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悪辣金庫の見張り番  作者: 重装備の珈琲
2/5

早朝の呼び出し、そして任務

歩き出してすぐに追いつき横に並んで目的地へ向かっていく、もうしばらく歩いていけば着くだろうがその間暇なため、俺はエリーゼに話しかけた。


「なぁ昨日の任務について聞いてもいいか?」

「ええ、いいですよ。」

「昨日の任務に爆発の予定なんかあったのか?一応潜入任務だったはずだ、なのにどうしてそんな目立つ真似なんしたんだ?」

「私だってそんな事したくなかったですよ、なのに委員会の人たちが爆破して撤退しろと言うものですから従っただけですよ。」

「委員会が?随分と珍しいことをすることだな、いつもは何も口出ししてこないのに今回は違うんだな。で、爆破の方はどうしたんだ?魔法を使った可能性ありって報道されてたけど制御装置はどうしたんだ?あれだけの規模ならマナ拡散特化型じゃないと無理だと思うんだけど、それ持ってたっけ?」


制御装置の中にもそれぞれの使用用途に合わせたタイプがあるのだ。今自分が首にかけている制御装置は身体強化に特化したマナ循環型。体全体に空気中のマナを意図的に循環させることで体の組織を強化し一時的とはいえ通常ではありえない行動を可能とさせる。他にも様々なタイプがあるが、今回のような爆発を起こせるような制御装置は彼女のスタイルとはかけ離れているため、所持している可能性は限りなく低い。


「持ってませんよ、指令書と一緒に制御装置が同封されていましてそれを使用したんです。私的には爆弾の材料が入っていた方が楽だったんですけどね。」

「エリーゼは扱えるマナはそんなに多くないもんな、今でも訓練してるのか?」

「ええ、ですけど今より多くのマナを扱える気がしませんよ、どうしてもブレーキがかかってしまうんです。」

「ブレーキ?」

「絶対に見つからないようにする、そう思ってしまうんです。マナをより多く扱おうとしても体が勝手にやめさせてくる。なので訓練しても多分無理だと思います。」


そう彼女は悔しそうな声で言った。マナを扱える量は訓練によって決まるがそれは才能と努力のどちらかが影響するのかは半々といった所だ。才能で上がった奴もいるし、血の滲む努力をして掴み取った奴もいる。だが彼女の場合は恐らく過去に何かがあったのだろう、今の状態になるような何かが。

それを聞いてみたい気持ちはあるものの、わざわざ傷を開きに行くような性分ではない。


「爆破なんてのは専門外だから気にするだけ損だ。俺は戦闘、エリーゼは潜入、適材適所ってやつだ。ところで爆破は誰がやったんだ?」

「私の部下ですね。特化型を扱える人がいて良かったです、後で褒めておかないといけませんね。」

「そうだな、というか特化型を扱えるなんて凄いじゃないか。是非とも引き抜きたいもんだな。」

「あげませんよ、こっちは人数が少ないんですから。」

「こっちもだよ、多少人数がそっちより多いとはいえ、特化型を扱えるのなんて俺含めて3人だ。後、今のは冗談で言ったつもりだから気にしないでくれ。」

「今度提案してみますか?制御装置の扱いに特化した人をスカウトするというのは」

「現実的ではないな、第一いたとしても国が離さないよ。使い方次第では戦況なんていくらでも覆せる、そんなのが四人もいるんだ今はそれで充分だろ?」


それもそうですね、と彼女は納得するが特化型を扱える人間は本当に少ない。扱えるようになるにはどうしても才能がいる、いくら秀才が努力や訓練をしても決してその領域には踏み込むことすら不可能なのだ。第一扱えたとしても命掛けで大量のマナを制御する訓練が必要不可欠のため、実戦で使えるレベルに達する時には殆どの人数が脱落する。しかし、命掛けの訓練をモノにした者は一人で軍隊に匹敵するほどの強さを持つ、そんなのが四人もいるのだ。正直に言って過剰戦力だろう。


その後も部隊についての話や今朝の朝食についての話をしているうちに目的の部屋が見えてきた。俺とエリーゼは話をやめ、部屋に入る。


そこは無駄な装飾の一切ない実用性のみを追求した部屋だった。話し合いのときに使用するテーブルや椅子などはあるものの、壁の一部には地図や状況を示した資料などが無造作に貼られている。

洒落たものの一切を省いた部屋の主は一番奥に設置してある仕事用の大きなテーブルとそれに合った椅子に座っていた。

その姿は自分よりも大きく、高い、そして何よりも強い。その男は椅子に座っているだけでも多くのものを感じとれた。


「朝早くからご苦労。こんな朝っぱらからの呼び出しだが理由はわかっているな?」


とその大きな体格に相応しい声で言った。アスカルド・オグマス、それが目の前の男ひいては自分達の隊長の名前だ。


「はい、緊急の任務ですね?彼女と一緒ということは侵入や工作系統などでしょうか。」

「わかっているなら結構だ、今回はある所に侵入して目標を取ってきてもらいたい。」

「取ってきてこいとは…失礼を承知で聞きますが強奪の間違いでは?」

「まぁ間違ってはおらん、だがな今回の目標が流通されると少々面倒なことになる。」

「その目標について聞いても?」

「とある連中が独自で新型の制御装置を開発したんだがそれを裏で流通させるらしい。」

「確かに面倒なことになりそうですがそれはこっちの管轄ではなく、警察か軍の仕事でしょう。こちらとは何の関係もなくないですか?」

「普通はそうだ。だが今回限って言えば我々の仕事だ。」


どこが関係しているのだろうか?理由を考えているとエリーゼがまさかといった表情でアスカルドに向かって言った。


「もしかしてその制御装置に()()の技術が使われているのではありませんか?」

「そうだ、だから我らで回収し、どうやって金庫から情報を抜き取れたかを特定しなければならない。」

「ありえない、といいたいところですが事実なのですね?」

「ああその情報の確度はかなり高いと思ってもらって結構。」

「隊長がそこまで言うのならほぼ間違いはないのでしょう、ですが本当にあの()()の中身が使われているのですね?しかも技術開発国の許可なしに」


と彼女は念押しするように聞くがそれほどその金庫というのは複数の意味でカタイのだ。金庫の中身は金品などではなく、世界中のありとあらゆる魔法技術だ。その金庫は魔法技術管理委員会もしくは委員会と呼ばれる組織が管理している。世界中の魔法技術先進国、途上国が加盟しており開発した魔法技術の提出が義務づけられているが、そのかわりにその技術に関しての情報は金庫と呼ばれる世界中の国々が出資をし、開発した絶対防護と謳う金庫に保管されている。しかもその金庫の中身の情報の守護や万が一の情報漏洩のための極秘の部隊がいるという噂もある。

そんな万全の状態で開発国の許可なしで新型を作った場合には厳しいペナルティが与えられる、そんな博打をうってまで無謀なことをする国はいない。


「残念ながら本当だ。」

「どこの国ですか?そんな世界中を敵に回すような真似をするところは」

「エリーゼ、そんなことする国は加盟国ではありえない。多分どこかのドデカイ犯罪組織か無加盟国あたりじゃないか?」


それを聞いたアスカルドはわかってるじゃないかと言いたげな表情をしていた。どうやら当たりみたいだ。


「リョウの言っていることが正解だな、詳しくいうと前者の方だ。」

「では正解したご褒美にどこか聞いても?」

「ご褒美なんか求めなくても言うつもりだ、褒美が欲しいなら頭撫でてやろうか?」

「いえ、結構です。撫でられた途端に首が0度固定になりそうなので」

「俺をなんだと思っているんだ、俺は力加減を間違えないぞ?」

「遠慮させていただきます。」


冗談だと笑って言うが本当にやってしまいそうでコワイ、第一撫でられて喜ぶ歳でもないし、加減を間違えないだけで出来ないと否定しないあたりもっとコワイ。

年頃の少年もしくは青年がニコニコ顔のガチムチマッチョになでられている構図を想像しているとアスカルドは笑っていた表情を硬くしよく聞けと前置きを置いてその組織の名前を呟いた。


「ミーミル」

「「へ?」」

「ミーミル、その組織が所持しているであろう新型制御装置を奪ってこい。一応言っておくがこれは委員会の上層部直属の極秘部隊として我々に命令された内容だ。」


組織名を聞き思わずでてしまった間抜けた二人の声は決して狭くはない部屋の中でやけに大きく響いた。





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