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彼女の物語  作者: ぬえさん
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生まれ変わったら

「お兄さんはさ、生まれ変わったら何になりたい?」


今日も私は唐突にお兄さんに質問を投げかける。


「生まれ変わったら? そうだなぁ、お兄さんは……うーん、何になりたいかなぁ」


お兄さんは飲もうとしていたコーヒーを置いて顎に手を添え、その金色の瞳を閉じてウーンと考え込んだ。


それはそうだ。誰だってこんなこと急に聞かれたすぐに出ないに決まっている。


それに答えられなくても今回は別に構わない。


だって、これは僕が聞いてほしいことをお兄さんに聞いているから。


突然、生まれ変わったら何々になりたいなんて言ったらびっくりすると思うし……。


「うーん……」


お兄さんが一生懸命考えているとこ悪いけども、すっごい今、お兄さんにいたずらしたい。


だって、ちょうど目をつぶっているからお兄さんが頼んだコーヒーと自分が頼んだココアを入れ替えても絶対気づかれないじゃないか。


どちらも口をつけていないから大丈夫だろう。


そっと、気づかれないようにコーヒーとココアを入れ替えた。


「うーん、そういう彼女ちゃんは?」


お兄さんは目を開けてオイラに聞いてくる。


普通なら返答されて終わりだけど、お兄さんは心が読めるから私がこうして欲しいってことをちゃんとしてくれるいい人……いい妖怪? 


それよりもお兄さん飲んだ時どんな反応するんだろう……。


めっちゃ面白い反応しそう。


ああ、いかん。ボーっとしてないで返事をしなければ。


「僕はね、神様になりたい。すごい才能を持っていて、誰とも交流をしなくても世界を作れる神様になりたい」


「へー、どんな世界を作りたい?」


「オイラは今の世界でみんなが幸せな世界を作りたい。動物も木々も妖怪もすべてが幸せな世界を一つ作ってみたい。あと、ちょっと辛いこともあるけど、最終的には幸せになる世界も作ってみたいなぁ」


お兄さんの金色の瞳を見ながら夢見がちなことを言う。どうせ叶わないだろうに。


「そうかぁ、いいな。彼女ちゃんの作った世界に住んでいる生き物たちは。お兄さん、彼女ちゃんが神様に生まれ変わったときに作った世界に住む生き物になりたいなぁ」


予想もしない答えに目から鱗が出る。


本当だぜ、と言って吸血鬼らしい鋭い牙を出しながら、お兄さんはお茶目に笑った。


「じゃあ、神様に生まれ変わったら必ず私が作った世界の住人にするよ」


「それは楽しみだなぁ。まあ、お兄さんは自分がいつ死ぬか分からないけどね」


お兄さんはとっても苦そうなコーヒーを飲みながらそう言う。


「確かに」


お兄さんは神様と吸血鬼のハーフ。吸血鬼は不死身だし、神様が死ぬなんてあまり聞いたことがない。


そう思いながらお兄さんのことをジーッと見ているとお兄さんはニコッと笑った。


お兄さんは大学生。でも、友達がいないらしい。話しかけようとすると、何故かみんなどこかに行ってしまうと言っていた。


わざとではなく、みんな無意識に離れて行ってしまうらしい。


友達になってくれたのも僕が初めてだと悲しそうに言っていた。


もし、オイラが死んだらその後、お兄さんはどうなるんだろう。


また独りぼっちにならないだろうか。


「あ、私ね。神様に生まれ変わる前にもう一つなりたいものがある」


「ん? 何かな」


「お兄さんの友達にまたなりたいな」


お兄さんはまるでハトが豆鉄砲をくらったような顔をする。


ねえ、お兄さん。俺の本当の友達になってくれたのはお兄さんが初めてなんだよ。


だから、お兄さんに生まれ変わったら俺のたった一人の友達になってほしいって思ってるんだ。


これも心が読めるお兄さんにはお見通しなのかな。


「そ、っか、そっかぁ。そう思ってくれて嬉しいな」


お兄さんはほほを赤らめていつもよりも嬉しそうに笑った。


そして、僕は今の話をしている間にお兄さんが頼んだコーヒーと自分が頼んだココアを入れ替えたことを完璧に忘れて、とっても苦いコーヒーをグイッと飲んでしまった。


「ん゛ん゛ん゛! にぃっが!! 完璧に忘れてた!」


「まったく、可愛らしいいたずらをするもんだ。彼女ちゃんがどんな世界を作るのか、心を読んだ時にコーヒーとココアを入れ替えてることに気づいて逆にいたずらしてやろうと思ったんだよ」


「そんなぁ……。ああ、にが……」


口の中にコーヒーの苦さが染みついてとれない。


やはり、いたずらはするべきではないな。バチが当たる。今日、学んだよ。


「うあああ!!」


「ちゃんと反省したようだし、店長~お水頂戴」


店長が持ってきてくれた水をグイッと飲む。


「ああ……助かった」


「いたずらはほどほどに」


「はい」

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