始まりの章~ダークサイド
今は、アンフィスワールドにいるニキアと優花。
優花は毎日嬉々として魔法学校エルビスに通っている。
ここでの優花は魔法習得クラス、初級に在籍している。
魔法の基礎から、Cランク魔法使いを目指す。
この前魔力がAランクになったエヴァは近いうちにCランク取得試験を受ける予定だ。
授業は魔法の5原則、
魔力、技術力、攻撃力、防護力、回避力を取得し能力を高めるものだった。
分野によって先生が違う。
ニキアは魔力のクラスとこのクラスの全般、担任のような先生だった。
自分の受け持ち授業がない間、ニキアは気になっていたことを
ローカル・テアに伝えにいっていた。
そう、優花の病院で会った男の事だ。
初めて優花が連れてこられた応接室の様な部屋、「ローカル・テアの部屋」で
数人のローカル・テアを前に、ニキアがシャロームの世界に、
ダークネスをまとう者がいた、と伝えた。
ここ、アンフィスワールドには、「ダークサイド」という闇の世界と闇の者がいる。
何前年もの間、争いを繰り返してきたが、いまでは居住地を分けて、なんとか
共存している状態だ。
ダークサイドにいる者はダークネスと言われており、闇をまとっている。
その闇は、ダークネスが思いのままに操ることができる。
人を欺くことも、悪に染めることも、死に至らしめることもできる闇。
ダークサイドにいる者たちは、こちらのことを「フォス」と呼ぶ。
「フォス」と「ダークネス」その数が圧倒的に上回ったほうが、アンフィスワールドを
支配することになる、そう言い伝えられている。
しかし、これまでどちらの数も大差はなく、どちらかが支配する、そういうことは起きてはいない。
「シャロームにダークネスがいるはずかない」
ローカル・テアの一人が言う。
千年前、何度目かのダークサイドとの製力争いが起きた時、
ダークネスたちが、シャロームに入り込もうとした。
シャロームは闇のない健全な世界、ダークネスに浸食させるわけにはいかない。
フォス側の戦力を総動員させてこれを防いだ。
その時、女神アテナが再起不能なほどの痛手を負った。
それ以来、女神アテナ部屋にこもり、外に出ず、全ての事は
テアと呼ばれる女神(代行)に任せているのだ。
女神アテナが身を挺してまで防いだのだから、シャロームにダークネスがいるはずがない。
ローカル・テアたちは皆そう思った。
ニキアだってそうだ。
千年前の戦いにニキアも参加していた。
その時、女神アテナの圧倒的な力をこの目で見ている。
完璧な防御だった。
それでも、優花の病院で見たもの、それはダークネスだった。
「もしもそれが本当だとすれば、千年前の戦いの後、密かにシャロームに入り込んだとも考えられる」
「それか、シャロームの人間たちに闇を持つものが出現した可能性もある」
「いづれにしろ、見過ごすわけにはいかない。シャロームで監視をしてほしい」
とローカル・テアから依頼された。
「え、監視用に誰か連れてきてよ。看護師見習いって結構重労働なんだから」
ニキアは不満げだ。
そもそも、シャロームの世界でダークネスが増えたとして、それはあちらの人間に
闇に落ちる奴が多いってことで、あちらの世界が解決すればいい話だ。
ニキアはそう思っていた。
ダークネスが優花に使わせようとしている新薬にかかわっているから
気になっているだけだ、と。
ニキアの考えを聞いたローカル・テアたちは、
「ここアンフィスワールドとシャロームの世界、すべての為と思えないのですか」
そうニキアに尋ねた。
「うん、思えない」
ニキアは答える。
「あなたはロイヤル・テアなんですよ。皆の事を考えて」
諭すように言われるニキア。
ロイヤル・テア、そう呼ばれたニキア。
とても迷惑そうな顔をしていた。
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