彼女の香り
加奈は起きた。俺も起きた。加奈は嬉しそうに言う。おもいっきりの笑顔で。
「琢磨って誕生日、いつなの。血液型は」
「俺。9月9日。おとめ座、O型」
「わ、私と一緒だ。笑えるね。私も9月9日生まれ。でも血液型はAB型だよ。ABって変人が多いから気を付けなよ」
そうなのか。誕生日が一緒。今日が7月22日だから、誕生日まで、まだ少しあるな。加奈は笑って俺の頬にキスをした。笑える。誕生日が同じ。憧れと理想を持つ、加奈と。加奈が言った。
「もう、夕方だし、私、帰るよ」
「送っていこうか」
「いや、いいよ。ちょっと、歩きたいんだ。家まで、そんなに遠くないしさ」
「うん。わかった。ほんと、ありがとう」
「こちらこそ。作詞も頑張るんだよ。これから、よろしくね」
「うん」
加奈と階段を降りて、玄関を開けた。父さんが嬉しそうに加奈に、「また」と言って、加奈は父さんに頭を下げた。
「美人だな。お前も彼女ができてもおかしくない歳になったな。仲良くやるんだぞ」
「うん」
この人の息子に生まれて、本当に良かった。理想の父親。俺を、俺のすべてを認めてくれる。俺は部屋に帰り、最大のテーマ、作詞に取り掛かった。ノートに詞を書く。
『不器用に不器用に生きてきた 愛するもの 愛するもの 永遠なんて きっとないから 彼女を愛していたい 彼女を愛していたい 二人で 二人で ずっと ずっと 歩んでいこう ガラス細工な時間よ 止まれ』
ノートに書いてみた。ちょっと、クサいな。俺は、笑う。でも、上出来だ、初めてにしては。ベットには加奈の香りが残ってる。俺はコーラを飲んで、加奈を想った。きれいな、本当にきれいな人だ。『安富』さんか。誕生日も同じ。血液型はAB型。わがままジュリエットを聴きたくなった。バイトか。少し、貯金ができたら新しいギターを買うとしようか。俺はギターを手にして、ビィートスィートを弾いてみた。BABY抱き合えるなら。思わず、思い出し笑い。これが初恋か。携帯にメール。加奈からだ。
『今日はありがとう。無事、家に着いたよ。楽しかった。あらためて、これから、よろしくね』
俺は、このメールが嬉しくて。加奈に返信して俺は、バイト先へと車を飛ばした。イイ女だ。




