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輪廻

作者: 朝陽乃柚子

 風が強い。まるで彼の決断を後押しするかのように、強く。


 もう思い残すことはない、やれることは全てやった、それがこの結果だ。


 せめてひっそりと、一人で旅立とう。


 随分と奥深くまで入った彼は旅立ちの場所を見つけた、全てを断ち切る気持ちを込めて静かに息を吐き、場所を探す。

 

 準備が整った。ロープを両手で掴み、後悔が鈍らないうちに一気に飛び降りた。


 




 次に彼が目を開けたのは自室だった。


 なぜここに戻っているのだ、そう思った彼は部屋をぐるりと見回す。すると、テレビ台の横に置いたはずのない封筒が置かれていた。


 手にとって封を開けると、1枚の便箋が出てきた。彼は訝しげな表情でそれを読み始める。






 あなたは禁忌を犯しました。よって寿命で死ぬはずだった残りの時間の間、あなたは苦しみの渦に囚われます。


 そして、あなたの命は心から生きたいと願う人への肥やしとなります。


 




 彼は困惑した。急いで立ち上がり、部屋の入り口へ向かうが、ドアが開かない。


 さらに困惑した彼は、部屋の中の物という物を壊し、投げつけ、踏みつける。





 疲れ果て床に崩れ落ちる。やれることは全てやり、その結果選んだ選択でなぜここまで責められなければいけないのだろう。


 だがそこでふと気づく。選択することすらできなかった人もいるのではないか。分岐のない一本道を歩くしかないその気持ちは絶望なのか、悔しさなのか。





 そこまで考えた時、部屋に差し込む光が途絶えた。一瞬の出来事だったが、彼は妙な胸騒ぎを覚えた。


 さっきまで開かなかったはずのドアが開いたことへの疑問も抱かず、胸騒ぎを起こした元凶の元へと向かう。




 

 強烈な不安感を感じた時、なぜか頭上を見なければいけない気がした。そして視線の先に身を投げようとする人が見えた。


 足が痛みで千切れそうなほど酷使しながら、急いでその人の元へと向かう。だがその刹那の間にいつの間にか、足の痛みは溶けていた。


 そして体の感覚が絵具を溶くように混ざり合い、、手が届きそうというところで、彼の意識も攪拌され、流れ落ちた。

 


 


 

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