笑っちまえ
定番だな。コカ・コーラと加奈の吸うキャスター。俺の部屋。作詞作曲を続け、ライブを続け。松本の分も俺達、汗をかいている。季節は八月を迎えて、俺と加奈は、大阪へと旅に出た。新幹線の中、俺は不安なのか、加奈の手を、ずっと握っていた。この加奈という幸せだけは逃げないように。勿論、ケースの中にはギター。
新大阪に着き、大阪城近くのホテルへと向かう。エレベーターに乗った。信じられないことが。エレベーターガールが俺に執着した。
「どこから来られたのですか」
「神奈川のほうだけど」
「お仕事ですか。お休みですか」
「休みに来たんだけど」
「今、おいくつですか」
「18」
「お隣の女性の方。おきれいですね。奥さまですか。彼女さんですか」
「彼女だけど」
「14階です。ごゆっくりどうぞ」
「それはどうも」
俺と加奈は、半分呆れて笑う。そして、部屋のキーを開けると同時に、加奈は言った。
「何、今の子」
「よくわからんよ。こんな子、俺、初めてだ」
「まあ、いいじゃん。それだけ、琢磨がなんか持ってるってことだよ」
「そうか。そかそか。そんなことないけどな」
苦笑いの二人。俺と加奈は疲れ切り、眠った。ああ長い旅だった。加奈といるのが幸福。なんじゃ、さっきのエレベーターガールは。寝てしまおう。寝てしまおう。大阪。おもろいな。俺も加奈も休まなきゃ。そのための旅。俺達、南進。幸福の旅になるのだろうか。寝てしまおう。加奈の寝顔を見つめながら。大阪城が大きくきれいであった。どうなる、この旅、波乱の予兆。笑っちまえ。大阪城。立派な城だ。豊臣秀吉。成り上がり。俺は眠った。夢を見た。夢の中でも、さっきのエレベーターガールから質問攻めにされる俺がいた。スカジャン、着てて何が悪い。儲かりまっか。ぼちぼちでんな。笑っちまえ。夢の中でも。




