プロローグ
思いつきで書いてみました。不定期更新になりますがよろしくお願いします。
ジリリリリリリィン!ジリリリリリリィン!と規則的かつ耳障りな音が聞こえて来る。その音で意識が戻りムクリと体をうつ伏せにして目覚まし代わりの携帯端末を切り、眠気ざましに連絡等がないかと確認する。寝起きの連絡チェックはすっかり習慣になっているが、寝起きで画面を見ると多少の頭痛がするのはどうしても慣れない。そう思いながらも緊急な連絡等はなしと確認すると顔を洗いに洗面所へと向かう。今は暖かい春の時期だが、そろそろ夏の時期も近い。最近では気温も上がり始めたため、冷たい水が気持ちいい。完全に目が覚めたところで鏡で目の合った自分を見る。黒目黒髪のかつ平凡な顔立ち、自分の出身国ではこれくらいの似たような感じはいくらでもいる。そう自分を批評しつつも自分では中々悪くないんじゃないか?と思うときもあるが同じ職場の仲間からは「自信持ちすぎじゃない?」などと言われるため、自重している。そういった事を片手間に考えながらもそろそろかな?と思い備え付けの時計を見る。現在時刻は午前6時半前と確認し、テレビを起動する。
「おはようございます。ただいま午前6時半を更新し、気温は27℃。昨日より気温が上がってきましたね。」
いつも通りの挨拶とコメントを聞きながらもパンにマーガリンを乗せてトースターに放り込み、冷蔵庫から取り出した牛乳をガラス製のグラスに注ぎ込む。それを飲みながらテレビのニュースを確認する。
「さて、次のニュースです。昨日深夜2時ごろにマリク市のビルにて謎の大規模な爆発事故が発生しました。幸い深夜帯での事故だったため、死者及び負傷者はいなかったものの依然として原因不明なため調査が進められていますが、魔法の使用による爆発ではないかという推測もされています。」
いつも通りの淡々とした声を聞きながらニュースを聞き流していく。
「最近の世の中も随分物騒になったもんだねぇ、まぁやってるのはうちらのだけど。」
と独り言を呟く。確か実行したのは第3あたりだったはず、けれどそれにしては彼女らしくない。衆人の目を掻い潜っての工作・隠蔽は彼女の十八番だ。だというのに爆発というのはそういう任務でない限りは絶対に使用しない手段のひとつだ、しかも今回の任務は潜入だと隊長から聞いている。さては彼女は部下がヘマしたかな?まぁ後で聞いてみるとしよう。
そう考えているうちにパンを殆ど食べ終え、最後の一切れを口に放り込み、咀嚼して飲み込むと後片付けを始める。といっても自分のする事は食洗機に食器を入れるだけなので片付けに関しては三分もかからない。そうして片付けを終えると制服に着替える。今日は任務がないため、待機となっているが、いつ何時も油断はしない、油断したが最後な世界だ。念には念をと思い、装備の確認をする。全体の整備は暇な時にいつもしているが、いつ急に破損か動作不良を起こすかわからないため確認は大事だ。隠し持っている武器を確認し、現在所持している弾薬諸々の点検をする。しばらくして全ての装備の簡易的な点検をを終えたところで一番重要な装置の確認を開始する。それは懐中時計みたいな見た目をした鈍い銀色の代物だ。正式名称は「マナ及び魔法使用補助制御装置」とやけに長い名称なため後ろをとって「制御装置」と呼んでいる。整備には専門の技術者がいるため、細かな確認は出来ないため、動作が正常かの確認だけにとどめることにした。
目を閉じて、制御装置を起動させる。装置がマナを吸収し始め、装置全体に行き渡る。自分は循環し始めたマナに集中し、どこかに行き渡っていない部分がないかを確認する。異常なし。そう判断した自分は魔法の行使を始める。ここでは法律は適用されないが、確認のためだけに大規模な魔法を使うわけにはいかないため身体強化を使用する。体が軽くなり、力が漲ってくるなどのいつも通りの感覚を感じ、異常なしと判断し、制御装置を切る。
「よし、問題はないな。」
と確認を終え、時計を見る。午前八時前、出るには少し早い時間だが早いにこしたことはない、そう思い扉へ向かって歩いて行く。
「早く行って何しようかな?装備の確認も簡易的だけどやっちゃったし、掃除は当番がやってくれているはずだし…ん?掃除…掃除かぁ」
と最近の自分の机を思い浮かべる。今時データで情報を記録するのが一般的だが万が一のため、紙で記録されているものがあるのだ、それの整理といくつかのカップ、多少整えられてはいるものの順には置かれていないファイル群。たまには掃除と整理はするものの、床はロボットがやるものの机の掃除頻度が少ない。確か最後に掃除したのは二ヶ月前くらいだったはずだ、そろそろやるかな。
「まぁ大して散らばってないからすぐ終わるだろう、時間潰しにもちょうど良いし。」
そう決め、扉へ向かって近づいていくと
「朝早いところすいませんが少しよろしいでしょうか?」
とおしとやかな少女の声が聞こえる。突然の事に少しビックリしながらも「今開ける」と返事をし、鍵を開けて扉を開くと視線を頭一つ分より少し高めに下ろす。そこには長く薄い茶色の髪を短く束ねた細身の少女が立っていた。彼女は少し驚いたような顔をして自分に話しかけてきた。
「リョウさん、随分出てくるのが早かったですね。どうしたんですか?」
「いやぁちょうど部屋を出ようとしてたんだ。で、どうしたんだ?君が部屋を訪ねてくるなんて珍しいじゃないか。」
「隊長から出頭命令がでていたんですよ。連絡、きていませんでしたか?」
「え?マジで?」
「本当ですよ。」
思わず端末をポケットから取り出し、起動すると連絡欄に新たなメッセージが来ていた。内容を確認すると確かに彼女の言う通り出頭命令が来ていた。付け加えると彼女と一緒に来るようにとも書かれていた。受信時刻を確認すると、装備の確認中であった。通知音のするように設定してあったが、思ったよりも確認に集中していたらしい。
「ありがとう、全く気づかなかった。にしても随分早いな、なんか緊急な事でもあったのか?」
「ええ、私とあなたを呼び出したということは何かあるかもしれませんね。」
「まぁそうだろうな。エリーゼを呼んだって事は潜入か工作だろ?そして俺が護衛かその陽動ってところだろうな。」
「私もそう思います。もしもそうなった時にはよろしくお願いしますね?では、時間も迫ってきている事ですし行きましょうか。」
そうやって彼女は微笑むと司令部に向けて歩き出す。自分も遅れまいと思い歩き出す。朝からの呼び出しという事はすぐにでも出発になるかもしれない、そう思いながらも自分こと鈴村 涼は彼女の背中を追いかけた。
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