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エーテル国軍で雑用の日々(7/10)

ついにナツメがチートを使う。

(ナツメ)「ハンニバルさん! トルバノーネさんに何かあった見たい!」

(ハンニバル)「何かってなんだ? それだけじゃ分からない。もしかするとクソしてる時に蛇に噛まれたのかもしれないだろ?」

(ナツメ)「茶化さないでください!」

(ハンニバル)「分かった。だが戦場に何かは付き物、特にトルバノーネは奇襲を選んだ。不測の事態など砂場の砂粒ほどある。何か他にないのか?」

 トルバノーネさんたちの元へ馬の尻に鞭を打ちながら、コペルニクスさんが暮れた通信機でハンニバルさんと連絡を取る。

(ナツメ)「大きな声が聞こえたような気がしました!」

(ハンニバル)「気がした? とんでもない不確定要素だ。だがもはや俺たちはそっちに手が出せない。だからお前の言葉を信じてアドバイスする」

 ハンニバルさんの咳払いが聞こえる。

(ハンニバル)「大きな声が聞こえたのなら、おそらくトルバノーネたちは撤退している」

(ナツメ)「撤退ですか? 戦いの合図じゃなくて?」

(ハンニバル)「合図なら笛や太鼓の音で済む。お前に届くほどの大声なら、もはやそんな暇すらないことを意味する。つまり緊急事態、トルバノーネの策は破たんした」

(ナツメ)「どうして? トルバノーネたちは死ぬ覚悟で向かったのに? たとえ計画が破たんしても自滅する勢いだったのに?」

(ハンニバル)「計画を実行する前に破たんしたと気づいた。奴らとて練った作戦が実行できないと知れば撤退する。そしてそこから推測できる結論が一つある。黒き者どもを指揮する者が現れた」

(ナツメ)「指揮する? まさかあいつら、トルバノーネさんたちの裏をかいたの?」

(ハンニバル)「そうと考えるのが自然だろう。少なくとも俺なら悲鳴を上げる」

(ナツメ)「じゃあもしかして!」

(ハンニバル)「お前が向かうそこは死地では無い。ただの死体の山が築かれる惨殺現場だ」

 ふと山を見つめると、灰色の雲が山の上にあった。

 それはゴロゴロと怒るような、笑うような音を奏でながら光る。

 そして冷たい風が吹く。

 悪魔さえも凍えそうな冷たい風で背筋が凍る。

 馬が怯えて足を止める。いくら鞭を打っても梃子でも動かない。

 そして見つめれば山のところどころに黒い物体が蠢くのが分かる。

 黒き者どもだ。

 そしてその先に居るのは?

 見えない。

 だけどすぐに分かる。

 すぐに山が真っ赤に染まるから。

(ナツメ)「どうしたら良いの!」

(ハンニバル)「黒き者どもの足止めをしろ」

(ナツメ)「足止め? それでいいの?」

(ハンニバル)「俺なら俊足の速さを誇る黒き首なし騎士に背後を取らせ、敵が怯えたところに黒き者どもをぶつける。だからせめて黒き者どもの足止めをしろ。そうすればあいつらを少しでも多く逃がせる」

(ナツメ)「どうやって足止めしたらいいの!」

(ハンニバル)「それぐらいお前で考えろ!」

(ナツメ)「そんなの無茶だよ!」

(ハンニバル)「じゃあ諦めて逃げろ! 見捨てたってあいつらの責任だからな! そして無力な自分を悔いて生きろ!」

 ブツリと通信機が無常に切れる。

(ナツメ)「どうしたら良いんだ?」

 動かない馬を下りて走る。その間にも山が黒く染まる。

 足が遅い。いくら走っても縮まらない。

 強く冷たい風が吹き始める。嵐の始まり。

 向かい風が分厚い壁のように行く手を阻む。

 どれぐらい走ったのだろうか? もう一時間くらい走っている気がする。なのに山は遥か彼方にある。

 いくら急いでも、何もできない。

 躓いて転ぶ。起き上がろうと足に力を入れるけど立ち上がれない。

(ナツメ)「何で?」

 起き上がろうとすると誰かに茂みまで抱え、運ばれる。何があったのか起き上がろうとするけど誰かが覆いかぶさって来て起き上がれない。

 そしてすぐに地震のような地鳴りがする。。

(ナツメ)「まさか?」

 無理やり顔を起こして目線を上げると、黒き首なし騎士、黒き者どもが黒き大騎士に連れられてエーテル国に向かっていた。その数は少なくとも千に届く。

 そして皆の剣先は赤く染まっていた。

 僕は誰かが退くまで震えながら隠れていた。そして誰かが退くと、すぐに立ち上がって、エーテル国方面を見た。

 城下から火の手が上がっていた。そして、悲鳴も、確かに聞こえた。

 誰かが山の方へ歩けと手を引いてくる。僕は燃え盛る城下を見乍ら、山へ行った。赤い山へ。


(ナツメ)「そんな……」

 山に入るとエーテル国軍の死体で道が出来ていた。

 皆逃げるために同じ方向に向かった。

 それを黒き者どもが殺した。

 皆前を向いていた。一人たりとも振り返っていない。皆うつ伏せで死んだ。黒き者どもは背中を切った。逃げ惑うその背中を。

(トルバノーネ最高司令官)「ナツメ……はは、みっともねえとこ見せちまったな」

 腰が抜ける体を誰かに引っ張られて導かれると、そこにはトルバノーネさんが虫の息で、大木に寄りかかっていた。

(ナツメ)「トルバノーネさん!」

 懐を探ったけどエリクサーは無かった。周りを見ると、エリクサーの瓶の破片が沢山転がっていた。

(トルバノーネ最高司令官)「お前が暮れた奴全部使っちまった。それでも勝てなかった。だらしねえ」

(ナツメ)「喋らないで!」

 服を脱いでグッと胸とお腹の傷を塞ぐ。でも血は止まらない。

(トルバノーネ最高司令官)「お前、本当に男だったんだな」

 トルバノーネさんが僕の体を見て笑う。

(ナツメ)「何言ってるの? 前から言ってたでしょ?」

(トルバノーネ最高司令官)「そうだな。前から言ってた」

 ゴフリと大量の吐血をしたのでさらに傷を押さえる。血は止まらない。

(トルバノーネ最高司令官)「正直に言ってくれ。城下はどうなった?」

 僕は傷を押さえながら、弱弱しいトルバノーネさんの目を見て迷う。

 正直に語るべきか、それとも嘘を吐くべきか?

 答えは決まっていた。

(ナツメ)「燃えちゃった。たぶん、皆死んじゃった」

(トルバノーネ最高司令官)「そうか……」

(ナツメ)「だからこそ仇を打たないと! 皆の仇を! だから頑張って!」

 トルバノーネさんを元気づけるにはこれしかないと思った。

 すると、トルバノーネさんが起き上がった。

(トルバノーネ最高司令官)「お前は本当に良い奴だ。どんな女よりも一番良い」

 そして、抱きしめられた。

(トルバノーネ最高司令官)「俺はバカだった。一か月前に、ハンニバルの靴を舐めていれば、たとえ拒絶されても協力を得られれば、こんなことにはならなかった」

 体が震える。僕は、本当はこんな言葉を言いたくない。でも言わなくちゃいけない!

(ナツメ)「大丈夫! 間違えちゃったけど、今度は大丈夫! すぐにハンニバルさんと協力し合おう! 僕も頭下げるから!」

 本当はバカじゃないって言いたい。これは仕方が無かったことと言いたい。

 だってトルバノーネさんは、一生懸命、考えに考え抜いてこの作戦を決行したんだ。

 なのに全部無意味でした。そんな残酷な言葉があるだろうか?

 でも僕は言わないといけない。トルバノーネさんの次のために!

(トルバノーネ最高司令官)「きついな。全く、きついぜ」

(ナツメ)「僕もダメだったよ! 僕はずっと見ているだけだったし、何もしなかった! だから僕も悪い! だから今度こそ一緒に頑張ろう! 僕も協力する! ハンニバルさんを絶対に口説き落として見せる!」

(トルバノーネ最高司令官)「はは、全く、お前は本当に、良い女だ」

 トルバノーネさんは力なく僕の胸の中に倒れる。

(トルバノーネ最高司令官)「ナツメ、最後に、キスしてくれないか?」

 僕はその言葉を聞いて、泣き叫びたかった。

 でもそれはできない。

 だって僕は、トルバノーネさんが好きで、トルバノーネさんも僕が好きなんだから。

 僕は軽く、トルバノーネさんの唇に口づけした。

(トルバノーネ最高司令官)「ありがとよ」

 トルバノーネさんはぐったりと目を閉じる。

(トルバノーネ最高司令官)「黒き者どもに家族を殺され、友達と一緒に英雄たちに支配され、それに抵抗した先は結局のところ無意味な死だった。ただ戦うことしか楽しくなかった」

 トルバノーネさんが最後に、ニッコリと、僕に、震えながら顔を向けた。

(トルバノーネ最高司令官)「でも、最後の最後で、お前に会えてよかった。愛しているよ、ナツメ」

 トルバノーネさんの体から力が無くなった。

(ナツメ)「トルバノーネさん?」

 この感覚は知っている。前にも味わった。胸を引き裂いたほうが楽なほどの苦しみ。

 トルバノーネさんは死んだ。

 再び誰かに手を引かれた。

(ナツメ)「待って! せめてお墓を作らなくちゃ!」

 それでも誰かは手を離さずに走る。

 そして山を下りると馬に乗せられる。

(ナツメ)「トルバノーネさん……」

 僕は誰かが走らせる馬の背の中でじっとトルバノーネさんが眠る山を見ていた。離れたくなかった。

 でも誰かは僕の意思に従わず、僕を城下へ導いた。


(ナツメ)「ひどい」

 城下は地獄絵図だった。

 道端には子供や女、男、老人の死体が転がっている。

 逃げ惑う民を黒き者どもが追い立て、殺していく。

 抵抗は無駄だった。棒で突っついたところで黒き者どもの一撃を止めることはできない。

 奴らは死の体現者、たとえ胸を貫かれても攻撃する。

 たとえ己が死ぬと分かっていても突撃する。

 奴らに死の恐怖は無い。

 なぜならば、奴らの存在そのものが死なのだから。

(沖田)「くそったれ! もう手遅れだぞ!」

 広場にハンニバルさんたちが居て、その中で沖田さんが迫りくる黒き者どもを両断していく。

(アウグストゥス)「とんでもない失態だな! 世界最高の軍師と聞いたが偽物だろ!」

(ハンニバル)「グダグダ言うな! さっさと処理しないとフラン砦から奴らが溢れてくる!」

(ジャンヌ)「無茶言わないでください! 城下全体に広がる黒き者どもを倒すには数時間は必要です!」

(アウグストゥス)「いっそのことここは見捨てるぞ! 文句あるかハンニバル!」

(ハンニバル)「ありありだ! せめてここの奴らだけでも殺しつくさないと背中を刺されるぞ!」

 言い合っている間にも黒き首なし騎士と黒き者どもが迫る!

 アウグストゥスさんが両腕で黒き首なし騎士の刃を止める! そして背後からもう一体迫る!

(アウグストゥス)「くそったれ! こいつら! あの小娘の能力が!」

 アウグストゥスさんの首が宙を舞った。

(ジャンヌ)「アウグストゥス!」

 ジャンヌさんが気を取られている間に、黒き者どもが一斉に大剣や大槍を放り投げる。

 ジャンヌさんの体に無数の大剣と大槍が突き刺さった。

(沖田)「馬鹿みたいに強いなお前ら!」

 沖田さんが走り、親玉の黒き大騎士に刃を振り下ろす!

 刃は鎧に弾かれた。

(沖田)「くそったれ! 前々から分かってたけど、こいつらあの娘の力が聞かねえ!」

 黒き大騎士の一撃で沖田さんの体は両断された。

(ハンニバル)「参ったぜ。高がチート能力を得ても勝てない。あの小娘の言っていたことが分かったよ」

 ハンニバルさんは黒き首なし騎士に両足の腱を切られると跪き、苦笑いをする。

(ハンニバル)「お前たちにはあの小娘がこしらえた能力が通じない。沖田の一刀両断もジャンヌの修復も俺やアウグストゥスの索敵能力も。分かっていたが、自覚してからようやく気付いた。能力を得たおかげで、慢心していた。お前らの勝ちだ」

 ハンニバルさんは項垂れる。僕は大声を出したかったけど誰かに口を塞がれる。

 ハンニバルさん! 心で叫ぶと、黒き大騎士が大剣を振り下ろす前にハンニバルさんが顔を上げて、こっちを見た。

 ハンニバルさんは、笑った。

(ハンニバル)「だが俺たちは必ずお前たちに勝利する! 俺以上の軍師など世界中に居る! 火器が進み、それに適した戦術! そして国を纏める戦略を心得た奴らが必ず来る! だからこそ! 俺たちは絶望しない! 必ず勝つ! だから見ろ! これが俺の末路! だからこそこの無様な姿から少しでも学べ!」

 ハンニバルさんの叫びと同時に、黒き大騎士が大剣を振り下ろした。

 泣き伏せる暇も無く誰かに手を引っ張られる。

(ナツメ)「あなたは僕をどうしたいんですか?」

 僕は手を引っ張られるだけだった。

 逃げろ? 死ね? 勝て? どれも違う。

 ただ手を引く誰かは凄かった。

 逃げる間、一度も黒き者どもと会わなかった。

 会いそうな時は物陰に引き込まれて口を塞がれ、抱きしめられる。

 人々が死ぬ姿を前にしても僕の悲鳴を塞ぎ、どこかへ導く。

 おじいちゃんの言葉を思い出す。

 おじいちゃんは誰かのおかげで成功したと。

 ならば僕は、疑問を持つべきではない。

 でも疑問は振り払えない。

 僕はトルバノーネさんたちと、ハンニバルさんたちと一緒に戦いたい。

 他の人なんてまっぴらごめんだ。

 今更生き延びてどうするんだ?

 それ以前に、どうしてこうなる前に導いてくれなかったの?

 誰かが馬に乗る再びその背に乗り、導かれる。

 今度はどこに馬を走らせるんだ?

 そしてすぐに分かった。

 方角はエーテル国軍駐屯地だった。

(ナツメ)「黒き首なし騎士!」

 馬を走らせていると背後から無数の黒き首なし騎士たちが迫っていた!

 どうしよう! 思うと誰かが僕の手を握る。

 手にはいつの間にか、発煙筒が握らされていた。

 これを使え。暗黙の命令だった。

 僕は急いで発煙筒を発火させて放り投げる。

 放り投げた傍からまた発煙筒を握っていたので間髪入れずに放り投げる。

 握る物が無くなるまで放り投げる。

(ナツメ)「まだ追ってくるよ! 全然怯まない!」

 ところ構わず投げて周囲は煙だらけで前も見えないのに黒き首なし騎士たちの気配は消えない。

 すると再び握らされる。今度は発煙筒では無かった。

(ナツメ)「ダイナマイト?」

 火を付けて放り投げる。また握らされていたのでさらに放り投げる。無くなるまで放り投げる。

 すると凄まじい閃光と爆音が煙の中に響く。馬が怯えて泣くが誰かに撫でられると瞬時に正気を取り戻し走り出す。

(ナツメ)「黒き首なし騎士たちが足を止めた?」

 黒き首なし騎士たちが突如足を止めたことが影で分かった。なぜだ? 怯えたのか? それは違うと思う。怯えるのならハンニバルさんたちが苦労するはずがない。そう思っていると、誰かが城壁の上に立つ黒き大騎士を指さした。

(ナツメ)「黒き大騎士が黒き者どもを制御している? もしかして、煙と爆音と閃光で僕たちを見失った?」

 指揮ではなく制御、まるでラジコンのように黒き者ども一体一体を動かしている。そう思ったのは、黒き大騎士が首を動かすたびに、黒き者どもたちが同じ方向に顔を向けたから。

(ナツメ)「あなたは、いったい誰ですか?」

 誰かは答えない。ただ馬を走らせる。僕に何かを行わせるために。僕が何かを気付くように。

(ナツメ)「黒き者どもがまた追ってきた!」

 駐屯地まであと数百メートルといったところで再び黒き首なし騎士たちが見えた!

 僕が駐屯地に滑り込むと一気に門が締まる。そして門が黒き者どもの圧力でへしゃぐ。

(ナツメ)「どこへ連れて行くの!」

 聞いても答えてくれない。ただ僕を導く。背後からは黒き首なし騎士たちが壁も障害物も超えて侵入してくる!

(ナツメ)「どこへ!」

 食堂、小部屋、大広間を経由してどこかへ行く。黒き首なし騎士たちは壁を超えることは出来てもすり抜けることは出来ない。部屋に入るたびに追手が減る。

(ナツメ)「ここは、僕の部屋?」

 僕の部屋まで来ると扉の鍵が閉じて誰も入れなく、そして僕も出られなくなる。

(ナツメ)「ここで何をすればいいんですか!」

 叫ぶけどもう誰かは居なかった。

(ナツメ)「どうすればいいんだ? 何をすればいいんだ?」

 考えろ! おじいちゃんは言っていた! 誰かの導きに身を任せる! それが正解だ!

 ならばここに正解がある!

(ナツメ)「お爺ちゃんの箱!」

 ここだ! この不思議な箱なら奇跡のアイテムが出てくる!

(ナツメ)「何もない? 空っぽ?」

 箱を開けたけど何もない? じゃあどうすればいいんだ?

 ごしゃっごしゃっと扉が歪む。あと数分で扉がダメになる。そして窓からもチラチラと黒き者どもの影が見える。もう、ダメだ。

(ナツメ)「違う! ここで諦めちゃダメだ!」

 諦めて死ぬのなんて簡単だ! でも僕はもう嫌だ! あんな思いは嫌だ! 皆と一緒に居たい!

 皆にありがとうと言ってもらいたい!

(ナツメ)「そうだ、時計だ!」

 目覚まし時計を手に取る。そして考える。

(ナツメ)「そう言えば、眠りと死は同じ感覚って、誰かが言ってたっけ?」

 突然何を思ったのか? ただ、眠りと死は同じ感覚だった。

(ナツメ)「やり直せる? この時計で?」

 ドアが拉げると走馬灯が思い浮かぶ。

 この状況を打破するにはいつ戻ればいい?

 トルバノーネさんたちを止めればいいのか? 違う。それでは結局エーテル国は滅び、僕たちは死ぬ。

 ハンニバルさんが言っていた。今、自覚したが、黒き者どもには能力が通じない。

 ハンニバルさんは薄々こうなることを分かっていた。でも、どうにもできなかった。能力が通じると、慢心していたから?

(ナツメ)「違う! ハンニバルさんはトルバノーネさんたちを知らなかった! 信用できなかったんだ!」

 ドアが蹴破られると同時に目覚まし時計を弄る。日付は一月前、トルバノーネさんとハンニバルさんが対面する日だ!

(ナツメ)「日付指定できる目覚ましで良かった」

 この目覚ましは毎日定時に鳴らすこともできれば、日付を定めて鳴らすこともできる。お爺ちゃんにしてはハイテクと思ったけど、やっと意味が分かった。

(ナツメ)「ありがとう、誰かさん」

 目覚ましをセットすると、誰かさんが、笑ったような気がした。


 そして目覚ましが鳴った!

 時刻は七時前! 日付は悪夢から一月前!

(トルバノーネ最高司令官)「おい! ナツメ! お前があいつらを呼んだのか? いきなり迎えに来たって言ったから気味が悪くて仕方ねえ!」

(ナツメ)「トルバノーネさん!」

 僕はトルバノーネさんに抱き付いて、キスをした。


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