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 あれから二年が経ち、私は7歳、オスカーは5歳になった。最近、うずうずしていることがある。

 それは。

「お父様。私もオスカーみたいに武術が習いたいです」

「――は?」

 オスカーが5歳の誕生日を迎えた頃に剣術の講師がついたのだ。子息の嗜みとして必要だからだそうだ。貴族の令嬢といえば、お茶の作法やらなんやらの礼儀作法ばかりで息が詰まりそうである……。

 豆鉄砲を食らったような顔をしているのは父だけではない。朝食に集まった家族の前で言い放ったので、おばあ様はもちろん、使用人たちも何を言い出したのかと驚いている。セシルに至っては、苦笑いしているが。

「姉上……今度は何言い出してるんだよ……」

「だって、楽しそうなんだもん。武術を習えば護身になるでしょう?ね、お父様、おばあ様」

「護身なんて必要ないだろう。護衛だって付くし、大体、外出しないじゃないか」

「オスカー、そんなこと言ってたら世間知らずのアホ令嬢って言われるわよ?」

「なんでさ」

「学園に入ったら、平民の子たちも沢山いるのよ。その子たちと共通の話題がなかったらお友達出来ないでしょう?」

 この発言にはメイドたちが目を丸くし、セシルは額に手を当てて項垂れ、セバスは何とも言い難い表情になり、父と祖母は珍妙なものを見る目になっている。

 なにさ?

「……ローズ……平民の生徒の子たちと話す機会はないと思うわよ」

「そうなのですか?」

「ええ。貴女は伯爵家の娘だから、華胄科(かちゅうか)というクラスに入ることになるわ。貴族のご子息やご令嬢ばかりよ。例外はあるけれど」

「ん?じゃあ、王宮で会ったあの伯爵家の男の子たちだけ?」

「ええ、そうね。貴女と同じ歳は、その子たちだけだから」

 なんだそれ!ぼっち丸出しじゃん!!

 衝撃の事実に固まっていると、オスカーは黙々と食事し始めている。

「オスカーと同じ年の子はいるんですか?」

「ああ。王女殿下、公爵家子息、侯爵家子息、侯爵家令嬢、伯爵家令嬢が二人だ」

「えぇ!オスカーだけ狡い!」

「何が狡いのさ。偶々だろう」

 最近、可愛くないぞ、弟よ!

 不貞腐れていると、父が思い出したように口を開いた。

「オスカー、お前も5歳になったから、三日後に王宮で殿下方と顔合わせがある」

「はい、父上」

 おお、もうそんな時期か。

「ローズ、お前もだ」

「へ?」

「お前だけ先に帰っただろう。この機に王宮へ来いと言われたのだ」

「えぇ……またですかぁ……?」

「まあ、ローズ。何がそんなに嫌なの?」

「……うぅ……王宮って窮屈ですもの……」

 それに、自分の知らないところであの母と同類のように思われていたのに、何が楽しいものか……。

「ローズ。貴女は貴女よ。貴女らしくいればいいわ」

 察しのいいおばあ様は、気遣うような眼差しで慰めてくれる。

「……はい」

 それからは、恙なく食事が進んでいたのだが。

「あ!武術習いたいです。お父様、いいでしょう?」

 忘れるところだったと話を蒸し返すと、父と祖母はやれやれと肩を落としている。

 だが、ここで負けてなるものか!

 これでもかと目をキラキラさせて懇願の眼差しを向ける。

「…………ああ。わかった。やってみろ……」

 とうとう父が折れてくれたのだ。

「ありがとうございます!お父様!」

「元気がいいのはいいことだけど、淑女教育を疎かにしてはいけませんわよ?」

「はい、もちろんです」


 ひゃっほーい!勝ち取ったぞ!!



 早速動きやすい服を用意してもらい、オスカーと同じ講師に師事してもらうことになった。最初、講師もご令嬢がですかと目を剥いていたが、真剣な眼差しで固い意思を伝えると承諾してくれたのだ。

 私は体力がないということで、基礎体力をつけることから始まった。

 手っ取り早く言うと、走り込み、柔軟、素振りである。他の講義の合間を縫って、毎日の日課としたのだ。


 ストレス発散方法を得た私は、毎日が充実していった。




5/3 誤字を修正しました。

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