まだまだ続いていた記憶喪失の僕と謎の家
「ねぇ、今更なんだけど、エオラの星ってどんなところだったの?」
日常と化した定期検診中、ふとエオラに質問を投げかけた。
「え、急にどうした?あ、もうTシャツを着て大丈夫。お疲れ様ですた。」
「あぁうん、お疲れ様。いや、エオラとかオーラヌとかさ、地球を再生しに来たことは知ってるんだけど、他のことに関しては全く知らないなぁって思って。」
「特に話すような面白いことは何もないです。それより過去の地球の資料をみる方がずっと面白い。」
「いや、面白い面白くないって話じゃなくて、エオラのこと、色々知りたいなって。」
すると、エオラは困った顔をして、顔をぽりぽり掻きつつ、腕をくんだ。
「私のことに興味を持つとは予想外でした。でも、私が研究してる時以外は四季とずっと一緒。知りたくなるというのは本能。異常ではないです。」
かつて人類が支配していた地球は滅んだ。荒れ果てたこの星にエオラ達が仕事で探索と研究のため訪れ、そして、地下深くに埋まっていた文明に興味を持ち、かつての地球を蘇らせるため、この星に滞在している。
そんな僕も彼らの研究によって作り出された人間だ。遺跡から発掘された骨から身体を生成し、エオラの研究した『日本』の知識や文化、歴史などをインプットして生み出されたのが僕こと、四季。
エオラ達はトカゲのような鱗と尻尾、顔は毛の無い猫スフィンクス種のような骨格に昆虫のような触角があり、腕は左右に2本ずつあるが、手足には人間と同じように五本指があって二足歩行をしている、なんというかキメラのような見た目をしている。そして、エオラは簡単にではあるが布を身体に巻いているが、他の地区を担当している少し筋肉質のオーラヌは丸裸でここに来ているから、服を着るという概念はあまりなさそうだ。肌の色、いや、毛の色もエオラとオーラヌは灰色だが、他に来た人たちは黒だったり茶色だったり桃色だったりしているみたいなのでから決まった色はなさそうだ。
「エオラ達はざっくり宇宙人としか知らなくて。いろんな星調べることが本能っていってたけど、みんながみんな星を出て調査しているわけじゃないでしょ?」
「いや、わたしたち、星から出れない身体でなければ、絶対星を出る。そもそも、わたしたち、始祖のうまれた星は滅んで、もうない。行き過ぎた科学技術、星が耐えれなく、わたしたちの先祖は滅びる前に星を捨てた。それから決まったとこに住んでない。星を転々としてる。永住できるような星見つかってないから。でも、その星を調べることがもう本能として引き継がれてる。呼吸する、栄養を摂取する、同じように研究が大事。研究できないと生きれない。遺伝子にそう組み込まれてる。」
エオラの話を聞き、ふと、僕とのこの生活もただ本能に従って研究しているだけで楽しいと思っていたのは自分だけだったのかもと思ってしまった。そんなことはないと信じたいのに、信じたいけど・・・。
「四季、どうした?顔の色が悪い。今の説明、気分悪くなる言葉あったか?」
「ううん、そうじゃないんだ。ただ、カルチャーショックを受けただけなんだ。エオラの説明が悪かったわけじゃないよ。それに、知りたいって言ったのは僕のほうだしね。ごめんね、エオラ。ありがとう、話してくれて。」
その日、僕は不安でエオラと目を合わせることが出来なかった。
『エオラ、お前から急に通信を入れてくるなんて珍しいこともあるんだな。』
エオラは四季に自分達の話をしたその日の夜、同期のオーロヌに連絡を取っていた。
『四季に嫌われたかもしれない。』
『お前なぁ、そんな下らない事で。っつーか、研究対象に感情なんて抱くからそんなことになるんだ。お前はうちの種族では感受性が強いほうなんだから、意志の疎通が出来る可能性のある生物の研究はやめるべきだと俺がアドバイスしたにも関わらず、無視したのが悪いんだぞ。』
オーロヌは説教するような口調ではあったが、他の仲間と少し感性が違う自分を心配して言ってくれている。エオラはそんな唯一の相談相手である優しいオーロヌの言葉を嬉しく思った。
『オーロヌ、そうはいうもののな、私は今でも四季をつくったことを後悔していない。ただ、嫌われる可能性があったのにも関わらず、その覚悟ができていなかった私自身が情けなくてな。私の姿を見ても逃げ出したり、失神してそのまま死んでしまったりしなかった四季に少し甘えていたのかもしれないって。』
『たしか、四季で49体目だったか?』
『49人目ね。最初の方の子達は目をあけることも無かったし、目を開けても意識が無かったりしたから、その子達を除けば5人目かな。』
最初に意思を持った子はエオラの姿を見るなり逃げ出し、追いかけた先で転落死してしまった。二番目以降の子達にも、また驚かれて逃げ出されたら困るので、姿を見られないよう対応していたが、失神され、そのまま息を引き取られてしまったり、やはり逃げ出されてそのまま死んでしまったりと失敗を繰り返した。そんな経験を踏まえ、彼ら地球人にとって自分たちの姿が恐ろしいものに見られていることを確信したし、彼らが一人で外に出たら死んでしまうことも分かった。そして、エオラは研究所だけでなく、周りの環境を整え、今のスタイルを確立した。
『ってか、そもそも、どうして嫌われたって思ったんだ?四季はお前にかなりなついているように見えていたが?』
『それは、私達のことを知りたいと訊かれたから、生態について説明したら顔色悪くして、それから、目を合わせてくれなくなった。』
すると、通信機の向こうから深い溜息が聞こえてきた。
『オーロヌ?』
『エオラ、四季から嫌われたというが、恐らく説明のへたくそなお前のことだ。きっと四季は多分お前から好かれていなかったのではと勘違いした可能性が高い。』
『なんで!!』
『四季は意外と頭がいい。自分のことを俺達の研究対象だと自覚をしている。そんな彼だ、きっと俺達が本能で研究をしていると知って、こうやって一緒に生活しているのは研究のためであって、お前の感情はどうかわからないと思い違いしてると考えられる。』
『そんな、私は四季のこと、好きだ。大事な子供だ。』
『分かってる。俺も含めて、研究対象と交流し、生活してるやつなんて、お前だけだエオラ。だから、多分お前は嫌われてはいないよ。だから、明日四季にちゃんと訊いてみな。』
エオラは、うんと小さく返事をした。
『エオラ、レポートを見る限り四季は今のところ健康状態に異変はないみたいだけど、いつ期限がくるか分からないんだ。彼はあくまでこの星の研究のためにつくった人間、遺跡に残っていたわずかな遺伝子を無理やり活性化させて作り出した生命体だ。長く生きれる保障は全く無いんだ。お前は他の子同様、四季の最期まで看るつもりでいるんだろ?限られた時間、大事に過ごせ。』
流石、同じプラントで育った仲間だ、オーロヌはエオラに必要な言葉をくれる。エオラは気付けば笑っていた。
彼らの種族は親が腹を痛めて子供を生むことは無い。機械によって管理されたプラントで人工的に産み出され、大人になるまでそこで生活し、優秀な個体のみ残るよう篩われ、そして、星から旅立つ。そんな環境で、エオラは浮いていたが、種族の中で優秀な頭脳を持っていたからか成人になることが出来た。しかし、オーラヌから見て、エオラほど不安定な存在はおらず、できる限り近くにいてあげないと、と思っていた。オーロヌ自身もすこし変わっているというのは自覚がないのだが。
明日は四季の好きな金平レンコンを作ろう。一緒に銀だらの西京焼きも用意したら喜ぶだろうか。エオラは喜んでもらいたくて沢山の料理を覚えた。この家以外の建物は一見家に見えるが、四季が食べる食べ物のハウス栽培用に用意した建物だ。あとから調べたらハウス栽培のハウスはもっと違うものだったけど、四季やオーラヌが笑ってくれたからそのままでもいいやと思って使い続けてる。
そうだ、好物を用意するのも大事だけど、伝えないと、「君は大事な僕の息子」だと。「愛する自慢の子供だ」と。この生活がいつまで続くかなんて分からないけど、一生愛し続けると思いながら。
いったんこの物語は完結です。
もしかしたら、またふらっと続きを書くかもしれませんが。




