一昨日
この前彼女ちゃんと一緒に来た喫茶店。彼女ちゃんは気に入ってくれたらしく、またその喫茶店に来ている。
「お兄さん、聞いて。持久走が嫌すぎてたまらないの。1回目はまだ距離が短くて何とかなったけど……私さ、1番ドベだったんだ」
手を組んでとっても暗い顔をして、次の体育の不安を語る彼女ちゃん。
「次はこの前よりも距離が増える。イコール、疲れて苦しくなってやはりドベになる。そもそも何で僕はドベが嫌なんだろう。この感情さえなければ少しは楽になれるのに……」
いつにも増してマイナス思考だ。若干震えているようにも見える。
「……彼女ちゃんは文化部だし、まあ運動部の人にはかなわないだろうね」
苦笑いをしながらそう言うと、彼女ちゃんは下に向けていた顔を上げてニコッと笑った。
嫌な予感しかしない。
お兄さんもニコッと笑い返すと、
「同じ文化部の子にも抜かれているんだー、しょっぱなからー。アハハ……」
彼女ちゃんの目からキラリと涙が見えた。
「……」
何も言えない。だが、まずこれは言っておかなければ。
「ごめん」
「……ああ!!!!」
スイッチが入ったと言わんばかりに彼女ちゃんの目からは涙があふれだし、口からは本音がドバドバと出てきた。
「なに? もっとペースを上げて速く走るべきだった?
辛くて、苦しいのに。速いと絶え間なく息しなくちゃ死にそうになるからずっと息していたいのに、タンとか唾とかが出てきてさ。
それを飲み込むと少しの間息ができないんだよ。それで体力と精神が削り取られるしさ。
一体私にどうしろとっ」
お兄さんにはグシグシと自分の服の袖で涙を拭いて、辛そうに泣く彼女ちゃんの頭を撫でてこんな慰めにもならないことを言うことしかできない。
「泣け泣け、周りのことなんて気にしなくていいからさ。自分の思いぶちまけな」
「次の持久走が不安すぎて気持ち悪いよー!!」
これは一昨日の出来事。