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「うー、目を閉じてても眩しい・・・」
自分の足もとから出る光が収まるのを待つ。
光が収まり、目を開ける。うーん、ここはどこだろう?
「う・・・ ここは?」
「えっ?誰っ!?」
眼鏡をかけ、ローブをまとった男に話かける。
「君も誰だ? 私は聖女召喚の儀に参加していたはずだ」
「そうでしたか、では」
歩きだそうとしたら
「ま、待て、君は誰だと聞いている」
「・・・エミリア。 では失礼」
「いや、まだ待て」
しつこいなぁ
「ここはどこだ?」
「・・・知りません」
「なんでだ」
「私も今、来たので」
「はあーーー?」
「では」
飛行魔法で逃げる
「お、おい! 待ってくれ!」
申し訳ないが、待たない。
さようなら
あそこが基点の場所だから1度戻りたいが、あいつがいなくなるまでは、フラフラしてみよう。
森を抜けると街があった。
私がいた所とそんなに変わらないな。思ったより離れていなかったのかな・・・
歩きながら、話かけてみるか。
着地し歩きはじめる。
串焼き、エールは変わらなそうだ。
から揚げ? クレープ? 聞いた事がないものもあるな。店の前を通るといい匂いがしてくる。
「お嬢ちゃん、どうだい? おいしいぞ!」
うーん、手持ちのお金は使えるの?
「これ、使えます?」
「おー、ずいぶん古いのを使ってるな、金は金だから使えるが、質屋に持って行けば、倍になるんじゃないか? コレクターが喜びそうだ」
「質屋はどこですか?」
「このまま真っ直ぐ行って、突き当たりを右に行けば、ロール質屋って看板があるぞ」
「ありがとうございます。 その後、ここに来てもまだクレープはありますか?」
「がはは、ちゃんとあるぞ。 大丈夫だ」
「じゃ、ちょっと行ってきます」
「おう、気をつけてな」
言われた通りに歩いたら着いた。
手持ちを全部ではなく、ちょっとだけ換金しよう。
だまされては困るしね
「いらっしゃいませ」
「このお金、価値があると聞いたのですが」
「おー、これは懐かしいお金ですね。 確認しますのでお待ちください」
しばらくすると、
「お待たせしました。 本物です。 今ここにある金額は5,000マニですので25,000マニでよろしいでしょうか?」
ほえー、5倍になりましたよ! クレープ屋のおじさん!
「お願いします」
「畏まりました。ではこちらをどうぞ」
「ありがとうごさいました」
「こちらこそありがとうごさいました、またどうぞ!」
店を出て、クレープ屋に戻る。
「おー、戻ってきたか? 何にする?」
「人気なのを2つ」
「いちごクリームとバナナクリームだ、それでいいかい?」
「はい、お願いします」
「2つで500マニだ、毎度あり!!」
見た目と値段はあってるような気がする。
近くのベンチに座り、食べてみる
「っ! おいしい・・・」
1つで良かったけど、おじさんがいい人だったから2個買ったが、これならペロリと食べられる。
ここまでの様子をみるに、私は場所の転移と時の転移をしたようだ。
あのお金は、ザイルにいた時には普通に使えたお金だ。
それを会った2人とも、懐かしがっていた。
やはり聖女召喚に合わせて魔法を使ったから、何かバグがおきたのかな?
となると、帰るのはムリか? よく分からないが1度戻って転移を試してみるか・・・
人気がないところまで歩いて、飛行する
確かあの辺りに赤いピンを落としておいたはず。
着地し探す。
お、あった!
ピンを拾いポケットにしまい、転移魔法をー
「ちょっと待ったぁーーー!!」
「!?」
「やっぱりお前のせいか、 私も帰る。 連れていけ。」
「・・・」
風魔法で眼鏡を飛ばす
「う、うわぁー」
転移魔法を使う
ん? 発動しない。もう1度使うが、やはり発動しない
「お、おい。待ってくれ! 私も一緒に帰らせてくれ」
「発動しない」
「はぁ!?」
その後、眼鏡を横に置いて転移したり色々試したが、ダメだった。
私は発動しないが魔力は減って、疲れた
眼鏡は帰れないことに絶望して、膝をついた
適当な木に腰を下ろし、とりあえず、お互いの事を紹介しあった。
眼鏡は、ユリウス・ぺぺロール、25歳。伯爵家の3男。武力なし、学力なし、顔が穏やかで、仏様のようだからと聖職者を進められ今に至る。独身。恋人なし。
私はエミリア・ステイサン、18歳。元男爵令嬢
普通の親から産まれたが魔力持ち。父が妻の不貞を疑い、両親は不仲に。母から疎まれ育ち、8歳の時に58歳の侯爵家のオッサンと結婚。教会で誓いのキスの直前、魔女が現れ、連れ去られる。その後、魔女の訓練を受ける。17歳の時、竜人が番だと求婚してくる。逃げ回っていたが、どこに行ってもすぐに居場所がバレ、困っていた所に聖女召喚の話を聞き、現場に潜り込み、召喚の魔法陣の上で転移してみたらここに来た。
「あー、昔そんな話があったな。 男爵家は批判をあびて没落したな・・ 君のことだったのか」
「もう家は没落していたのか、知らなかった」
「それより帰れないのは君のせいだ。どうしてくれるんだ?」
「どうもこうもできない。 ここで生きろ。多分、場所と時が変わった。 金は持っているか?」
「ああ、そんなにはないがあるぞ」
「質屋に行けば1,000マニが5,000マニになるぞ。コレクターが喜ぶらしい。 クレープという食べ物はおいしかった」
「・・・君ははどうするんだ?」
「私は適当に暮らしていく」
「そうか」
「じゃ、さようなら」
「うん、さようなら・・・ってワケにはいかないんだよ!!」
「っ!?」
び、びっくりした。 まだ何かあるのか?