昔に思いをはせる
まだ冬の寒さが残る中、私たちは厚着をしてまあまあ人が来る公園に来ていた。
「さ、寒い。彼女ちゃん~、あそこの自動販売機で何か買おう……」
僕たちはその公園にある自動販売機でホットの飲み物を買って、ベンチに座る。
オイラはいつもと同じ、ココア、お兄さんは抹茶ラテを片手にボーっとしていた。
「赤ちゃんの頃に戻りたい……!」
「ゲホッ、ゲホッ……。ど、どうしたの。彼女ちゃん、何かあったの」
ちょうど、お兄さんが抹茶ラテを飲んでいる時に私が叫んだので、お兄さんはむせてしまう。
「何もないですけども……。だけど、あの子たちを見ているとそう思わずにはいられないんですよ」
僕のその言葉を聞いて、お兄さんは僕の視線の方向に目を向けた。
そこでは小学生2年生くらいの男の子たちがボールで遊んでおり、芝生では幼児が家族に見守られながらトテチテと歩いている。
「あんな純粋無垢な頃に戻りたい、何も知らなかったあの頃に。家族が自分のことを可愛いって言ってくれる頃に、可愛いという言葉を素直に受け取れる頃に……」
戻れやしない過去への未練をお兄さんはいつものようにちゃんと聞いてくれた。
「そっかぁ……。でも、お兄さんにとって彼女ちゃんは赤子同然だよ。だってお兄さんは君よりも何倍も長く生きてるからねぇ」
お兄さんの方を見ると、優しく微笑んでオイラの頭を撫でてくれる。
「それじゃあ、安心だね」
「そういうこと。それじゃあ、そろそろ帰ろうか」