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予備講習

 今はちょうど学年が変わる直前の、新学期前の長期休み期間中らしいです。まぁなんてナイスタイミングでしょう。院長ったら上手い演出をするものです、ありがとう。学年がかわるとそこには美少女が……ふふふ、素敵な演出です!

 ちなみに入学式は一週間後だそうです。


 わたしはがらんと広い教室で、先生から簡単にこの学校の説明と世間で……といいますか貴族様の間で広く使われている魔法がどういうものなのか、あと読み書きを簡単に習いました。


 ……まずいかもしれません。


 実は、ですね。わたしは今まで、魔法は自分の姿を可愛らしくするためだったり、暮らしの中で便利そうなものしか使った事がありません。だって、貴族様だなんて普段関わる事がありますか?あるわけがないでしょう。わたしの魔法は完全に我流なのです。あらやだわたし、天才かもしれません。


 ではなくて。魔法、そう、魔法です。火の玉で……とか、風を起こして切り刻む……だとか、そんな事を魔法で行うなど、わたしは思い付かなかったし、やる必要があるかと感じた事すら無いんです。


 しかも、お勉強の教科書を開いたらチンプンカンプンです。難しい記号と数字がずらずら並んでいて、読むことすらおぼつきません。挿し絵、挿し絵はどこですか……?


 これじゃわたし、落ちこぼれ確定じゃないの?

 成績トップだとかせめてトップグループに入れないと、とってもカッコ悪い……!


 簡単な講習を終えたわたしは拳をきゅっと握って頑張るぞのポーズをします。先生がちょっとたじろぐのがわかりました。耳が赤いです。頑張るぞのポーズはこの学校でも通用する模様ですね。よし、わたし、かわいい。一週間でどれ程の事が出来るかわかりませんけど、やれるところまではやってみせようじゃないの……!!!


 思い立ったが吉日です。やればできるはずです。かわいいわたしはこれでもけっこうな努力家なんです。先生を上目遣いに見上げたわたしはお勉強がさっぱりわからないことと、でも学力で学年の上位に食い込みたい旨を伝え、お勉強とやらはどうやったらよいのかを教わりました。


 思い返せば……弱い治癒魔法を、美肌に使ったのがそもそもの始まりで……それから努力に努力と根性と気合いと運をミルクレープの様に重ねて重ねて積み上げて、さらに意地をトッピングしてきたのが今の状態なのです。そう、最初は使えなかった水魔法だとか風魔法だとか火魔法だとか氷魔法だとか土魔法だって今では思い通りに使えるようになったんです、全部まるまる美容にしか使ってこなかったけど。

 火魔法で何かを燃やすって、なにそれスゴい事を思い付いた人もいたものです。


  わたしは図書室でお勉強の役にたちそうな本をたくさん借りました。


 そして魔法の練習室、これは当然安心して練習できるように、個室を借りられるだけの期間で借りました。ありがとう、学年主任とやらの権力。


 まずは火魔法です。お水を温めてお風呂に入ったり、飲み物を温めたり、寒い日に血色を良くしたり、乾かない衣服を乾かす以外、攻撃的な使い方もあったなんて驚きの火魔法です。

 弱くて構わないのでとりあえずわたしよ火の玉を造り上げるのです……!!!


 ……まぁ、そこそこ手間取ったけどなんとかなりました。わたしってば魔法の天才です。でもこの火の玉を生む魔法には美しさを感じられません。まったくもってかわいくない。これではリリーローズの名前が廃ります。


 かわいいわたしは扱う魔法もなんだかふわっとかわいくあるべきじゃないでしょうか!?


 そこで土魔法、氷魔法、水魔法、風魔法の合わせ技の登場です、『巨大鏡』の登場です。

 黒っぽい土の壁に金属の膜を張り厚めの氷を張り、その表面に水の膜、そして風魔法で波立たない様にする、ある意味わたしの究極魔法です。複数の魔法の同時操作は難しいと本に書いてありましたから間違いなくこの魔法は最高難度です。今から『巨大鏡』はわたしの究極魔法ってことに決めました。


 この鏡の前で、ポーズをチェックしながら、美しく花弁を散らす火の玉を造り上げるのです……!!!

 さすがに五つの魔法併用は疲れますから、常時自分自身に展開している美容魔法はほんのちょっと休憩します。やっぱり個室にしてもらっておいて良かった。


 ……火の玉、どうも本に書いてあったことによれば、小さな魔法でよいみたいですから、イメージはちょっと派手に『彼岸花』です。ぽっと彼岸花に似た火の玉なんてこのかわいいわたしが出したらそれはきっと可憐でしょう?


 こうして、練習室で魔法の特訓、練習室以外では寝ないでひたすらお勉強をします。最近ちょっぴり本が読めるのが楽しくなってきています。

 睡眠の代わりにしているのは回復魔法です。

 寝ないと魔力が回復しにくくなるけど、自室にいるときは美容魔法を切っていますから、勉強中に魔力はゆっくり回復しているのです。疲れ?全く問題ありません。わたしの得意魔法は回復魔法。回復魔法なら自信があります。どんな絶望的な状態でも治せます。だから疲労回復なんてチョロいチョロい。


 むしろ魔力使いすぎてまた総魔力量が上がったかもしれない。


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