憧れと理想
畑中、松本、勿論、菊本と、上手くやれるようになった。俺たちがバンド、「ポラロイドクラッカーズ」を結成して一年の時が過ぎた。俺たちは地元のライブハウス、「タイムマシーン」で週一のペースでライブを重ねていった。固定客も付いてくれた。四人。俺たちは人生を楽しむ18歳。俺は、自宅近くのコンビニでアルバイトを始めた。店長は優しい人で、俺の悩みを聞いてくれたり、ご飯を食べに連れて行ってくれたり、と俺を可愛がってくれた。夜七時からの勤務。この店は繁盛している。俺は車の免許を取り、疲れた時、悩んだときはドライブへ行くようになった。さて、今日も働きますか。俺は制服に着替えてレジに立つ。
「よ、兄ちゃん。ギター頑張ってるか」
「はい。ありがとうございます。この前のタイムマシーンのライブもお客さん、多かったです」
「そうか。それはよかった。マルボロ、二つ」
「かしこまりました」
このお客さん、地元の映像制作会社の社長さん。背が高く、長髪で、いかにも業界人って感じだ。いつも、マルボロを買ってくれる。
「ありがとうございました」
「頑張れよ」
「はい」
笑顔で応える俺。俺は弁当の陳列。コンビニって結構、大変な仕事だ。宅急便。ATM。掃除。まだまだ色々あるけれど、思ってたよりタフな仕事だ。
「お願いします」
「はい」
そこには、きれいなお姉さんが立っていた。どこかで見覚えのある顔だな。もしかして、安富さん。思い切って言ってみた。
「あの」
「なに」
「もしかして、安富さんですか」
「そ、そうだよ。お兄ちゃん、なんで私のこと、知ってるの」
「小学校が同じで、昔、お姉さんとお話したことがあるんです」
「そうなんだ。よく、覚えててくれたね」
「お姉さん、きれいだから」
「は、は、ありがとう。お兄ちゃん、キャスター一つ」
「かしこまりました」
安富さんだ。夢にまで見た。でも、恋は始まらないのかな。俺は、安富さんにおつりを渡した。本当にきれいな人だ。黒いワンピースに長い髪。美女。
「お兄ちゃん。また、来るね。私のこと、覚えててくれて、ありがとう」
「いえ、こちらこそ。また、お願いします」
「勿論」
俺は嬉しくて、嬉しくて。仕事もはかどるよ。俺は私服に着替えて、愛車に乗って帰宅した。俺は、部屋で、黙々とギターを弾く。安富さん。やったよ。俺は、コーラを飲み干して、ギターを磨く。今日もいい一日だ。頑張る勇気が沸いてきた。




