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三日目 三日目―朝

3.三日目


1.三日目―朝


 目覚ましの音で目を覚ます。身体を起こして目覚ましを止め、時刻を見る。


現在時刻は六時半。昨日寝る前にセットしておいた時間だ。昨日は夜叉音さんに起こされてやっと起きたという感じだったので予め、準備しておいた。隣のベットを見ると夜叉音さんは既に居らず、リビングから聞こえてくる音から察するにどうやらもう準備を進めているようだ。僕はベッドから出てリビングの方へ向かった。夜叉音さんはキッチンで朝ご飯を作っていた。僕がいることに気付いたのか。手を止めてこちらを向く。


「おっ沙樹ちゃん。今日は早いのね。自分で起きれて感心感心。」


「おはようございます。」


「うん。おはよう。ご飯すぐできるから沙樹ちゃんは着替えちゃいな。」


「分かりました。」


そんなやり取りをして、僕は寝室に戻り部屋着から制服へと着替えをする。もう三日目となるとさすがに着替えも手馴れてくる。部活の時にも着替えをしているからもう結構場数も踏んでるし。ささっと着替えを終わらせてリビングへと戻る。


 リビングへ行くとまだ夜叉音さんは朝ご飯の準備をしているらしくキッチンにいた。


「手伝いますか?」


夜叉音さんに声を掛ける。


「あー大丈夫。もうすぐ終わるし。制服汚れちゃったら駄目でしょ。あたしがやってるから沙樹ちゃんはテレビでも見て待っててくれる?」


「じゃあ、待ってます。」


そう言ってソファに腰掛ける。テレビを点けてみたが、ニュース番組のようだ。まぁ、朝だしそんなものか。適当にニュース番組を見る。見ながら今の現状を思い出す。


「もう三日目か。」


自然と独り言が出た。


僕の今回の命狩人の仕事も残り二日をきった。この生活ももうすぐ終わる。そういえば考えてなかったが、この生活が終わったらどうするんだろう?向こうの世界には戻るんだろうけどその後は?すぐに他の仕事に向かうんだろうか?それよりもまず、僕が命狩人として認められなければ、その後はないんだけど・・・


考えるのは止そう。今は現状のことを考えよう。あんまり先のことばかり考えすぎるのも良くない。今の僕は今の僕に出来ることだけを考えよう。五分くらいテレビを見ていたらキッチンの方から


「ご飯できたよー。」


と夜叉音さんの声が聞こえてきた。


「はーい。」


僕はキッチンの方へ行きテーブルへのご飯の運搬を手伝う。テーブルにメニューが出揃ったところで二人で席に着く。


「じゃあ、食べようか。いただきまーす。」


「いただきます。」


二人でご飯を食べ始める。食事中夜叉音さんが僕に話しかけてきた。


「沙樹ちゃんさー。」


「何でしょう?」


僕は味噌汁を啜りながら話を聞いていた。


「着替え早くなったよね。」


「ブフッ!」


あやうく味噌汁を吹きこぼしそうになった。咳き込みなが言葉を返す。


「ごほっごほっ。何ですか。唐突に。びっくりしましたよ。」


夜叉音さんはティッシュを渡しながら


「おー大丈夫?いやでも早くなったなぁって思ったからさ。昨日はもっと遅かったのに一日でそこまで慣れるもんなのね。」


僕は受け取ったティッシュで口の周りを拭きながら答える。


「まぁ、確かに自分でも慣れたなぁとは思ってます。部活の時も着替えしてますし、何回かやれば嫌でもできるようになりますよ。」


「あっそうか。部活の時も着替えしてるもんねー。」


と、ここで夜叉音さんが意地の悪い笑みを浮かべる。何か悪いことを思いついたらしい。余計なことを言ってしまったか。


「ところで沙樹ちゃん?」


「何でしょうか夜叉音さん?」


僕はなるべく平静を装って話をする。


「あたしとしては興味本位で聞く話なんだけどさぁ・・・どうだった?女の子同士の着替えってのは?」


うぅ。そうきたか。やはり余計なことを言ったようだ。


「えーと、あんまり覚えてないですねぇ。」


我ながら、分かりやすい嘘だと思った。えーととかつけてしまうあたりが大分嘘くさい。夜叉音さんは僕の解答に更に問いかける。ニヤニヤしながら。


「へぇー。沙樹ちゃんは覚えてない?なるほどねぇ。そこまで印象に残るほどのことでもなかったと。ほぉー。沙樹ちゃんは女の子であることに慣れてたのかなぁ。もしかして、生前は女装趣味とかがあったのかなぁ?」


「いやったぶんそんなことはないと思いますよ。たぶん、たぶんですけど。僕にはそんな趣味はなかったと思います。えぇそうですとも着替えに慣れてなんていませんでしたとも。」


「ふーん。じゃあ本当のところは?」


「緊張しすぎててあんまり覚えてないです。ってか男が入るところじゃないです。あそこは。心臓に良くないです。」


正直に話した。話していると着替えてた時のことを思い出して、顔が熱くなった。穴があったら入りたい。夜叉音さんは、


「あははっ。そうだよね。素直でよろしい。初めからその感想を言ってくれればいいのよ。」


そう言って笑っていた。


「でもなかなか言えないですよ。感想なんて。何か悪いことをしているみたいな感じでしたし。」


僕はそう弁解する。


「むぅ。まぁそういう考え方もあるか。でも、あたしは沙樹ちゃんの素直な感想が聞きたかったのさ。この場だし、誰もそれについて咎める人はいないじゃん?沙樹ちゃんが男の子だって知ってるのはあたしだけなんだから。」


その唯一知ってる夜叉音さんに変な偏見を持たれるのが、嫌で黙ってたんだけどなぁ。本人が咎めないのならそれはそれでよしか。


 朝食を終わらせて食器を流しに片付ける。夜叉音さんは


「じゃあ、あたしは仕事があるから先に行くね。沙樹ちゃんも遅刻しないように来なさい。それじゃ、また後で。」


そう言って先に学校へ向かった。


 さて、僕はどうしようかな。登校時間までにはまだ余裕があるけど特にこれといってやっておきたいこともないなぁ。とりあえず、ソファに座ってテレビを点ける。テレビを見ながら僕は今日はどんなことがあるかなと考えていた。何かあったらいいのか何も無いのがいいのかそれは僕には分からない。


 でも少しだけ、何もなければ良いと思う。もう少しだけ織田さんとの平穏な日常を過ごしたいな。


 その内に登校時間になり、僕は鞄を持って家を出た。投稿中も特に何もなく学校に到着する。教室へ着くと、昨日と同じような光景があった。僕も昨日と同じように自分の机に向かう。途中影沼さんがいたので挨拶した。彼女は早めに学校に来ているらしい。読書をしていた。


 その後、始業時間が近くなり佐藤先生が教室に入ってくる。織田さんはまだ来ない。これも昨日通りである。佐藤先生が朝のHRを始めようとした時に


バーンッ‼


と教室の前のドアが開き、一人の少女が勢いよく教室に入ってきた。まぁ織田さんである。佐藤先生が嫌な顔をして織田さんのほうを見る。


「織田さん。いつも言ってますけど、登校時間をもっと早めた方がいいんじゃないですか?」


その言葉を気にせず織田さんは、


「セーフ?セーフですよね?先生。ノー遅刻。ノー遅刻でお願いします。」


佐藤先生はハァとため息をつき


「大丈夫です。ギリギリですが、遅刻じゃありません。早く席に座ってください。」


と織田さんを席に着くように促す。さすがに佐藤先生もこれ以上言うつもりはないらしい。織田さんは


「よっしゃー。ぎりぎりセーフだぜー。」


等と暢気に自分の席に向かって歩いてくる。自分の席に着き織田さんがこちらを見る。


「おはよう。沙樹ちゃん。」


「おはようございます。織田さん。」


と僕らは挨拶を交わす。彼女と挨拶するのもこれで三度目か。


さぁ三日目の仕事の始まりだ。



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