春は私を「馬鹿」にする。
「先輩好きです!」
言った。人生初告白。2年間の秘めていた思い。
「えぇと、ごめん。」
まぁそれも砕け散ったけど。
「第一なんで今告ったんだよ」
正面に座る裕輝は呆れたように私を見る。
「だってぇ、なんか今だって思っちゃったんだもん。」
理由になっていない理由を嘆く私を、やっぱり呆れたように見る裕輝。
はぁ、と大きなため息をついて裕輝は窓の外を見だした。
「1回も話してない相手から告られたら、先輩も囲っただろうな」
「う。それは禁句 」
「教室の窓から見るやつと、見られてるやつって関係だろ。あっちは初めましてったんじゃね」
「…うるさい。」
裕輝と同じように窓の外を見ると、やっぱり私は目で追ってしまう。
「先輩、かっけぇもんな」
「…うん。」
友だちとサッカーをしている先輩はいつ見てもかっこよくて、目が離せなくなる。
この時間が好きだった。50分の昼休みは2年間毎日先輩を見ることに注いできた。
「…ねえ裕輝、こんなにあっけないんだね。」
裕輝が私を見た。私は外を見ながらつぶやく。
「2年間も好きだったのに、たった数分の告白で終わるんだよ。」
裕輝はまたはぁ、とため息をつきながら私にハンカチを出す。
「終わり、じゃないでしょ。フラれて、はい終わり、というほどスッパリいけるようなもんじゃねぇだろ。2年間も、好きだったんだから。」
私はハンカチを受けとって強くにぎりしめた。
「そうだね。」
ハンカチでいつのまにか流れていた涙をぬぐって、外を見るのをやめた。
時計を見ると昼休みが終わるまで後10分っていうところだった。
ゾロゾロと教室に人が帰ってきた。
「授業の準備するかー」
と背伸びすると、裕輝が私をじっとみた。
「…どうした?」
「いや…」
裕輝が口ごもるなんて珍しいな。
「大丈夫?」
裕輝はちょっとの時間考え込むように黙った。
私が裕輝が話し出すのを待っていると、観念したように裕輝は言った。
「優気、俺と付き合わねぇ?」
「…うん」
私は半分脳死状態で返事をした。
暖かい春が私を馬鹿にさせたんだ。