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あいつは、今頃、俺のことで笑ってら。二十年前に戻りたい。
俺の名前は高木琢磨。あいつの名前は、安富加奈。二人は焦った恋をした。あの日までは。そう、あの日までは。
俺が小学校一年生のころ、実験室できれいな、「安富」という六年生の女子に頭を撫でられ、
「自分、名前は」
「高木」
「私、安富。もうすぐ卒業式だ」
「おめでとう」
焼却炉へ赴くと、俺は、やけどをしてしまった。右手が痛い。心も痛い。安富さんか。きれいでかわいい、お姉さんだな。俺は、卒業式を待たずに家へと帰った。恋物語の始まりはここからだった。家に帰る。お母さんに、卵かけご飯を作ってもらった。一分一秒が、とても長く感じる。頭の中は安富さんだらけだ。俺は作文を書き始めた。「きれいなお姉さん」と。深志野小学校、1年4組。高木琢磨。
『ぼくはおおきくなったら、けっこんしたいです』
これっぽっちの作文。僕は、お父さんに、聞いてみた。
「結婚って何」
「母さんと俺の関係だよ」
「ふうん」
お父さんも僕の頭を撫で、笑顔でコーヒーを飲みほした。ああ、俺。恋って何。俺も牛乳を飲んで。
儚いってどういう意味。辞典辞典辞典。学校嫌い。安富さん、きれいだなぁ。




