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奇妙な猿公

ある猿の仲間は、非常に奇妙な習性を持っている。


彼らは昼行性である。昼間は群れをなして共同生活を営む。昼間の彼らは隣にいる“彼ら”と毛繕(けづくろ)いをしたり、餌を得るために共同で狩りをしたりする。しかし、夜になるとバラバラになってしまう。群れでいる方が色々と効率的であるはずだが、必ず夜になると離散してしまう。それから、少しの休息の後、朝日が昇ると共に、彼らは再び群れを形成する。なんて非効率な生き物なんだろう! どうして、群れを半日以上維持しようとしないのか?


長い研究の末、この難題は解決された。どうやら、彼らの天敵は“彼ら”自身らしい。だから、群れをなす行動自体、極めて危険な行動であるそうだ。昼間、彼らは隣にいる“彼ら自身”に(おび)え、多大なるストレスを蓄積する。そして、夜、外敵の襲来に備えて自己防衛の為に逃走する。そうして、ひとつの群れが消失する。


また、(まれ)な事例ではあるが、「逃走」ではなく、「先制攻撃」を選ぶ猿もいる。つまり、殺し合いをする。突然ではあるが、ここに一つの注釈を付け加える。彼らは、“彼ら”の(しかばね)を発見すると、“彼ら”の中に犯人が居ると決めつける。彼らは“彼ら自身”を「全生物の上に君臨する絶対的王者」であろうと盲信しているため、“彼ら”以外の生物に“彼ら”は殺せないだろうと決めつけている。




そんな彼らは、近頃、夜行性になりつつある。群れをなす時間は減り、代わりに単独行動の時間が増えた。そもそも、群れに加わろうとしない猿も出てきた。ひとつだった「彼ら」は、離散して「彼」に変化していった。それでいて、彼らの顔色は常に暗い。何故なのか、神様に聞いてみた。昨夜、返事が来た。どうやら、他の猿から定期的に毛繕いをして貰わないとストレスが上手いこと発散されず、生きていけない仕組みらしい。なんて、なんて非効率な生き物なんだろう!

音無です。前回の『高齢の学者』は、太宰に似せた文体で書きました。対して、今回は趣向を変えて、カフカっぽいものを書こうと試行錯誤しました。

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