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外伝17


 じれったい時間を過ごすも、こちらの世界では今年高校三年になった息子の大学受験が控えている。自分たちにも生活がある。あっちも幸せになってほしい。悩ましい。

 どうしてここまで拗れに拗れた運命なのか。

 陽は、夏が近づいてくるとこまめに見ていた。こちらとあちらの時間の流れがずれているようだからだ。

 そして、その時が来た。合点がいった。

 あの子が、あの母親の所為で心を閉じていたからだ。罪人の娘にされて、益々心を閉じていた。察するに、王子の所為でもありそうなので、少々腹が立つ。夜会で壁の花は間違いなく王子の所為だからだ。誘いがない夜会が続いたことも原因なのだろう。

 あの子は涙を流してプロポーズを受けていた。

 そして、今度は、あの記憶を持った子がキーパーソンとなったようだ。

 ≪何があっても手を離しちゃだめよ。約束よ?何があっても、絶対よ?≫

 魔族の残党狩りに行った帰りの出来事だった。

「そうだったのね。そして、あの子がその約束を守るかどうかで、その先の未来が現れるのね」

「ああ。全てはあの子次第だ」



 運命の夜会の時が来た。

「里奈。あの小説の意味が分かったよ」

「え、え?あの小説やっぱり意味があったの?」

「ああ。あ、ちなみにあの子、王太子妃なるって決めたよ」

「それを早く言ってよ!」

「ごめんごめん。ちょっと小説の方に吃驚したから。ああ、それと、友があの子を乗せて大空を飛んでるよ」

「――竜に乗れるの?」

「ん?ごめん、言って無かったけ。あの子、友の背中に乗るのを子どもの頃に練習してた。立派に乗れてるよ」

「簡単に乗れるものじゃないでしょう?」

「ああ。あの子が初めてじゃないのかな。竜に乗ったのなんて。空を飛びたいって、風魔法練習して自分一人でも飛んでたよ」

「あの子ったら……挑戦し過ぎよ……」

「それと、あの桃色の髪の女の子だけど」

「……あ、その子……」

「心配ない。竜人族の男の番になっていた。驚いたことに、その子も記憶があったよ。ゲームの記憶もね」

「はああ!?……あ、じゃあ……」

「里奈。その記憶があったから悲惨な状況から抜け出せたんだよ。言ってなかった事があったけど、幸せになれたんだ。それが、桃色の髪の子の運命だったんだよ」

「だったらよかったわ」

「運命って凄いな――不思議だと思わないか?恵梨香のために作ったゲームが、いろんな子たちの運命に繋がっていたんだ。ゲームを作ったきかっけはあの子の未来視をしたからだろ?きっとあの子の魂が、俺たちも含めて皆を引き寄せたって気がしてならないよ」

「そうかもしれないわね」

「で、あの小説の事だけど、まだ他に記憶を持った女がいたんだ。それも隣国にね」

「まさか、その女が悪用するの?」

「名探偵。そのとおりだ。リリィって子に容姿が似ててね、ブルーのコンタクトレンズとか開発して自分が貴族の娘ですって言いだすんだ。それと、あの子を罵ってたあの令嬢、あの令嬢が利用されてね、情報引き出されて暴露しまくって墓穴掘るみたいだ。記憶がある子が開発した、映像記録装置で録画された映像が証拠になる」

「ビデオみたいなものの事?」

「ああ。まだ学生のその子の発案で、そんなものまで作り上げるみたいだ」

「――記憶を悪用した女はどうなるの?」

「多分、処刑されるみたいだ。共謀した父親もね。そして、前世の記憶やゲームの物語も全て暴露される」

「は?」

「あのゲームのヒーローたちが勢揃いしてた場所でね。国王やら王妃やら関係者の親たちも勢揃い。あの子の父親も弟も、リリィの父親も兄も、恵梨香も記憶を持つ子も。でも、誰もが受け入れるようだ。迫害も受けないし、王子もあの子を手放さない。その先の未来が完全に開けたよ。もう少し困難もあるけど――もう心配ない、里奈。全てがうまくいったようだ」

「そうなのね。あの子たちも幸せになるのね。良かった。本当に良かった」

「ああ」





 ※※※※※※※※





 ローゼンベルク王宮敷地内にある離宮。


「どうかしたのか?マリー、泣いていたのか?」

 旦那様から揺り起こされて目が覚めた。

「え?あれ?本当ね。泣いてたみたい」

「嫌な夢でも見たのか?」

「いいえ。そうじゃなかったような気がするわ。なんだか懐かしいような夢だった。レオに似た男の子が不思議な色をした石をくれたの。それが嬉しくって、でも、その後切ないことがあったような?」

「ほう。俺に似ていなかったらお仕置きだったがな」

「……何故そうなる……」

「俺以外の男から貰った物が嬉しいとは怪しからんぞ」

「いやだから、夢ですって」

「まさか、俺より先に贈り物をもらったことがあるのか?」

「はあ?無いわよそんなの」

「ちゃんと思い出せ。そんな記憶があるから見たんじゃないのか?」

「いやだから、ありませんって。レオから買ってもらった万年筆が初めてだもの」

「じゃあ、なんだその石は。お前、宝石に興味なかっただろうが」

「いやだから、石って石よ。宝石じゃなくて――あれって魔石じゃなかったかしら?」

「何故魔石とわかる。ああ?隠し事してないだろうな、マリー」

「ええ!してないってばっ。どうしてそんなに食いつくのっ。ただの夢じゃない!」

「ただの夢で泣いていただろうが。そんなに泣くほどそいつの事が印象に残っているからだろう。俺はお前に魔石など贈った覚えはないぞ」

 据わった眼で見下ろしてくる旦那様。

 朝っぱらから何この状況……。

 よし!こんな状況を打開するには!この歳になって恥ずいけどな!

 旦那様の首にそっと腕を回して、頭を近づけてもらい、そして耳元で囁くのさ。

「レオが、全部私の初めてですよ。愛しているのもレオだけです」

 おまけに耳にちゅっと大サービス。もうこれで勘弁してほしい。

 んん?

 ぎゃぁぁ!猛獣!猛獣がいる!なんでさ!いい歳こいていい加減落ち着け旦那様!!

「お前というやつは!」

「朝っぱらからストーープっ!!」

「お前の所為だ!」









次回からは、最終章です。


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