魂
やっぱり、俺には作詞は無理だな。作詞ノートに刻んだ言葉を消しゴムで消す。作曲は試みた。自分で言うのもなんだが、いい感じだ。ロックしてる。何度もアンプを点けたり、消したり。ああ、喉が渇く。作った曲をCDに録音。弾く。録音。の繰り返し。加奈の事をやっぱり想いながら、作曲する。松本、あいつ、作詞できるのかよ。少し頼りないけど、良い奴だからなぁ。我が、ポラロイドクラッカーズのヴォーカルは。時間だ。バイト先へ車に乗った。加奈と俺。笑える関係だな。俺は、レジや陳列、宅急便の受付やチケットの販売、コンビニでやる仕事も、一生懸命だ。
「おお、琢磨君。昨日、見たよ」
「えっ」
「きれいな人、連れてるじゃんか。あの人、ここの常連さんだよ。ほんと、カエルっぽいきれいなお姉さんだね。付き合ってるの」
「あ、はい」
「いいね」
店長と、こんな会話。こんな時に、携帯が鳴った。父さんからだ。
「俺、今、仕事中だから」
「すまん。ちょっと、急用でな。松本君が亡くなったそうだ」
「え、わかった。店長に話して、すぐ、家に帰るよ」
松本。あいつ、何かあったのか。ビビる俺。すぐさま、菊本と畑中から電話が鳴る。二人の用件はスコラへ来てくれということだった。俺は、店長に事情を話し、帰った。
「琢磨、松本君、交通事故に遇ったそうだ。塾長さんからも、さっき、電話があった、とりあえず、スコラへ来てくれということだ。俺も行く」
「わかった、父さん。母さんは」
「母さんは、先にスコラへ行った、とりあえず、喪服と黒いネクタイだけは用意したから、着替えておけ。俺も喪服に着替える」
「わかった」
俺は父さんのお古、喪服に袖を通した。黒いネクタイを巻く。松本が交通事故。死。なんてことだ。俺は加奈にも事情をメールして、加奈からは、「落ち着いてね」と返信があった。父さんの助手席に座る。スコラへと向かう親子。ドリンクホルダーには缶コーヒー。
「琢磨、とりあえず、コーヒーでも飲んで、落ち着け」
「わかった」
携帯が鳴る。菊本からだ・
「琢磨、松本の遺体は北病院に安置されてる。松本を事故った男も自首した。トラックの運転手だそうだ」
「わかった。菊本、お前、大丈夫か」
「ああ、なんとか。畑中とスコラの前でお前を待ってるからな」
幸福の後の不幸。世の中って、いったい、どういう仕組みをしているのであろうか。松本。なぜ、お前が死ななきゃならないんだ。辛い。辛いとしか言いようがない。あと信号二つでスコラだ。




