表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/73

始まりの章~魔法学校「エルビス」

ニキアと優花、ともに「親善交流大使」に選ばれた者同士。

これからはペア(バディ)


お互いの事をすこしだけ理解したところで、

いや、ニキアが勝手に優花のことをあれこれ考えただけだった。


まずは、ニキアの住む世界、アンフィスワールドに優花を連れてきた。

ここで優花は魔法学校の生徒として過ごす。


ニキアは優花を自分が教鞭をとるこの魔法学校「エルビス」の生徒として、

扱うことにした。


優花の姿をここの住人としておかしくないように変化させた。

髪型は優花の希望通り長いつやつやの髪にして。


優花は気が付くと、ここに来ていた、そんな感覚だった。

アンフィスワールドと優花の住む世界の行き来は、ニキアによって操作されているようだ。


ニキアの部屋、教師の部屋といった小部屋で、優花はニキアと立っていた。

でもいつもの私じゃない、優花はそう感じた。


鏡で優花の全身を見せるニキア、

「どう、理想の姿になってるかな」

そう問いかける。


鏡の中には、長い髪をなびかせた、バラ色のほほをした明るい顔の女の子が立っていた。

この魔法学校の制服らしい、紺色のワンピースに編み上げのブーツを履いて、

肩からはカバンがかかっていた。


「これが、私、なの?」

優花が尋ねる。

顔立ちは優花のままだったが、姿は全く違う。

どこから見ても、健康で元気いっぱいの女の子だった。


「ここでは、優花って名前は使えないから。なにか考えないと」

そういうとニキアは首をひねりながらぶつぶつ言いだした。


「ユーナ、だめだもういるし。ユーリ、これもだめだ」

しばらく悩んでいたが、

「うん、決めた。ユーカ。これあんたのここでの名前ね」


優花とユーカ、発音的にはほぼ一緒だ。

「何が違うんだろう」

優花は思ったと同時に、

「どうせ、名前つけるんだったら、ダイアナとかアフロディーテとかにしてくれればいいのに」

そんなことを考えていた。


ニキアに連れられて教室に向かう優花。

ニキアはかなりの速足だけど、優花もそれについて早く歩く。


優花は前に来た時もそうだったけど、こんなに早く歩ける自分に驚いていいた。


教室入ると、20人ほどの生徒がすでに机に座っていた。

「新しくこの魔法学校「エルビス」に入ったユーカです。仲良くしてね」

とニキアが優花のことを皆に紹介した。


優花は自分の世界でも長期休んだ後、学校に行くと先生がこんなふうに

前に立たせ、

「優花さんが退院してまたみんなと勉強ができることになりました。仲良くしてあげてくださいね」

とか言っていた。


その時はみんなの視線が刺さった。

どうせ、またすぐ休むんでしょ。無理してこなくてもいいのに。

そんなことを言っているように思えた。


ニキアに促されて、席に着く。

椅子に座ると、すぐにすぐ後ろに座っていた子が話しかけてきた。

両隣の子も目くばせしてくるし、どういうふうに反応すればいいのかわからない

優花は困っていた。


授業が始まると、皆優花のことはしばし置いておいて前を向いた。

先生のニキアが授業を始めたが、正直何を言っているのかまったくチンプンカンプンだった。


その日の授業は「正確な魔法量の測り方」だった。

ニキアがそれぞれの魔力の量を周囲に知らせるように言った。


魔力の量、というのはその人のもっている魔法使いとしての資質の量なのだとか。

「エヴァの魔力量、すごいね」

エヴァと呼ばれた優花の隣の席の少女の周辺がざわついた。


「この魔力ならAランクだね」

ニキアも驚きながらがそういうと、エヴァは嬉しそうに教室から出て行ってしまった。


そして、ニキアは優花の前に来た。

「ユーカ、どれほどの魔力があるのか見せてもらうね。集中して掌の上に魔力を集めて」


優花は一応、眼を閉じて両手をお水でもすくうような形ににして

「魔力、出てこい」

と心で念じた。


内心、自分は魔法使いじゃないし、魔力なんかあるわけないじゃん。

と思っていたのだけど。


するとふたたび周囲がざわつき始めた。

「やるじゃん」

というニキアの声が聞こえる。


優花が目を開けると、クラスのみんなが集まってきていた。

「これなら、Cランクありそうだね。初日からこのレベル、すごいよ」

ニキアがこう言った。


教室に来る前にニキアから渡された

「魔法使いの手引き」

を見ると、魔法使いというのは細かくレベル分けされているのだそうだ。


魔力、

技術力、

攻撃力、

防護力、

回避力、

それらを総合し、圏外からSSSランクまで、こうランク付けされている。

魔力がCランクというと、他がだめでも、Fランク魔法使いということになるそうだ。


授業が終わり休み時間になると、ニキアが何か言いにこようとしたが、

それよりも早く、周囲の生徒たちが優花を囲んだ。


口々に「すごいね」とか「前はどの魔法学校にいたの」とか

言っていた。


優花は皆に話しかけられまんざらでもない様子で答えていた。

その姿をみたニキアはそのまま、教室を出て行った。


「この休み時間ちょっと長いから、あっちに行って遊ぼうよ」

と、いつの間にやら教室に戻っていたエヴァが言った。


エヴァに連れられて中庭に行く。

そこでエヴァが魔法で出した、小鳥を追いかけっこして遊んだ。


中庭にある小高い丘に駆け上がって、小鳥を捕まえた。

エヴァに小鳥を渡すと、

「ユーカ、素早いね。すごい、ユーカの勝ちだ」

と言って賞賛してくれた。


今までも優花は学校に通ったことはあるが、

休み時間になると、保健室に行って薬を飲んだり、体調を確認したりする必要があり、

みんなで遊んだことなんかなかった。


「休み時間に遊ぶって、こんなに楽しいんだ」

優花は走っても息も切れず、倒れたりもしないここでの自分に驚き、

そして嬉しくてたまらなかった。


その日の授業が終わると、優花はまたニキアの小さな部屋にいた。

「今日はどうだった?楽しかった?」

ニキアが聞く。


「もちろん。すごく楽しかった。走れるのってすごいことなのに、

ここでは普通にできちゃう。驚いた」

優花は答えた。


ニキアはそれには答えず、

「魔力がCランクってすごいね。Cランクなら、杖が持てるよ。あとで選ぶといい」

そういった。


「杖か」と嬉しそうな顔をするのをニキアは複雑な心境で見ていた。

ここでの生活は、優花の世界では決してできないことが多い。

優花があちらの世界に戻った時、そのギャップに耐えられるだろうか。


優花の夢を叶えたい、と思っていたはずのニキアだったけど、

それは優花にとって酷なことかもしれない、

ニキアはそう思っていた。






応援していただけると感激します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ