第5話 同好会の入部
その日の夜、1人部屋に籠りながら、悠之介はps4のゲームをやっていた。日々のストレス発散は基本的にゲームである。気晴らしにやる事で、なにかと発散になる。
そしてふと携帯を開く。LINEを見ると、吉木萌からラインが来ていた。
あまり開くたくなかった。嫌な予感しかしなかったが、悠之介は、LINEを開いた。すると、そこにはこう書かれていた。
「あんた本当に、同好会入るの??」
「まだ決めてねえよ。それにこっちだって作家としての仕事があるしな。」
「アリスとあたしと、もう2人の4人でやってるけど、基本的に、イラストも小説家も人数足りてるし、サークルは人を欲しているわけじゃないからね。基本的に夏コミは私たち4人で出るって決めたから。私達で作ってきた、絆があるからさ。」
悠之介は、萌からのLINEに対しての怒りが増した。
「なんだよ、その言い方。まるで俺がはいっちゃいけないみたいな言い方じゃねえかよ。ひでえよ。」
悠之介は、そのまんまLINEを送り返した。もちろん既読が付くまでの間、緊張する。そうこの緊張こそがLINEの恐ろしいところである。
しかしLINEが既読になる事はなかった。
恐らく、萌は熟睡してしまったのだろう。
そして3日後、火曜日になった。悠之介はチラシに書かれた、サークルの活動場所に向かった。
「ここで活動しているのか、果たして吉岡は来ているのかなー。」
そこはとある公民館の中の一室だった。このような辺鄙なところで活動しているのか考えると、不思議でしかない。てっきりどっかの中学か高校で活動しているのかと思っていたが、そういうわけでもなさそうだ。
悠之介は公民館のピンポンを鳴らす。
「あの、有島です。葛飾ラノベ同好会がここでやっているって聞いたんですけど。」
そう伝えると、ピンポンの奥からの吉岡の声が聞こえた。
「あ、有島君、どうぞ、入ってね。」
そう聞こえたので、悠之介は、ドアを開けて、恐る恐る、入り口から中へと入った。公民館の中は古びた雰囲気の施設である。そして中から、ガヤガヤと話し声が聞こえ、話が盛り上がっている。そんな中、悠之介は、ドアをノックして部屋の中へと侵入した。
「失礼しまーす!!」
「有島君、、やっぱり来てくれたんだぁあ!!!」
「え????噂の新入部員君がとうとう入部してきたのかー?」
部屋一面に元気な声が響く。白髪にピンクのシャツ、スカートの、水色の眼をした少女がやってきた。身長は、152センチほどの小柄な少女。
彼女は水石白華。葛飾ライトノベル同好会のムードメーカーである。
「あのー、初めましてぇ。よろしくお願いします。ははは。」
「あたし、水石白華だよー。よろしくねー。んん、悪くない顔つきだねー。なんか、実は、隠れオタクだったりしてーーー???」
「いや隠れオタクも何も普通のオタクだよ。いたって普通のオタクだよ。部屋一面にラブライブとアイマスのポスター貼ってるようないたって普通のオタクだよ。隠れオタクじゃねえよ。」
「ナイスツッコミだねー、合格!!!あたしの下僕にしてあげよう!!!あははは!!!」
(なんだ???こいつ???面白くねー。ただの元気だけが取り柄の陽キャ女かー??)
「もしかして、水石さんって高校1年生??俺とタメ??」
「当たり前じゃん。そうよ、私は、高校一年生。エロとイケメンと美少女さえいれば生きていける女。それを自分の手で生み出すことに命を注ぐ女。そう全ての漫画はエロがあることで成り立っていると思うの。
エロなしでは作品は語れない。エッチなシーンがあって、男と女が官能的なキスを交わすことに、あたしの心が疼く。」
水石は、席を立ちながら、かなり熱血に熱い思いを語っていく。
「はいはい。あんたのそのエロに対する熱い思いがあるのはいいけどさー。あたし達が描こうとしている漫画、全部エロくなっちゃったらたまんないもん。葛飾ラノベ同好会がエロ漫画サークルみたいになってしまったら、評判落ちるし。折角ここまで頑張ってやってきたんだからさ。有島、白華の意見無視してていたからね。」
冷静に悠之介に言いつけるのは、そう、悠之介の親友の吉木萌である。あれだけ、悠之介の入部に反対していた萌。彼女は、ラノベ作家として、悠之介のライバルである。あれだけ反対していたのに。
「有島、アルファポリス見た??」
萌は、スマホの画面を見せてきた。そこには感想が書かれていた。レビューや、評価や、感想一覧である。萌がアルファポリス投稿した小説と漫画の感想一覧がズラズラ並んでいる。
「へえー、感想いっぱい来てんじゃん。良かったな。見てないよ。」
「はぁぁぁぁぁ????昨日あれだけLINEしたじゃん。あたしが新しい話投稿したからさぁ。あんたが1番、いい感想くれると思ったのにさぁ。信じられない???」
萌は、眉間にシワを寄せると、腕を組み愚痴を言った。
「だってしょうがねえじゃん。昨日は、新作の締め切りに間に合わないから、部屋にひたすら篭って執筆してたんだもん。終わったあとは、ひたすら寝るまでゲームやって、実況して、、、、そして、オールして、って楽しい日常だぜ。金曜日だぜ。華金だぜ。お前のLINEよりも俺には大事なものがあるんだ。」
「なによ、なによ、なによ!!!!!」
萌はイライラすると、頭に怒りマークを浮かべる。
「ねえ、ありしまーーーー!!!!
悠之介って呼んでいい!!いいよね。
よろしくね。せっかくだけどさ、今から30分でなんか小説書いてよ。あたしが色々評価してあげるよ。これでも、ラノベ読んでいるんだからね。ある程度の評価はできるよ。」
水石白華は、パソコンを取り出した。アニメのキャラクターが貼られているいかにもオタクが使っていそうなパソコン。
悠之介は30分の即興ラブ小説を書き始めた。それを白華は、見張っている。
「白華、有島君は天才作家だよ。書けないわけがないじゃん。だって一応なろう系とかエルフが出てくる小説とか書ける天才よ。そんな才能の塊みたいな人がラブ小説書けないわけがないじゃない。ねえ。なめすぎって。萌ちゃんもそう思わない。ねえ。ねねね。萌ちゃん」
「アリスは、甘いのね。こいつの書く小説はね、はっきり言って、ラブの要素が圧倒的に少ないのよ。テンプレみたいな主人公にデレデレくっつくようなヒロインと俺TUEEEEみたいな主人公が出てきてって一緒に魔王倒して、最後には、今まで好きでしたみたいなオチでハッピーエンドで終わり???
超つまんないし、今まで読んだ小説の寄せ集めなのかって感じじゃない???」
「はああああ???萌ちゃん、酷い、そんなこと言ったら、有島君可哀想だよ。」
「可哀想??まあアリス、あなたはイラストしか書けないし、ラノベも読んだことがないようなおバカさんでしょうから???」
「はああああ???なによ。それ。。。」
「なに、、なんか文句でもあんのぉぉぉぉぉぉ???!」
さすがに、イライラしてきたのか、悠之介は立ち上がった。
「うるせえーーーーーーー、集中して書けないじゃねえか、。あっちでやれやい!!!!」
キャラクターの詳細もイメージも浮かばない、これではキャラ設定だけで、30分終わってしまう。いつもだったら自分のペースで出来上がるのに、なんで、あー、頭が痒くなる。時々、ストーリが浮かばない時は、自分の頭を書く。
そして気付いたらスマホを見ながら、動画見たりと、エロ動画見たりしながら、自分のちんこをいじったり。なんてことはどうでもいいのだが。
「全然できてないじゃん。有島。なによ。やっぱりじっくり、じっくり、練りに練って小説書くタイプなんじゃん。もうそろそろ30分経つじゃない??見せて。」
「悠之介、終わった??どれどれ、どれだけできたかなー。」
ふむふむ、と言いながら、白華は、悠之介の、即興ラブ小説を読む。それはまるで恋するメトロノームのような、丘の上で出会ったヒロインが幼なじみの主人公と恋をして、デートを繰り返すと言う話なのだが、まだその序の部分しか書けていない。
「悠之介、、そうだね。私の評価は、良かな。やっぱりちゃんとした設定とか考えられている部分はよしとしよう。でも肝心のラブシーンがないじゃん。最初にさ、付き合ったあとの、ちょっとエッチなシーンとか入れて、それで回想みたいな感じで、物語が始まるとかはどうなのかな???やっぱりエロがなきゃ物足りないよ。」
「いやいや、普通に考えておかしいだろ。純情なラブ小説だぞ。それじゃただの官能小説だぞ。どこにエッチなシーン妄想しながら書く作家がいんだよ。そりゃただの変態じゃねえか????。えーーーーーーー、最初から言ってよ18禁にするならさ。」
悠之介はガッカリしたのか、創作意欲がわかなくなってしまった。そう、3年前ある日、悠之介は1人の金髪少女と出会った。丘の上で自転車に乗っていたら、偶然見かけて、なんかまるで冴えカノみたいな展開だったが。そうそれを思い出していたのだが、なかなか書けない。
「あたし達は、テストしたのよ。より短い期間で、良い作品を執筆できる有能な作家をね。別に、起承転結全部やれって言うわけじゃないわ。でもとりあえず最低条件として、起の部分くらいはちゃんと書ける作家を探していたのにね。でも有島、あんたはダメね。」
「お前さあ、いい加減にしろよ。いつになったらその強いアタリを治すんだよ。俺はもう限界だぜ。」
「まああんたを親友と思っているからこそ、いい意見を言っているのだけどね。」
萌の意見は、腹が立つ事が多い。そう、こいつはとにかく悠之介に対してあたりが強い。困ったものだ。
「で近くのイベントって何があんの??吉岡!!」
「えっとね、1番近くで同人即売会かなぁ。1ヶ月後。オリジナルの作品を売るのよ。サークルのイメージアップの為に。夏コミに出すのとは別のやつよ。まあオリジナルの小説だけどね。私達個人で小説なり、漫画なり、書こうかなあ、みたいな感じ。確か7月だったかな。あとその1ヶ月後にもある。埼玉でやるやつ」
「埼玉????いやまてまて、埼玉だろ、ダ埼玉はやめとけよ。ろくなことねえぞ。だってよ、北関東の3県にも入らない、なしては、海もない。越谷レイクタウンぐらいしか、見どころがないんだぞ。〇んで〇玉って馬鹿な映画でも言ってただろ。ダサさの極みだ。俺はパス。」
「はあ???、埼玉の悪口言ってんじゃないわよ、言っとくけどね、トトロとか、春日部とか聖地なんだからね。今だってオタク達にとって、隠れた名所なんだから。都会っ子アピールはウザさの極み。信じられない。有島、まじキモイ。」
そう悠之介は、顔は爽やかな、変態紳士。であり、都会民の偏見の塊、バーチーと神奈川と都内を愛し、都内に愛された男なのだ。ダサい玉など、一切興味がない。
「俺は葛飾を愛しているだけだ。別に埼玉をだディスっているわけじゃないからな。」
「有島君、、、話戻すけど、夏コミ、即売会出る??」
「わかった。じゃあ、夏コミは出る。それでいいだろ。最初の即売会は出る。でも2回目は出ない。んで、やっぱり、俺はサークルに入ります。やっぱり、俺は、1人で作るより、みんなとの共同作業が好きなんだ。よろしく。葛飾ライトノベル同好会のみんな。」
こうして有島悠之介は、葛飾ライトノベル同好会の入部が決まった。