始まりの章~ロイヤル・テア
ローカル・テアから「ロイヤル・テア」と言われたニキア。
なんだか不機嫌そうだ。
自分はダークネスを発見したと報告しただけなのに、
ロイヤル・テアなんか引き合いに出してきて。
それなら黙っていればよかった。
そんなことを考えていた。
一方、優花はアンフィスワールドの歴史、と言う授業を受けていた。
この国、国と言うかこの世界では
千年前に悪い奴らといい奴らが大戦争をし、いい奴のなかで一番強い
女神様がコテンパンにやられながら皆を守り、なんとかいい奴らが勝利した。
これが優花の理解だった。
ニキアにこの通り話すと、
「ま、そんなところでしょ」
という返答。
「女神様でもやられちゃうなんて、悪い奴らって強かったんだね」
優花が言う。
「確かに、ダークネスは強かったけど、普段の女神様なら相手にすらならず、
やっつけられた相手なんだけど、
あの時はちょうど女神様の代替わりの時期だった。
女神様の力が弱まっていたんだよ」
ニキアは言った。
「でも、そもそも、女神様は攻撃をしないから、やっつけるというのは少しちがうかな。
いい方向に導くというのが正しいかも」
「ニキア、詳しいんだね」
「そりゃ、私だってあの時戦ったもん。女神様の護衛係だった」
「千年前でしょ、いつから生きてるの?」
優花は真顔で聞いた。
「いつからって、私、今、1013歳、、、、だと思う」
「私と1000歳ちがいだね、でもさ、13っていうの一緒だね、
ニキアと私、同年代くらいだと思ってた」
優花は勝手に納得している。
「でもさ、ここじゃ私、先生だし、働いてるし、優花よりお姉さんだよ」
ニキアが反論する。
あっちの世界じゃ、いつも私に世話されてるくせに、と言いかけたが、やめた。
これは冗談にならないと思ったから。
「それで、女神様は交代したの?」
優花が千年前の話に戻した。
「それが、あの戦争の混乱で、次期女神が行方不明になったんだよね」
「行方不明、なんだ、千年も」
「そう、千年も。だから今は、6人のローカル・テアが女神の代行をしている。
先代女神のアテナはまだ生きてはいるけど、ほとんど何もできないから。」
「ローカル・テアって私をここに連れてきた人だよね」
「そう、女神の素質を持つ人たち。普通の魔法使いとは違うんだよ。
ローカル・テアの使う魔法は特別なんだよ。
ただの魔法じゃここと優花のいる世界を往復させたりできない」
ニキアの言葉に優花が思った、
あの、何度目かの危篤状態のとき、ローカル・テアという人が私の世界に来てたんだ。
なんで?運よくあそこにいたんだろう。
優花は疑問だったが、それをニキアに聞くことはしなかった。
その代わり、
「ニキアも両方の世界を自由に行き来できるよね、それはなんで?
ローカル・テアになにかしてもらってるの?
でもさ、内緒で行ってみよ、とい言うことあるよね」
ニキアと優花、こっそり世界を往復したことがある。
ニキアが、病院の食堂のうどんがどうしても食べたい、とか
優花が魔法学校の教室に忘れ物しちゃった、次行くまで放置できないとかで。
「そりゃ、私はロイヤル・テアだから」
ニキアがぼそっと言った。
「なに、そのロイヤル・テアって。なんかローカル・テアより格上って感じの名前なんだけど」
優花が言う。
「それは、私がアジールメソの出身だから。聖地の中央っことたよ。
分かりやすく言うと、都心一等地出身って感じかな」
「出身地でそんなに違うかな、別に都心一等地出身って言われても別に、だけどな」
優花が言う。
「ここでは出身地によって生まれ持ったものが違うんだよ。
私はアジールの出身というだけで生まれながら膨大な魔力をもっているんだよ。
魔力だけなら、SSSランク」
SSSランクと言えば格付けでも最高位だ。
特に魔力は生まれ持った素質の要素が大きく、なかなかランクが上がらないのだ。
優花はこの時初めてニキア自身の魔法の力の話を聞いた。
「じゃ、魔法使いのランクもSSS?」
と聞いてみると、
「あ、それは、他がいろいろあって、SSランク」
優花はこの時はまだ知らなかったけれど、魔力がSSSランクなら魔法使いのランクも
同じSSSランクとなる場合がほとんどなのだそうだ。
でもニキアはなぜか一つ格下げのランクを付けられていた。
それでもSランク以上の魔法使いは、超一流、洗練された優秀な魔法使いなのだ、
と優花は学校で習っていた。
「でも、すごいんでしょ、SSランクって。ロイヤル・テアだもんね」
そういう優花に、
「お願い、ロイヤル・テアとか言わないで。
なんかこの言葉聞くと、いやな気分になるんだよ。」
ニキアが訴える。
優花もニキアを不快にさせるつもりはなかったので、
「ごめんね、もう言わない。嫌なこと言うつもりはないから」
と言った。
「嫌っていうのは、悪口言われた時の嫌とかじゃなくて、なんかずーんとくらい気持ちになるんだ。
だから嫌なの」
ニキアはそう言いながら、下を向いていた。
千年まえの話をしていた時、いつもより表情が硬くなっていたのを優花は見ていた。
そんなニキアの顔を見るのは初めてだったから。
優花はニキアの事が気になっていた。
これが、ニキアにとってつらい体験じゃないといいのに、と心から思っていた。
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