生きていく者達
「琢磨、松本、あいつ」
「わかってる。わかってる。とりあえず、松本の亡骸に会いに行こう。落ち着け、菊本」
「ああ」
スコラの前で菊本は号泣している。俺だって泣きたい。だけど、哀しすぎて。畑中は、俺に言う。
「琢磨。俺達、俺達」
「わかってる。わかってる。今の事だけ考えろ。松本のためにもならないぞ」
父さんの車に、俺と菊本と畑中が乗り込む。塾長から、北病院の住所を聞いた。父さんは無言。俺達三人も無言。失ったものの大きさに俺は涙が出てきた。一緒だった俺達四人。来た病院へ急ぐ、父さんの車。時計を見る。20時18分。辛い。ただ、辛い。俺は、缶コーヒーを飲み、父さんの車は北病院に着いた。すぐさま、院内に入る。そこには、松本のお父さんとお母さんが立っていた。松本のお父さんは言われた。
「琢磨君、ごめんね。いきなり、こんなことで。起こったことは、もう仕方ないから、あいつに会っていってくれ」
「はい」
松本のお父さん、お母さんと、俺の父さんが話し、俺達は霊安室へと向かった。正直、疲れ果てている俺達。松本の顔は、「すべて、やりきったぞ」という、最期だった。線香を手向け、手を合わせた。思わず泣けた。俺の友だ。18才の最期。俺は、加奈に電話した。
「加奈。今、病院。今から来れるか」
「うん、少しなら」
「一応、喪服で来てくれ」
「わかった。琢磨、大丈夫」
「ああ、何とか」
三人になった、俺達。ポラロイドクラッカーズ。俺、思い切って、菊本と畑中に言った。
「俺、決めた。松本の代わりにヴォーカルもやるよ。それが最大の供養だ」
頷く菊本と畑中。俺達に明日はある。一生懸命にやってきた唯一のことだ。作詞作曲も頑張る。それが松本への唯一の供養だ。
「琢磨」
「加奈。すまない。こんな夜遅くに。線香だけ手向けてやってくれ」
「わかった」
加奈は俺の肩をたたき、松本に会いに行ってくれた。そして、菊本と畑中に、俺との関係を話してくれた。
松本家、喪中の張り紙。あれから丸一日が過ぎた。松本の葬儀にスコラの生徒全員が出席した。棺桶には松本が好きだったBOOWYのCDを備えた。加奈も仕事を休んできてくれた。あいつの棺桶に手を合わせて、出棺となった。俺は、俺達は音楽で成り立った仲間。菊本と畑中に、手を振り、
「頑張ろうぜ」
とだけ二人に言い残した俺は加奈を助手席に乗せて家へと帰った。
「母さん、塩ある」
「ああ、そうだね。今、持ってくるよ」
「それと、母さんにも言おうと思ってたんだけど、俺の彼女の安富加奈さん」
加奈は、母さんに、「はじめまして」と頭を下げて、母さんも、加奈に頭を下げた。塩で清めて、部屋へと向かう俺と加奈。
「琢磨、疲れ出さないようにね」
「うん。ありがとう」
「タバコ、吸ってもいいかな」
「うん、勿論」
俺はネクタイを緩め、喪服を脱ぎ、普段着を着た。そして、加奈を抱いた。加奈は辛くて仕方ない俺を受け止めてくれた。愛し合う男と女。生きている証拠。優しい人、加奈と時間を共にする。そして、クチヅケを交わし、眠りに就いた。松本、お前の分も俺が歌うからな。あの世から見ておいてくれよ。




