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時を超えて8


 10歳の折に魔力測定があったのだが、キルテの今生では、風、火、水、雷、光の五属性を扱えることが分かった。一つ驚いたのは、魔力の色が前世と同じ真珠の様な光沢もつ乳白色だったことだ。

 残念なことに、魔法は講義の一環として基礎的な事しか学べなかった。

 ただ、その講義を受ける場所が魔法省だったのだ。本当に懐かしい。僅か二年間だったが務めていた魔法省。ミーナと共に働くことはなかったが、いろいろあったなぁと感慨深い。それと、あの文書配送機器だが、今も使用されていた。


 ちなみに、4歳から始まった淑女教育だが、有り難い前世の記憶を利用して、目立たないように気を付けて早めに終わらせていた。ダンスは体幹が肝と分かっていたから、習う前から基本姿勢を作れるように体を鍛えたのだ。柔軟や筋力づくりも欠かさずに早め早めの対策だ。それに、王族としての嗜みは心得ているし、語学はそれこそ有難くも記憶が残っていたので難なくクリア。そもそも、王女に求められるのはそんなに多くない。貴族の令嬢に毛が生えたくらいの教育量だろう。伯爵家の令嬢として育った記憶もあるのだから、何も問題はないわけだ。

 うん。有り難い。余裕があるのは有難い。


 そんなこんな日常が過ぎ、いよいよ今年15歳を迎える年になり、学園ライフの開幕である。また通うことになるとは、人生何が起こるか分からないものだ。


 余談だが、幼い頃にお世話になっていた侍女のアリーシャだが、これがまたなんと、護衛騎士のジャンと結婚したので寿退社をしていた。現在私についている侍女は、名をエミリー・イグニッシュ。

 前世私がお世話になった、ミラの家の子孫だ。変わらず名門として名を上げているイグニッシュ家。今生もお世話になるのだ。


 学園の選択科目だが、今回は、属性魔法学、無属性・補助魔法学、淑女教育を選択しいた。魔法学を選択したのは訓練棟を使いたいからだ。王宮では基礎までで講義を修了してるが、勘を取り戻そうにも魔法を行使できる場所がなかったのだ。だから、訓練棟で特訓しようと思っている。

 今はどんなシステムがあるんだろう。もーちゃんはまだあるだろうか。魔法関連はどんな機器があるか楽しみだ。

 で、レオは、法制、経営学、武術、属性魔法学を選択したそうな。

 そして、今生はぼっち卒業だ。ずっとレオといられるし。それに、クリフお兄様が三学年に、グレンお兄様が二学年にいるし。

 ちなみに、クリフお兄様は8歳の時に公爵令嬢ビクトリア様と婚約が成立し、13歳の時に立太子した。おじい様がお父様に譲位をされたと同時にだ。おじい様たちはあの離宮で隠居生活をされている。

 それと、グレンお兄様もお相手が決まった。伯爵家のご令嬢だ。私より三つ下の子。顔合わせで知り合い、お茶会を重ねて親睦を深めたそうだ。

 それはさておき。


 久しぶりに会うウォルター君とキャロルちゃん。今期に華冑科に入る特待生や子爵家の子たちはいなかった。

 で、この二人、何と婚約したらしい。ってことは、クラスメイトは婚約者同士ということになる。それぞれが行動するから、誰もぼっちにならずに済んだのは御の字だ。あのぼっちは寂しいから。

 ちなみに、ウォルター君は伯爵家嫡男なので政治系を。キャロルちゃんは伯爵夫人教育のために淑女科の授業が主だそうだ。


 入学式も恙なく終わり、三学年から一学年の華冑科の皆が食堂に偶然集結してしまったようだ。お兄様たちと会えるかなぁなんて思いながらレオと昼食を摂りに食堂に行ったら、凄い偶然に集結していた。

 王族と高位貴族の集結に、平民の生徒たちが慄いてしまっている……ごめんよ、皆。

 引き攣りそうな顔を押し込めて、挨拶を交わしていた。5歳から始めた顔合わせなので、お兄様たちのクラスメイトとは初顔合わせだ。

 そしたら、グレンお兄様のクラスに懐かしい名を聞いた。ブルネル子爵家の子息がいたのだ。そうか、この人がエルリック様とレリア様の子孫か。感慨深い。相変わらず優秀なんですねぇ。ぶれないイケメン一族ですねぇ。

 貴族名鑑で調べたが、前世弟のオスカーとリリちゃんの子孫は、私より四つ上なので会ったことはない。王宮の夜会で会えるはずだ。どんな子だろうと今から楽しみである。

 いろいろ懐かしい名が出揃ってくるものだと、感慨に耽っていると。

「おや?貴殿が噂の勇者殿か。貴殿の武勇伝は聞き及んでいるよ」

 そう切り出したのは、クリフお兄様のクラスメイトであるヴァッセラーネ侯爵家の子息だ。レオはひょいっと肩を上げて答えている。

「思い出しますわ、あの日の事。じっと見つめ合って、お互い一目惚れをされて、翌日には婚約が成立したと伺った時は驚きましたわ」

 キャロルちゃんが懐かしそうに目を細めた。

「くくっ。我が妹の鈍さには笑ったよ」

「顔を真っ赤にしておきながら、決着をつけますわよ!だったかな」

「う~~。あれは、喧嘩を売られていると思ったんですもの。怒りで顔が真っ赤になってしまっただけですわ」

 ぶすくれていると、皆から笑いが起こった。こら、レオ!何を笑っている!レオにも責任あるんだぞ!

「あの時、大臣たちが湧いていたらしいね」

 ん?皆苦笑いだが?

「何故、湧くんですの?」

 ん?さらに苦笑い?

「それはね、マリー。あの父上の怒りを買うかと、お前の婚約は難航するところだったのだよ」

 げぇぇ。やっぱそうじゃん……。

「……お父様の所為で……本当に行き遅れるところでしたのね……」

「レオン殿がいてよかったな。勇者殿、マリーを頼むよ」

「心得ています」

 至極当然のように答えるレオに賞賛の嵐。勇者ってそういう意味だったのか。

 どんだけあの父は残念なのか……。

 和やかな雰囲気で食事も進み、学園初日の午後は早速レオと訓練棟に自主練に行っていた。あのもーちゃんも健在で、ルーファス様が考案した仮想魔獣も勿論あった。いろいろ本当に懐かしい。

 それと、あの植物園は、レオと過ごすためにこれからよく行くことになるだろう。ぴったり張り付く侍女のエミリーも護衛のジャンもいないから、二人っきりなので何でも話せるのは嬉しい。

 そんなこんなウキウキ学園ライフが幕を開けたのだった。


 入学してからは、魔法の鍛錬に没頭していた。前世愛用していた風の鎧や氷の剣も使えるようになったし、治癒と補助は昔と変わらないレベルまで到達。風の使いかたとかも手馴れてきたし、火に関しては不要な物を燃やしたり温風にしたり暖を取ったりと、これがなかなか役に立っていたので使えることは有難い。

 ただ、武術に関してはやはり心許ないのは否めない。この体で鍛錬したことがないから一から覚え込まなければならないのだ。剣術の型や動きのイメージは覚えているから、もーちゃんを頼りに特訓中だ。今はまだもーちゃん1号レベルだが、欲を言えば4号をクリアしたいものだ。自衛できるのに越したことはないからだ。


 学園生活は緩やかに穏やかに過ぎていき、長期休暇に入れば、招待を受けた家々の夜会にはレオにエスコートされて出席し、無事にデヴュタントも終えることができた。王宮舞踏会では私のお披露目ということで、お父様(自分がする!と言い張った……)とのファーストダンスもきちんとクリアした。今生の私の身体能力も有難いスペックだったので、ダンスはバッチリ。レオも褒めてくれた。


 舞踏会でランドール家が挨拶に訪れたときは、胸が締め付けられた。あぁ、この人たちが私たちの子孫かと。前世お父様やオスカーの面影を探すことはできなかったが、凛々しい顔立ちの伯爵様と嫡男さんだった。今のランドール家には、子息一人のようだ。期待がかかった後継ぎだ。

 頑張れ!先祖の私が応援しているよ!なんか複雑だけどね。



 ※ ※ ※



「リュイ。水鏡を頼む」

「はい、ジル様」

「イア。どうだ」

「――――いいえ。ないわ……」

「そうか」

「これにも限界がありますからね。人生の節目となった僅かな時間しか映せないから、人数が限られます」

「悩ましいな」

「ジル。運命が動いたの?」

「――あの子の身に何か起きそうではある……だが、それが何なのかが分からぬ。あの子が眠る横に――どういう意味なのだ――その男の目は、まるで魔族の様な底知れない冷たさを孕んだ目をしている……」

「ジル様。それが起こる時期は?」

「歯痒いことに、分からぬ……何か手掛かりになる風景もない場所であった」

「手の打ちようがありませんか……」

「二人に伝えてみては」

「無駄だ。これは回避できぬ未来のようだ。その先もわからぬまま、その運命はまだ動かぬ――最初に視たときからな」

「ならば、それこそが運命の動き出す鍵なのね……」

「あの子は、いつでもその身を危険に晒さねばならぬのか……」

「……二人は、どうしてこうもままならないのでしょうね」

「そうだな……」





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