譲れない初恋
俺は、安富さんと再会した、次の日。タイムマシーンで、いつもより、嬉しくてギターを弾いていた。楽屋で四人。菊本は言った。
「そろそろな、オリジナル、やらないか」
「でも、誰が曲を作るんだよ」
「琢磨。お前、作曲、出来るか」
「俺。俺でよければ、作るけど、ちょっと時間がいるな。作詞には自信がないからさ、松本。お前、やってくれるか」
「わ、わかった。何とか、書いてみるわ」
俺が作曲。まあそうだな。ゆっくり、じっくりやるとしようか。
「じゃ、俺、バイトだから帰るよ。おつかれ」
「こちらこそ、お疲れ様。琢磨、頑張ろうな」
「おお」
俺は一瞬、笑い、ギターを担ぎ、駐車場へと歩いた。車に乗り込む。ラジオを聴く。すぐさま、BOOWYのCDに切り替える。LIVEGIGSのCD。思わず、ONLYYOUを口ずさむ。狙いは安富さんか。俺は、いつもより、車を飛ばし、バイト先まで走った。更衣室に入って、笑顔で制服を着る。楽しい日々。俺は弁当の陳列を始めた。オリジナルか。曲のイメージか。頭には少し、曲のラインが。そうこうしていると、安富さんが、「お願いします」とレジの前に立っていた。
「お兄ちゃん、お仕事なんだね。こんな夜遅くに。私、銀行員だからさ、定時でほぼ終わるけど、お金触ってると、ノイローゼになるよ」
「銀行員なんですか。大変ですね」
「そう。三時からがめちゃくちゃ忙しい。癒しは煙草とワインぐらいだよ」
「そうですか。今日もキャスターでいいですか」
「うん。ありがとう。お兄ちゃん、名前は」
「高木琢磨と云います」
「私からプレゼント。これ、私の名刺。私、安富加奈。もし、よかったらさ、カラオケでも行かない」
「え、いいんですか。俺で」
「うん。勿論。友達を駐車場で待たせてるんだ。この後、バイトが終わったら、電話してきてよ。『カラオケすずめ』で待ってるからさ」
「は、はい」
「それじゃ、また後で」
安富さんは笑顔を残し、駐車場に消えた。やった。安富さんとカラオケだ。今日は気合いがいつもと違う。カラオケだ。何、歌おうかな。ラブソングはべたすぎるな。エレカシを歌おう。俺は、リズムに乗って仕事仕事。恋なのかな。これは。俺は、嬉しく楽しく。今日という日に感謝する。バイトが終わり、俺は、カラオケすずめに向かった。
安富さんに電話をしてみる。
「もしもし。高木です」
「ああ、お疲れ様。51番の部屋で歌ってるからさ、おいでよ」
「はい」
安富さんは今日もきれいなお姉さんだ。51番の部屋へと入る。そこには、安富さんともう一人、美女がいた。その美女は言う。
「あんた、幸せ者だね。加奈に誘われるだなんて。生きててよかったね」
笑う俺。もう一人のお姉さんは、
「私、二井美津子。よろしくね。加奈から聞いたんだけどさ、あんたも深志野小学校卒業らしいね。私も深志野だよ。よろしく」
「よろしくお願いします」
俺は両手に花。安富さんは俺を見て、優しく笑い、椎名林檎のギブスを歌って、ビールを飲んだ。
「高木君、歌いなよ」
「え、あ、はい」
「こんな、かわいいお姉さん二人組に緊張してるの」
「え、あ、はい」
「リラックス、リラックス」
俺は、今宵の月のようにを歌った。そこから時間を忘れて、三人で歌った、歌った。そして、美津子さんは、「お邪魔なんで」と、消えた。
恋物語のスタートだった、俺はファーストキスを安富さんと交わし、助手席に安富さんを乗せて、ラブホテル街へと向かった。
「ねえ、高木君」
「はい」
「私と付き合ってくれる」
「も、勿論です」
「私、わがままでキマグレ女だよ。それでもいいの」
「はい」
抱き合う。ベッドの上、裸体が二つ。クチヅケを交わし、SEXをする。俺は安富さんを手に入れた。初めてのSEX。それも理想と憧れを抱く、女性と。




