠とからだ。それまではあまり話してこなかった」
「・・・そうか。 それはお師匠の話し方か・・・。じゃここにいる間は、私が君の・・・エミリアの保護者になる」
「・・・なぜ?」
「エミリアのコミュニケーション力では上手くやっていける気がしないし、まだ10代だ。君は小柄だし、18歳には見えない。見た目で判断するなら、15歳以下だと思ってたからな。大人の私がついていた方が良い」
「む」
自分が1人でやっていく自身がないだけじゃないの?
「この国がどこで、今が何年なのか、そういう事は調べてこなかったんだろ?」
「・・・」
「もし戻りたいなら聖女召喚について調べなくてはいけないかもしれない。 どうやって調べる?」
「・・・」
「それに女の子1人は色々と危ない」
「・・・」
「保護者の私がいた方が良いだろ?」
「・・・わかった」
「よし、決まりだ。 よろしくなエミリア。 私の事は、兄でも、ユリウスとでも呼んでくれ、眼鏡と呼ぶのはダメだ」
「・・・ぺぺ」
「・・・まぁ、いいか。 とりあえず腹が減った。飯でも行かないか?」
「・・・うん」
「街まで案内してくれるか?」
「ん」
ぺぺは鈍くさかった。 すぐ躓くし、ぶつける。その度に眼鏡がずれてアホっぽい奴だった。よく保護者を名乗り出たな・・・
面倒だから森を抜けるまでは飛行した。
「エミリア、飛ばす時は言ってくれ。なんか色々なモノが色々なトコロから出そうで危なかった」
「・・・ん」
涙と鼻水は見えたがな・・・
「さて、何を食べるかだな。っておい!待て」
エミリアがいい匂いの方へ歩いて行く。
「おー嬢ちゃん、クレープうまかったか?」
うんうん頷くエミリア
あそこのクレープ食べたんだな・・・
確かにいい匂いがするが、ダメだ。
栄養バランスが悪すぎだ!
「エミリア、もうクレープは食べたんだろ?今度は野菜や肉だ。店を探しに行くぞ」
「がはは、2個も食ってたな。兄ちゃんか?兄の言うことは聞いとけ。また明日でも来い!」
「・・・わかった」
なんでこのオッサンには素直なんだ?
意味わからんな。
「おじさん、ここら辺で美味しいご飯食べられるところある?」
「野菜や肉で旨いのは、このまま真っ直ぐ行くと黄色い看板で『ココ』って書いてある店がオススメだそ」
「ありがとう」
「おう、またな」
エミリアは1人で歩いて行く。まったく・・・
「親切にありがとうございました、ところで今って何年でしたっけ?」
「がははっ、お前ら変な兄妹だな! 妹は昔の金を出してきたし。今年は セー歴1077年だ。しっかりしろよ?兄ちゃん!」
「っ! ありがとうございました。後日、私も買いにきます」
「おう、待ってるぜ。気をつけてな」
「はい」
エミリアを追いかける。
「待って、エミリア。約束しただろう?すぐいなくなろうとするな」
「・・・」
振り返り、無表情でこちらを見るエミリア
これはホントに色々と言い聞かせないとダメだな
カランコロン
「いらっしゃい」
このお店も美味しそうな匂いがする。
「2人かい? 窓際のテーブルにどーぞ」
案内された席に向かうエミリア。
一応、振り返る
近くにいるな。ぺぺはうるさいからな。
席に座りメニューを見る。
「うーん、わかんない。ぺぺが頼んで」
「好き嫌いはないのか?」
「ニンジンはダメ」
「ふ、了解だ。 入ってれば私がたべる」
「ん」
「あ・・・」
「何?」
ぺぺがローブから財布を出す。
「古い金しかない」
「・・・今日は私が払う。 明日質屋に行ってきて」
「すまない」
「ん」
サラダにパン、ビーフシチュー、トマトパスタが並ぶ
「ザイルにいた時にあったメニューにした。」
「ん。おいしそう。いただきます」
「いただきます。 ん、旨い」
「ん、おいしい」
パスタとシチューを口に運ぶ度に、ぺぺの眼鏡が曇る。それで見えてるのか?
半分ほど食べ進めたところで
「さっきのクレープ屋で今が何年か聞いたんだ、1077年だった」
「ザイルにいた時は何年?」
がくんっ
「・・・知らなかったのか?」
「気にしてなかった」
「はー。・・・1027年だった」
「50年後」
「そうだ」
「・・・ん? それよりぺぺ、その眼鏡変だそ」
「はぁ?」