表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポラロイドクラッカーズ  作者: ムラカワアオイ
17/22

生きていく者達

「琢磨、松本、あいつ」

「わかってる。わかってる。とりあえず、松本の亡骸に会いに行こう。落ち着け、菊本」

「ああ」

スコラの前で菊本は号泣している。俺だって泣きたい。だけど、哀しすぎて。畑中は、俺に言う。

「琢磨。俺達、俺達」

「わかってる。わかってる。今の事だけ考えろ。松本のためにもならないぞ」

父さんの車に、俺と菊本と畑中が乗り込む。塾長から、北病院の住所を聞いた。父さんは無言。俺達三人も無言。失ったものの大きさに俺は涙が出てきた。一緒だった俺達四人。来た病院へ急ぐ、父さんの車。時計を見る。20時18分。辛い。ただ、辛い。俺は、缶コーヒーを飲み、父さんの車は北病院に着いた。すぐさま、院内に入る。そこには、松本のお父さんとお母さんが立っていた。松本のお父さんは言われた。

「琢磨君、ごめんね。いきなり、こんなことで。起こったことは、もう仕方ないから、あいつに会っていってくれ」

「はい」

松本のお父さん、お母さんと、俺の父さんが話し、俺達は霊安室へと向かった。正直、疲れ果てている俺達。松本の顔は、「すべて、やりきったぞ」という、最期だった。線香を手向け、手を合わせた。思わず泣けた。俺の友だ。18才の最期。俺は、加奈に電話した。

「加奈。今、病院。今から来れるか」

「うん、少しなら」

「一応、喪服で来てくれ」

「わかった。琢磨、大丈夫」

「ああ、何とか」

三人になった、俺達。ポラロイドクラッカーズ。俺、思い切って、菊本と畑中に言った。

「俺、決めた。松本の代わりにヴォーカルもやるよ。それが最大の供養だ」

頷く菊本と畑中。俺達に明日はある。一生懸命にやってきた唯一のことだ。作詞作曲も頑張る。それが松本への唯一の供養だ。

「琢磨」

「加奈。すまない。こんな夜遅くに。線香だけ手向けてやってくれ」

「わかった」

加奈は俺の肩をたたき、松本に会いに行ってくれた。そして、菊本と畑中に、俺との関係を話してくれた。


松本家、喪中の張り紙。あれから丸一日が過ぎた。松本の葬儀にスコラの生徒全員が出席した。棺桶には松本が好きだったBOOWYのCDを備えた。加奈も仕事を休んできてくれた。あいつの棺桶に手を合わせて、出棺となった。俺は、俺達は音楽で成り立った仲間。菊本と畑中に、手を振り、

「頑張ろうぜ」

とだけ二人に言い残した俺は加奈を助手席に乗せて家へと帰った。


「母さん、塩ある」

「ああ、そうだね。今、持ってくるよ」

「それと、母さんにも言おうと思ってたんだけど、俺の彼女の安富加奈さん」

加奈は、母さんに、「はじめまして」と頭を下げて、母さんも、加奈に頭を下げた。塩で清めて、部屋へと向かう俺と加奈。

「琢磨、疲れ出さないようにね」

「うん。ありがとう」

「タバコ、吸ってもいいかな」

「うん、勿論」

俺はネクタイを緩め、喪服を脱ぎ、普段着を着た。そして、加奈を抱いた。加奈は辛くて仕方ない俺を受け止めてくれた。愛し合う男と女。生きている証拠。優しい人、加奈と時間を共にする。そして、クチヅケを交わし、眠りに就いた。松本、お前の分も俺が歌うからな。あの世から見ておいてくれよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ