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「ということで魔法が発展してきた歴史はわかったかな?」
「だいたいわかりました。」
「嘘でしょ。」
「本当ですってば!奏多・・・、あっ俺の友達に曾根崎っていうのがいるんですけど、さっき教えてもらったばっかりなんですって!」
あの後1㎝はあろうかというなかなか分厚い冊子とお茶と羊羹を用意した真央は、事務所の片隅に置いてある応接スペースっぽい古そうだがちょっと立派なソファに廉を案内し、まあ座りなよ、と着席させ近くにあったホワイトボードも使い20分ほど説明した後のやり取りである。
バカじゃないのにさ俺・・・。とむくれながら羊羹をつつく廉を見ながら、
いつか折を見てポーカーフェイスを学ばせようと真央は決意しつつ、言葉を重ねる。
「まあこれが君がこれから所属する魔法使い課、環境省自然環境局魔法課の歴史ね。んでぼくはそこの正社員ってわけ。まだまだ下っ端なんだけどね。」
「でもこの仕事って一応公務員なんですよね?なんで会社概要とか正社員って言うんですか?」
「民間に準拠した表現してるの。色々うるさいから。」
「お役所っぽい。」
まあなんだかんだなにやら冊子にメモってたみたいだし、ここの部分はまあアルバイトだから問題ないだろうと次の説明に移る前に、と目の前の少年に、最後に何か質問ある?と聞いたところ
「研究者の人の奥さんと子供は帰ってきましたか?」
「そんな質問初めてされた。」
ちゃんと、2回目の発表後和解しておうちに帰ってきて晩年はひ孫まで抱いて大往生だったみたいだよ、ときちんと答えてあげられるだけの知識を持っている真央は責任ある正社員なのだ。