第8話 共同執筆
たまにはいつもと全く毛色の違う作品を、なんかこっちの方が向いてるかも。
「っていうか、悠之介先輩、、本当に公民館なんかでやるんですか。もっとましな、場所はないんですか??私、おじさんなんかにみられんの恥ずかしいですよ。」
結衣は、ラノベ同好会が公民館で活動しているのを、悠之介から聞いたが、公民館と言えば、おじさんが居るイメージがある。そうなると見られるんじゃないかとか、騒げないんじゃないかとか、不安が出て来た。
「ねえ、せっかくだし、ローソン行きましょう!!私、ポテチにスナックに、それにコーラとか、持ってきたいんですよ。私、こういうの憧れるんですよね。ゲームして、私モーハン持ってきちゃいました。」
「モーハンって、、これからやるのは、共同執筆だぞ!!サークルメンバーと大事な、打ち合わせあるんだぜ。それに、、俺、、モーハン弱いし。。」
「ええ??だって前、モーハンサードやったじゃないですかーー!!!その時、俺強いから倒しちゃうからなーとかって言ってたじゃないですか???せんぱーーい、、、勝負ですよ。どっちが強いか、、私は、ほら見てください。必勝祈願!!」
悠之介と結衣の2人は、公民館へ入っていった。2人が入っていくと、そこには葛飾ラノベ同好会が活動している部屋が見えてきた。
「あ!!有島君!!!あれもしかして新入生??」
アリスは、結衣の方を見つめると、ニコッとした。悠之介は、アリスに結衣を紹介した。
「共同で執筆することになったんだ。この子は後輩の木村結衣。元々、ラブコメとか得意とするラノベ作家だけどさ。実はさ、これでも自分でイラストとか書けて、絵が上手なんだよね。実はさ、今回のコミケに向けて俺と2人で作品書こうと思ってて。」
悠之介は、徹夜で書いてきた企画書を、アリスへ見せた。色々、ラノベを参考にして描いてみた。過去にやってきたゲームの要素などを入れながら、恋愛要素や悲恋をテーマにしてきた。
その企画書には、タイトルでこう書いてあった。『純情フェアリーズラブ』と。
純情フェアリーズラブは、お嬢様と冴えない主人公の恋愛をテーマにした作品である。そのお嬢様というのがかなり、ワガママなのだが、冴えない主人公はかなり自分を投影させた。
「昨日さ、結衣と深夜にLINEしてタイトル決めたんだ。フェアリーズラブっていうのは、なんて言うのか、お嬢様を妖精に例えて、純情な主人公と、まあ俺みたいなさ。んで結衣が、イラストイメージ描いてみたんだけど、ヒロインの髪型は、ストレートに赤い髪か金髪で迷ったんだよねー。まあ別にどれでもいいけど、結局お嬢様キャラだとなんかさ、金髪だとベタかなあって思って。んで、昨日iPadのクリスタで色々と描いてみたんだ。」
悠之介は書いたというヒロインの絵を見せた。確かにイメージでは、どこかお金持ちでツンデレというイメージのヒロインであった。
悠之介は絵があまり上手ではないが、必死にネットに載っているフリー素材を使いながら必死に描いてみたものだ。
「可愛い絵かけるんだ!!凄いね。」
アリスは思わず悠之介の絵に対して褒める言葉を入れた。褒めるのは彼女の常套句である。もちろん下手でも、優しく褒めてあげる事で本人は嬉しいものだ。
「そう??私に比べれば全然じゃない??所詮、物書きに少し毛が生えた程度のレベルの絵だわ。いい??本当に可愛い絵書くんだったら、まずは基礎から学ぶことが大事なのよ。私は伊達にもコミケで同人誌書いている人間だから言わせてもらうけど、全体のバランスをまずは線でいいから決めること。最初は顔も丸でいいの。それが終わったらなぞるような形で輪郭をはっきり書くこと。その際に顔のバランスを考えてね。顔は大きすぎてもダメだしね。顔を大きく描きすぎると今度は、身体との対比ができなくなってしまう。顔もね、とにかく、真ん中の点を書くことが大事なの。ほら、私のラフ画を見てみて。こうやって書けば、上手に書けるじゃない??」
白奈は、普段使っている用紙に自分が書いているエロ漫画のキャラクターを描き始めた。はっきり言って萌は上手だ。悠之介は白奈の書くイラストはかなり好きなのである。
彼女は可愛らしい容姿なくせに中々エロい絵を書くのである。悠之介はそんな彼女の書く絵を見ると少し、不満げな顔をした。
(うわぁ、、レベルが違うぞ。こいつの絵のレベルは俺なんかより遥かに上だ。こいつ小学生みたいな幼児体型してる癖になんでこんなに上手なんだよ。しかもこいつ言ってたよな。私はエロこそが命とか言ってたような。ダメだ、、これは、負けた。くそぉ)
悠之介は、iPadを取り出すとクリップスタジオを起動させた。Gペンを取りだし、必死に描き始める。まずは輪郭から書いていく。キャラクターの顔をアップにしながら丸顔を描き、そこに目、鼻、口などを加えていく。
「俺だって、、ちゃんと書けるんだからなー。頑張れば、、、頑張れば、、、あー、、、やっぱり輪郭書くのって難しいなぁ。どうしても目の形とかがずれちゃうし。なあ、、水石さん??目の形がどうしてもさ。なんか、揃わないんだよねー??教えてくれる??」
「どれどれ、うーん、、もう少し、、線を細くしても良いかもね。それから目はタレ目の方が良いかなぁ??つり目だと、なんかキャラクターのイメージがきつくなっちゃうからさ。輪郭もこうやって、、できるだけ太く、太く、こうやってね。それから目尻の部分もだよ。角度もきちんと揃えること。ほら、、もう少し顔のバランスを気持ち小さくしないと、でも大丈夫。ここを消せば平気だよ。それから髪型はどうする??確か、赤髪って言ってたよね。じゃあロングヘアにしちゃっても良いかもねぇ。有島、、結局あたしがやったけど、、ほら??これで可愛くなれたんじゃない??どう??」
「すげぇ!!いいんじゃない??」
悠之介は、出来上がったイラストを見て褒めた
。しかしこういう時は苦手だ。全部女子にやらせてしまって自分は何も出来ないというのが、小さい頃からよくあった。そういう時は決まって、悔しい気持ちを押し殺してしまうのが悠之介のお決まりだった。
「どう??これがエロを愛する女の究極のエロイラストの描き方よ。凄いでしょう??とにかく可愛く書くコツはね、丁寧に時間をかけるこれだけなのよ。特に締め切りに追われたり、すると投槍になってしまうけど、それで雑になったり、可愛さが半減してしまうのは嫌だからね。私も普通の高校生だし、これにばっかり時間はかけたくないしねー。」
白奈は、にやにや自慢しながら喋っていた。その喋り方は少し上から目線で語っている感じがあり、悠之介には花に着く感じだったのだが。そういや忘れてたが白奈は美術部らしい。それで彼女は絵が上手いのだ。つまり美術部ラノベ同好会を兼部しているということなのか。
まるで〇〇スペンサー・英梨々では無いか。
まあでもゲームを作る訳では無いので、そこまで納期に遅れるということは無いが。
「有島の小説ってこれだっけ??エルフ嬢の剣聖記とか??何とか??このイラストはアリスが書いたのか。アリス上手だなぁ。流石、私よりも圧倒的美だね。」
「吉岡は、天才だよ。プロの業界人に匹敵するくらいのレベルなんだから、ゲームのイラスト書ける人と比べる事自体が間違っているのかもなぁ。俺は、中学時代なんかやりたい事も全然見つからなかったもん。作家だってアニメが好きだから何となく始めただけだし、漫画が好きだから趣味で下手くそな絵投稿してるくらいだし。ラブコメだって書いたことないしね。なぁエロの極意みたいのなんなのよ?どうやったら、ウケる作品が書けるの??」
すると萌が隣の席から、悠之介の質問に対して、答えた。萌はポテチを食べながら悠之介の肩に手を置いた。
「はいはい、、始まったよ。有島のマイナス思考。そんくらいにしなよ。とにかく面白い話書くにはね、試行錯誤が必要なの。あんたは昔からそれが足りなかったんじゃない??やりたい事が見つからないのはこの世代人達は皆同じ。でもあんたは作家として作品を書いていくうちに人を楽しませる事が好きになったって言ってたじゃん。それだけで十分じゃないかな。食べる??このポテチ、結衣ちゃんがくれたんだ。」
珍しく萌が優しい。そう普段は当たりが強いのだがちゃんとアドバイスをしてくれたり面倒見がいいのかもしれない。もしかしたらツンデレなのかも。するとニコニコ顔で、結衣が話し始めた。
「萌先輩に教わりました。文章の正しい書き方とか、とても勉強になりました。私国語が苦手なのにラノベとか書いてて、特にラブコメとか、小学生レベルの文章だから、誤字とか多かったんで。悠之介先輩とは大違いです。」
「結衣、、お前は少し黙ってろや。」
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