第4話 勧誘
会議が終わり、悠之介と吉岡は、カフェに来た。駅チカのビルの1階にある、コメダ珈琲ではなく、ドトールだけど。いわゆる、メジャーなお店だ。そうあの、冴えカノでも倫也と恵がよく、2人で来ていた場所だ。
「ここにしよっか、あたし頼んで来ていい?」
そういうと吉岡は、ハニーカフェオレを頼み、商品を頼むと、席に戻ってきた。
「ええ、吉岡、ハニーカフェオレ好きなの?」
「うん、よく1人で来る時に注文するんだあ。」
「有島君は?なんか注文してきたら?」
「俺は、ミラノサンドにでもしよっかなあ。」
悠之介は席を立ち、注文口へ向かう。
「いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」
立ち並ぶ、メニューの中から、選ぶ。
そこで、ビーフパストラミと生ハムのミラノサンドを注文する。それとホットコーヒーを注文した。
「お待たせしました。こちら商品でございます。」
店員さんの親切な笑顔を見ると、悠之介はテーブルに戻っていった。そこで本題に入る。
「吉岡さあ、俺迷ってんだけど、そのどうしてもサークル入んなきゃダメかなあ。例えばさ、コミケに出るとか、即売会に出るって言うのか、強い押しがあるなら、俺考えちゃうんだよね。」
「別に強制はするつもりは無いよ。でもね、有島君があの有村先生だって分かった今、チャンスは一回しかないの。あたしがね、言いたいのは、夏コミで漫画を作るの。あたしと有島君、葛飾同好会のみんなで漫画と小説どっちも書くんだよ。有島君絵があまり上手じゃないなら、話考えるだけでいい。でもチャンスは一回しかないの。有島君みたいなシナリオ考える人がいるだけでそれだけでいい。やろう。ね。」
少し、悠之介の気持ちが揺らいだ。先にあるのは受験勉強。希望の大学に受から、浪人でもすれば親に叱られるという、絶望。そうあまり成績が良くない、悠之介にとって、高い壁がそびえ立つ。
「そこまで言うなら、やるか。まあ色々大変だし、現実逃避ってことも含めてね。まあでもあくまでこれは趣味だからさ。趣味があるからこそ、勉強も頑張れるしね。それに、俺現実逃避したいからさ。勉強とかなんかそういうのもうやりたくねえわ。あははははは。」
「本当に。ありがとう。一緒にやろう。」
「でも未だに不思議だなあ。中学時代あんなに、勉強出来て、読書ばかりしているような吉岡が、まさか同人イラストレーターやってるなんてさ。実感が湧かないんだよね。」
「あたしね。学校でも読書ばかりしてて、みんなからアリスちゃんは、真面目だねえとか、読書好きなんだあって褒められたこともあった。でも本当は漫画が好きなんだ。世界で1番、絵が好き。漫画が好き。だから描きたい。絵を見て、見る人達が感動したり、上手って言ってくれるような漫画が描きたい。絵が描きたいって中3の時、pixivに載っけたの。そしたら書けたの。まるで神様が私に力をくれたかのようにね。pixivでいいね沢山貰って、本当に嬉しかった。あたしの好きな事を認めてくれる人達がいる。気づいたら無我夢中で描いてた。イラストを描き続けた。なにかに熱中できるってこんなに幸せな事なんだって。」
吉岡は、過去の事を踏まえながら、そう話した。彼女にはそこはかとなく、闇がありそうな感じであったけれどもそれでも自分の趣味を貫き通してやりたい事をやっている。何かと尊敬できる。
「お前は、ちゃんと夢かなえたんだな。偉いよ。」
「アリスーー!!!奇遇だね。」
声がした。見ると青髪にショートヘアの葛飾第3高校の制服を着たいかにもアニメキャラみたいな女子が吉岡に絡んでいる。
「萌ちゃん!!!」
吉岡は、嬉しそうに、吉岡の方を見つめる。だがその姿を見た時、悠之介は、驚愕の表情をした。それはそのはず悠之介にとってにっくきライバル作家。吉木萌である。
「え???有島、なんでいんの。え????えーーーーー!!!!」
吉木萌は、びっくりして驚きの声をあげた。彼女は、中学、いや小学校から知っている幼なじみでもあり、悠之介のオタク友達でもある。そんな萌は、有島と呼ぶなど、非常に馴れ馴れしい。今もたまに会うと連絡くれる。
「吉木じゃん。お前も同好会入ってんのかよ。え吉岡と知り合いだったの?」
水色の髪という高校生ではありえない髪の色をしている彼女だが、意外と根はちゃんとしているし、我も強い。しかも噂によれば、コミケでレイヤーもやっているという噂もある。
「そう。アリスと一緒に、夏コミに一緒に出そうって頑張っているだもん。なんで、有島なんかとアリスが一緒にいんのかって思ったけど、まさか付き合ってんの?」
「馬鹿、ちげえわ。吉岡が今度の俺の新作のイラストを担当することになったからさ。そのお礼っていっちゃあれだから、葛飾の同好会に入らないって誘われているところだよ。」
「えぇぇ、あんたが、同好会に。ちょっとやめてよ。アリス、こいつはね、とんでもないんだよ。こいつの小説読んだ事ある?テンプレみたいなストーリー展開に、何の落ち度もないセリフばっか、壊滅的につまんないのにさ。それなのに、サークル入れたら、どうなるのよ。」
その吉木萌の意表を着くような一言は、悠之介はプツンと来たのか。
「ち、、、、そんな事ないんだからな。俺の小説は世界一面白いんだからな。そうだよね、吉岡。お願い、ここはそう言ってよ~。」
悠之介は、吉岡に助けを求めた。
「萌ちゃん、有島君と仲良しなんだね。でも、あたしは、有島君の小説面白いと思うけどなあ。だって総発行部数の100万部だよ。絶対面白いって、あたしのイラストの仕事頼んでくれるぐらいだもん。」
「えええ、絶対やだ。こいつと同じサークルなんて、いやだーーー!!」
萌はそれでも、強く嫌だと言い続ける。そんなに嫌なのか、全くと悠之介はあきれた。
「どんだけ、お前は自分勝手なんだよ。全く呆れてものが言えねえよ。それにお前、俺から借りた、ゲーム借りパクしていないで返せよ。」
悠之介は流石にイライラしたのか、萌に強く言いつけた。
「はあ???いつの話してんのよ。そうやって昔の話ばっかり、呆れてもの言えないわよ。小学生の時の話じゃない。」
「2人共、落ち着こうよ。」
アリスは、必死に2人をなだめようとする。そうこの2人、喧嘩を始めるととことん喧嘩をしてしまうのだ。なんというか相性が悪いというか。こうなってしまった以上は、仕方がないのか。
「有島君、今度火曜日に活動があるの、良かったら来て、ね。」
そう言ってたアリスは、場所が示されたサークルの勧誘チラシを渡した。これで、このサークルにとりあえずどんな活動をしているのか、気になった。しかし唯一無二なのは、吉木萌の存在である。彼女は、どうも相性が悪い。
それでも、悠之介は、何としても、このサークルに入りたいと強く願った。きらり先生との仕事が楽しみでしょうがないし、自分にとっての夢が叶いそうだった。