高齢の学者
歴史学者は激怒した。「重要な研究物」を迅速に、しかし、“丁重”に自分の所へ送るよう、彼は助教授に頼んでいたが、約束の期日を三日過ぎても例の物は届かないのである。
彼は大変高齢である。かつて聡明であった彼も、歳には勝てず、段々呆けてきて物忘れも激しくなった。そんな彼でさえ、記憶しているのだ。それほど重要なことを忘れた助教授は、当然ながら、彼の逆鱗に触れてしまった。
痺れを切らした彼は、手元にあった杖を手に取った。彼の腰は曲がっている。杖なしには歩けないほど、身体は弱くなった。体の節々が痛い。できれば動きたくない。しかし、彼の怒りは沸点に達し、遂に重い腰を上げたのである。
「君、どういうことかね」と、助教授に、声を荒らげて彼は詰問した。その姿を見た助教授は、たちまち目を丸くして、返答した。
「教授、いけません、金砕棒を、そんな乱暴に扱っちゃあ。“丁重”に扱えと仰ったのは教授ではありませんか? そんな杖みたいに使わないでください」
音無です。なろうの仕様には未だに慣れません。ゆっくり書いていこうと思います。また、感想などは気楽に書いていってください。多少、辛口でも構いません。




